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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 一章
2/78

2話

「あ゙ー、くっそ! また負けたぁ!」


 俺は握りしめたコントローラーを放り投げ、ガシガシと頭をかきむしる。


 大きく弧を描いたコントローラーは、空中で軌道を変え、黒髪の男の人の手に吸いこまれた。


「ダメだよ、コア。モノは大切に使わないと」


 爽やかに笑ってコントローラーを差し出す彼は、あの黒猫のエルだ。

 実は妖で、妖にとって難しい、人間に化けることができる。


 襟足くらいの長さのサラサラの黒髪に、垂れた穏やかな目。

 スッと高い鼻に、形のいいピンク色の唇。

 左の目尻には泣きぼくろがあって、甘い雰囲気をさらに濃くしている。


 ようするに、イケメンだ。


 俺は、サラサラとはとても言えない自分の銀色の髪をいじり、そっぽを向いた。


 うらめしい⋯⋯! なんで俺が着ても普通なシャツが、エルが着れば一級品みたいに見えるんだよ!


「コアは今日だけで、九十八戦中、一勝九十七敗だね。その一勝だって、僕には状態異常というハンデがあって⋯⋯」

「うるさい! それも実力のうちだ!」

「はいはい。コアはステータスが僕より低いからねぇ」

「俺は低くない! エルが高すぎるんだよ!」


 ギャンギャンほえる俺を、エルが生あたたかい目で見ている。


 俺のステータスは低くない。本当だ。ムキになってるわけじゃない。


 ただ、エルと比べると⋯⋯だいぶ差はあるけど。


 フーッフーッとエルを威嚇しながら向けた視線の先には、白く発光するテレビ。

 伸びた配線はコントローラーの充電器につながっている。


 テレビに映るミニキャラと横に並ぶ文字を見ながら、俺は小さくうなった。


 俺らは今、テレビゲームをしている。


 テレビの中の自分のキャラを操作して戦うっていう、よくあるゲームだけど、俺らがやってるモノには、特殊な点がある。


 それは、俺らが宿している魔力をコントローラーに流すことで、その人の能力がそのままゲームのキャラに反映することだ。


 魔力は、俺ら一族が生業とする妖退治に欠かせないもので、身体能力を上げたり、水や火を出したり、傷を治癒したりと、人間離れしたことができる力のこと。


 濃度や量に個人差はあるけど、持たずして生まれた事例は、過去に一度だけ。

 その人も、どうなったのかは、全く書かれていない。

 歓迎された雰囲気ではなかったのは、たしかだ。


 よくて雑用、悪くて⋯⋯想像するのはやめよう。


 とにかく、魔力の有無はもちろん、濃度や強さなんかでも、周囲の扱いは大きく変わる。


 ただし、実績を上げれば本家から称号を与えられることもあるから、必ずしも魔力が全てではない。


「俺のほうがステータス低いって分かってんだから、ちょっとくらい手かげんしてくれてもよくない?」


 俺は画面の文字に目を滑らせながら、不満をこぼす。


 悲しいことに、隣に並んでいるエルのステータスとは、全部十以上の差がある。


 勝てっこないんだよ! このムリゲーめ!


 エルはそんな俺に、こう言い放った。


「違うよコア。手かげんなんてしたら、コアが成長しないじゃないか」


 それはそれは、キリリと顔を引きしめて。


 あたかも全て、俺のためであることを主張するように。


「嘘つくな。俺をボコボコに殴ってるとき、口元が全力で笑ってんの、知ってんだからな」

「それは⋯⋯アレだよ。コアが少し成長したなぁって嬉しくなったんだよ」

「楽しんでるだろ」

「いやぁ別に? 本気でぶつからないと、コアの修行にならないでしょ。ほら、もう一戦!」

「こんの鬼! やられっぱなしの俺の身にもなれよ!」


 俺はバッとエルからコントローラーを奪いとり、二つまとめてズダンッと充電器に差しこんだ。


 傾いた太陽が、エルの期待で輝く顔を赤く照らす。


 もうすぐ夜だ。


 世界が光を失い、闇に沈んだ、その空間は。

 ヤツらが活性化するとともに、地球に巣食った人間を絶望につき落とす。


 そこで俺らに依頼がくる。俺ら一族しか対応できない、摩訶不思議な任務だ。

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