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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 二章
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3話

「その妖は、七柱の誰かの力をかりて、僕の妖力を吸収して、人型に成長したんだと思う。その資料には、昔、妖帝がなんらかの禁術に手を出して七柱の妖力を吸収し、暴れ回ったっていう記録が書いてあるんだ」

「ふーん⋯⋯」


 上の空な返事を返し、俺は手元の資料に目をおとす。


 妖帝を倒すのに、妖倒士は四分の三も犠牲になったのか。とんでもないな。


 ⋯⋯ん? 『妖と人間の契約によって撃退』?


「⋯⋯気づいた? そのころに、妖力を使える人間がいたんだ。その人間は、妖と契約を交わしていたらしくて、妖のほうも、魔力を使えたそうだよ」

「俺と、同じような人が⋯⋯」


 人間であり、妖でもある人が、昔にもいたんだ。

 妖帝を倒したってことは、人間側にいられたってことだよな。


 でも、契約した妖はどうなったんだ?

 妖だけど、人間側に入れてもらえたのか?


 次々に疑問が浮かび上がり、上から下へと流し読みをする。


 ⋯⋯全然書いてない。


 妖帝を倒したなら、一番の功労者なはずだろ。

 詳しく書いてあってもいいはずなのに、このことについては、一文しか見当たらない。


「⋯⋯結局、どっちでもないヤツは、どっちにもいられないってことか」

「あまり記録が残ってないから、言い切れるわけじゃないけどね。僕も、そうじゃないかって思ってる」


 エルは感情の読めない表情で資料を見つめる。


 フゥと小さく息を吐き、不安と悲しみが入り混じったような目で、俺を見つめた。


「コアと契約してるのは、僕じゃないけど。僕はコアを守るよ。僕の居場所だからね」

「それ、どういう⋯⋯ッ!」


 ザワザワと胸の内が糸でなでられるように騒ぎ出す。


 エルの残像が少しずつ重なってゆがみ、俺は無意識に目を閉じた。


「⋯⋯コア、ごめん。この話はやめよう」


 フッと風にさらわれるように胸のザワめきが消え、俺はゆっくりとまぶたを上げる。


 エルの目が金色に光ってる⋯⋯ってことは俺、また魔力暴走を起こしたのか。


 なんなんだろうな。『ノア』って子に関して触れた気がすると、毎回これだ。


 俺にとって、どんな人なのか。どんな妖なのか。


 今ではそもそも、存在していたのかさえ記憶が危うく、唯一体の異変だけが、たしかなことを証明しているくらいだ。


 軽く頭を振って息を吐き、気持ちを落ちつかせる。


「⋯⋯さて、コア。僕は散らばった資料を集めただけだからね。ちゃーんと、順番、直してもらうよ」


 ニーッコリと満面の笑みになったエルが、立ち上がろうとした俺を閉じこめるように、椅子の背に手をついた。近いです、エルさん⋯⋯。


 そりゃ、俺が悪いとは思うけどさ?


 チラリと横目で資料の山を見る。


 ムリだ! ただでさえ文字を読むのが苦手なのに、この量全部に目を通して並びかえ!?


 エルさん。資料が正しく積み上がるより、俺の精神が底をつくのが先です⋯⋯。


 なんとか抜け出そうと視線をさまよわせていると、エルがわざとらしく、ハァッと息を吐いた。


「どうしても嫌かぁ。そっかそっか。なら、コアには妖のデータ収集をやっててもらおうかな? けっこう、イラつくパターンのやつが溜まってるん⋯⋯」

「あー! あー! いい! 俺が資料やる!」

「そう? じゃあ僕はゲームやってくるね」


 満足げにほほえんで、エルは足どり軽くテレビへと向かう。


 ⋯⋯そこのお前。


 ゲーム? 楽しそうじゃん。そっちのほうがよくない?

 って思っただろ。


 違うからな。

 アレは、倒した妖のデータ集めのためにゲーム内で戦うもので、コントローラーに魔力や妖力を流すことで、自分の身体能力がゲームに反映される。

 そんなに強くない妖なら、俺でもできるんだけど、人型の妖は十分なデータをとることができない。


 なぜか。


 簡単。俺とエルの実力の差が大きいからだ。


 エルが『イラつくパターン』の妖と俺が戦ったところで、翻弄されるのがオチだ。面白くない。


 それをやるくらいなら、苦手な苦手な文字を読んでたほうがマシってこと。


 はやくもコントローラーをたたき始めたエルに恨みがましい視線を送り、俺は目の前の悪魔の壁に、ウッとうめき声をこぼしたのだった。

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