07.和平交渉
そして、ついに王国との和平交渉当日。
場所は、王国王城。
帝国側の人間は、代表である帝国華族、補佐の一人である私とその他数名。
一方で王国側の人間は、代表は王国国王アルフォード・マジイリス様……私の婚約者だった人……と他数名。
まず、今日この日まで連戦連勝を続ける帝国側から、和平の条件が提示された。
「なんだこれは!」
「こんな条件、受け入れられるか!」
想像通りの反応をしたのは、王国貴族達。
当たり前だろう。
条件としては、王国への監視員の派遣や、土地の譲渡、賠償金の支払い等が含まれていた。
そして、譲渡される土地の中には、大穀倉地帯や、技術都市、そして貴重な鉱石が取れる鉱山街等の王国の重要な街が含まれていた。
これを受け入れると、王国に残るのは大して経済効果のない田舎町と王都のみ、
それに加えて多額の賠償金を支払うとなれば、もはや王国は一国では立ち行かなくなり、帝国の庇護下に入らざるを得なくなる。
事実上の属国化である。
とはいえ、交渉において最初に過大な要求をするのは常套手段だけど。
「一ついいだろうか」
アルフォード様が口を開いた。
「なんですかな?」
「そちらの桜宮家のご夫人の意見を聞きたい。あなたはこちらの内容に対し、どう思われているのだろうか」
いきなり私に振ってきた。
「どう、とは?」
「こちらの条件を受け入れると、我が国は立ち行かなる可能性がある。王国民の中には、餓死する者も出るかも……いや、確実に出るだろう。それを踏まえて、あなたはどう思われる?」
私は考える。
もし、私が王国の人間なら、可能な限り粘って条件を軽くするよう言うだろう。
いや、前の時の私だったら、ひょっとしたら徹底抗戦を言っていたかもしれない。
だけど、私は知っている。
戦争継続による地獄を。
民族浄化で起こった人々の最後を、悲鳴を、涙を。
だから、私は一刻も早くこの戦争を終わらせたい。
確かに、王国にとってこの条件は重いだろう。だけど……
「私は帝国華族として、これを受け入れるよう進言します。今回の責任は全て王国貴族にありますから」
「全て、とは?今回の件の発端は、帝国華族であるあなたの妹達では?」
「帝国法では、結婚式を行う場合は式の終了と同時に正式な夫婦として承認されます。事件が起きたのは式の途中。あの時点では私達三人はまだ王国貴族でした。付け加えますと、事件後に式はお開きになり終了と判断されました。よって、私は帝国華族です」
「なるほど。帝国法ではまだ夫婦ではなかった、と」
「はい。あの時点での私達は婚約者の家で同棲している居候でした」
「ふむ……」
アルフォード様は左手で首を擦り、人差し指と中指で首を三度たたきながら暫く考えている。
「すまないが、考えをまとめたい。明日までお待ちしてはくれないだろうか」
「ええ、構いませんよ。じっくり考えてください」
アルフォード様の言葉に、帝国華族側の代表が応える。
多少上から目線だが、まぁこの状況では仕方ない。
王国貴族が退出し、私達は王宮内の部屋に案内された。
一度帝国華族で集まり、明日の打ち合わせをした後、解散となった。
久しぶりの投稿です。
なんとなく読み返していたら面白かったのでかける所まで書こうかな、と思いました。