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俺の、、子供?!

なかなか折れないマルク兄ちゃんを、俺はなんとか半日かけて説得した。


 気がつけば、日はあっという間に暮れかけて、日は山に沈みかけていた。

 1日って、、こんなに短かったっけ?


 その夜、“「夜の警備があるからヒマリは俺の家で寝るといい」”と言ってくれたマルク兄ちゃんに甘えて、俺は部屋を借りることにした。

 と言っても、俺の家はこの5年で何故か風化し、寝れる状態ではなかったのだ。

 だからそうするしかないんだけれど。




 兄ちゃんが出て行ってすぐ、用意してくれたベットに潜り込む。

「こうなったら、、仕方ない。予定外であんまりにも驚かせてしまうかもしれないけど、、アスレスを頼ろう。」

 そんな事を考えながら、久しぶりに嗅いだ懐かしくもなれた村の匂いが立ち込める空間に、俺はあっという間に癒され眠ってしまった。



 *


 濃い霧の立ち込める深い森の中。

 月明かりも入り込まないその森の中で、1人音もなく歩く人の影。

 巨大なクルギの木の下で、一見少女に見えるその女性は、可愛らいピンクの髪を揺らしながら手に持った杖を木に向かって掲げた。


「クルギの木よ、魔女アスレスの名と血の元に命令する。“深底の姫”を出しなさい。」


 アスレスがそう言うと持っていた杖と、それに呼応するかの様にクルギの幹の中腹辺りが淡く光出す。


 やがてその光の中から1人の子供が姿を現した。

 容姿はアスレスと瓜二つ。

 光の入らないこの森の中に、まるで月が現れたかのように、彼女の全身は淡く光り辺りを照らしていた。

 毛先に行くほど白く変わる自分の身長をはるかに超える長い髪と、白い肌。

 生地が透けているのに何故か彼女の身体を目でとらえる事は出来ない不思議なワンピースをきた少女が、この深い森を映したようなビリジアンの瞳に、自分を呼び出した本人を見つけ笑みを浮かべる。


「アスレス。」

 その子は嬉しそうに、ふわふわとアスレスの横に舞い降りた。

「“根の娘(ネノコ)”。」

 そう呼び、アスレスもその子の頭を優しく撫ぜた。



「ネネ、アスレス、言った通りチョロそうな子だったでしょ。ネ、彼だったら直ぐに、アスレスの思いのままだよ。クスクスクスクス。」


「そうだね。ちょっと申し訳なくなっちゃうぐらい、手の上で転がってくれそう。」


「ネネ、でも良かったの?村に返して。だってあの子の言ってた女のコ、村にいないじゃん?ネネネ、行かせるだけ無駄だよねー!!」


「良いの。今日昨日会った私が、あの子の思い人が村にいない事を伝えて、あの子が納得する訳無いじゃない。自分の目で見て、現実を知るのが1番手っ取り早いの。」


「ふーん。ネ、やっぱり人間って非効率な生き物だよね。」


「そうね。……でも、あの子は言っている間に私の元へ帰ってくる。」


「ネネネ、そしたら洗脳でもしちゃう?」


「最初それも考えたんだけど、、、別の方法にしようと思うの。私が一方的に縛るには、リスクが高すぎる。アレは既に理から外れた化け物よ。自分の手に負えない物を持てば、必ずそれは手から溢れ落ちる。それなら、私を利用させてでも私も彼を利用する。要は残ってる人間の部分を利用させてもらうってわけ。」


「ネネ!成る程、、それで快く村に返した訳ね!ま、人間は情や恩に弱いからね!」


「ふふふ、あの子は自分の意思で私の元にきたと錯覚するでしょ?……長い間待ち望んだチャンスがついに私の元にきた。もう戻れない、それにこれ以上長引けばあの人に気付かれてしまう。慎重に事は進めるけれど、、、いざとなれば、この身以上の物を持ち上げてでも私は私の願いを叶えるわ。たとえ、それで抱えた物諸共、自分が潰れ死のうとも!!」



 *


 ズキン ズキン


 なんかお腹が、、、でもまだ眠い、、。


 ズキン ズキン ズキン


 う〜ん、痛い。


 ズキン ズキン ズキン ズキン


 あー!!ダメだ!お腹が痛い、!

 って、なんでこんな痛みを感じるんだ?

 怪我してもすぐ分からなくなるのに、、。


 ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン


 まだ、、明け方か、、、。

 あー、やばい、、本当に痛い。

 てか、なんだか、どんどん痛みが下に降りてきてるような、、、。

 う○こか?

 久しぶりに食べ物食べたからか?


 やばい、、と、トイレに。


 ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン


「痛い、痛たたた、痛たたたた!左!左ケツが痛い!!」


 な、なんだこれ?!?!


 徐々に、でも確実に感じる痛みは俺がトイレにたどり着く前に、久しぶりに感じる激痛へと変わって、俺は床でうずくまっていた。


「いたたたたたたたたた!」

 な、なんだっけ?

 痛みを逃す時はヒッヒッフーだっけ?!


 最初は痛かった下腹部から今は左ケツが、死ぬ程痛い。

 例えるなら、、肛門でない左ケツど真ん中から肉をを割ってう○こが出てくるような感覚だ。


「あだ、あだだだだだだだだ!!ヒィーフーーー!」


 左ケツに来る圧迫感を追い出そうと、痛見に合わせて腹に力が入る。


 うおおぉぉぉお!

 こうなったら、、や、ヤケクソだ!

 兄ちゃんには悪いけど、う○こだろうが、何だろうがここで捻り出してやるよ!!


 いてててててて、、。

 うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 も、もうちょっとぉ!!

 うおおぉぉぉお!!!!


 ミシリと、肉の避けるような感覚と音がして何かが俺の左ケツからポロリと何かが出たのが分かった。

 あれだけ痛かったケツはもう既に完治したのか、さっきの事が嘘だったように違和感すら感じない。


「兄ちゃん、、ごめん、、俺こんな所で、、漏らすなんて。」

 死にたくなるぐらい、恥ずかしい。

 ……と言うより、本当にう○こなのか?

 場所が場所なだけに、ついに俺の体は人間とは違った構造になってしまったんじゃないだろうか、、と変な不安がよぎる。


「と、とりあえず、、トイレに行って、それから服を洗濯しょう。早くしないと、兄ちゃんが帰ってくる。」

 これを見られたら、俺は流石にこの村でのほほんと暮らしていく自信がない。


 立ち上がると、ズボンの裾から何かがゴトリと低い音を立てて転がり出てきた。


「え゛っ?」


 一瞬、、“う、う○こが落ちたのか?”と心臓が飛び跳ねたが、人間のう○こにしては重たい質感と丸くテカテカと光るその物体に俺の頭の中に「?」が飛び交った。


「な、なんだこれは、、?」

 う○こじゃ、、ない、、な。


 それはどう見ても、う○こではなく、りんごサイズの丸い水晶玉のようだった。

 若干俺の血が付いてるから、多分俺の左ケツから出てきたのはこれで間違いはなさそうだけど、、。


 と言うか、なんでこんなのが俺のケツから出てくるんだ?

 てか、そりゃあんだけ痛いはずだよね?!

 裂けて出てるんだもんね?!

 結構大きいよ、、これ。


 涙を拭いながら、少し躊躇ったものの、結局それが気になった俺は手を伸ばしてその玉を持ち上げた。


「なんだこれ、、、って、うわっ?!?」


 玉を持ち上げた途端、ピカッとそれが発光して、俺はそれを手に持ったまま目をぎゅっと瞑った。



「ワンっ!ワンワン!!」


「へ?」


 な、何なんだよもぅ!、、と目をぎゅっと瞑った矢先、自分の手元から聞こえる、、この場所、状況からは有り得ない音。

 と言うか、鳴き声。


「ワンっ!」


 そっと目を開けると、、俺の玉を持ち上げていた手の中に1匹の黒い子犬。


「え゛っ?!」


 な、何がどうなってるんだ?


 その間も子犬も嬉しそうに俺の手をペロペロ舐めている。

 正直言って、、、、可愛い。


 じゃなくって、、玉が犬になった、、。

 と言うか、じゃあ俺の体の中から犬が出てきた事になる、、、、?

 俺は、、犬を、、、産んだのか?


 俺の思考が1度停止した。


 その間に、手の中から子犬がすり抜けていく。

 床に降りた子犬は俺に体を擦り寄せては匂いを嗅いでいるようだったが、急に鼻をムズムズとさせだした。


「クシュンッ!」


 と子犬がクシャミをした瞬間に、俺の止まっていた思考がまた動き出す。


 何故ならクシャミした瞬間、子犬の身体に小さくも赤い電気が走ったのが見えたからだ。


「お、お、お、お前、、もしかして、、、。」


 確かに何処か懐かしげな感じはしていた。

 黒い毛並みに赤い瞳。


 今はもふもふしていてあの時感じた畏怖こそないけど、、。


「ア、アマカゲルか、、?!」


「ワンワン!!」


 俺の問いかけに対して、目の前の子犬は尻尾を振って嬉しそうに跳ねながら返事をした。

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