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5、家庭訪問


「いややわ~、有賀先生ったら~」


「いやいや、有賀の名にかけて、ワシの本心じゃよ。奈美さんは、美しい。ワシは、愛の伝道師と呼ばれているんだぞ」


珍しく接待でなく、個人でバー『花の壺』に飲みに来た清心高校の教頭、有賀(ありが) 篤史(あつし)は奈美に身体を密着させた。いつの間にか手は奈美の尻の下になっていた。


「先生ったら~スケベ何だから~。それより、飲み屋に来たんだから飲んで」


「うん、その前にちょっとトイレによって来る」


有賀がよろよろと通路を歩くと、ヘンな違和感があった。

ヘラのような手を器用にに使って、カメがシンクで皿を洗っていたのだ。


「カメくんじゃないか。何をしている」


「あっ、教頭先生・・・・。僕、バイトです」


「カメくん、高校生が夜、こんないかがわしい所で働いてていいのかね」


「えっ、ここ、いかがわしい所なんですか。先生こそ、こんないかがわしい所で何をしているんですか」


「うぐっ、それはだな。言葉あやだ。大人な遊び場、飲み屋は、いかがわしいものもあるかもしれないという意味なのだ。ところでカメくんは、今いくつかな」


「さあ・・・・留年、留年でまだ高校生ですが、歳は・・・・」


「カメの成人年齢はいくつなのか」


「さあ~」


「きみ、高校生だけど歳はいってるんだね」


「さあ、歳は考えたことがないので」


「そうか、じゃ~一緒に飲もう」



 有賀は、カメを連れて戻った。


「あら~カメさん。仕事は終わったの」


「はあ、一応は」


「カメくんと一緒に飲むのだ」


「はあ、それは良いけど。高校の先生が生徒と飲み屋で飲んでいいの」


「カメくん高校生だけど、歳はかなりイッてるみたいなんだ。つまり、カメの成人年齢に達っしているわけだ。そもそも、何でカメがこんな所でバイトをしてるのだね」


「こんな所とは失礼な。はは、でもいいか。それはね、乙姫さまの紹介だからよ」


「乙姫さま?」


「そう、竜宮城の乙姫さま。美人よ」


「おおう」


有賀の目がランと輝いた。


「カメくん、乙姫さまとはどういう関係なのかね」


「関係といわれても、僕の保護者です」


「そうか~、保護者か~」


有賀教頭は、しばし考えていた。


「そうだ、家庭訪問だ。先生は、生徒の事を良く知っておく必要がある。家庭訪問しよう」


「え~、今すぐですか。もう、夜ですよ」


「そうだ、夜の家庭訪問だ。うふふふ、奈美くんも一緒に行くかね」


「私もですか~。何か怪しげ~」


「うん、そうだよ」



 カメは、甲羅の下からスマホを取り出した。

「あっ、姫さま。実は有賀教頭先生が、突然家庭訪問をすると言いまして・・・・」


カメは一たん電話を切ると、寄宿舎に連絡を入れた。舎監(しゃかん)に帰りが遅くなるかも、ひょっとして外泊になるかもしれない旨を伝えると、浦島 (たい)が割り込んできた。


『乙姫さまの所へ行くなら、私も混ぜろ』


「はあ」


カメは、迎えの車が来る旨を伝えた。



バー『花の壺』に、ベンツS600が横付けされた。ベンツは寄宿舎によって鯛を拾い、キュウの館に向かった。


「乙姫さまは、今キュウさまの館に居候(いそうろう)しています」


「へえ~そ~何だ。また、キュウの所かよ」


鯛はイヤな顔をした。

途中、例によって後部座席に煙が充満して三人は眠らされた。



三人がソファーで目覚めると、ミドリのアラブ服、ミドリのマスク、ミドリの黄門(こうもん)頭巾(ずきん)のキュウが居た。隣には相撲取り体型の、白いワンピース風の絹の和装のふわりと絹の飾り布を(まと)った、いかにも天女風の衣装の女が居た。


「うぐっ!」


教頭は、露骨にガッカリした顔をした。


「ようこそ、鯛さん。久しぶりですね。皆さん、ゆっくりしていって下さい」


「キュウさま、またお会い出来て嬉しいです。フクさん、久しぶり~」


「お久しぶりです。鯛さま」


「ありがとうございます」


「お邪魔します」


その時、小さな子供たちがバラバラと出て来て「カメー、お馬~」と言った。


「ようがす」


カメは腹の下にスケートボートを敷くと、「きゃー、ぴー、きゃー、ぴー」騒ぐ三人の子カッパを乗せて“シャー、シャー”と、走り出した。


「きゃー、可愛い~」


「可愛いって、カッパだよ」


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