10、類は友を呼ぶ
1
「カメ、ちょっと」
「はい」
清宮がカメを呼び止めた。
「何でしょう」
「頼みがある」
清宮がもじもじしていた。恥じらいを見せている。
可憐な乙女なら分るが、不良で、いじめっ子で、イカツク、ブサイクなくせに似合わないことこの上ない。そして、清宮はポケットからシワくちゃの封書を取り出した。
手で、シワを伸ばしている。
「これを、山本みすずさんに渡して欲しい」
そう言うと、清宮は走って行ってしまった。
2
「みすずさん、これ」
カメが、みすずに清宮からの手紙を渡した。
「なに~え~!」
みすずは、身をよじって恥じらいをみせた。
「清宮くんから」
「え~、何だ~」
みすずは、露骨にがっかりした様子だ。
「せっかく持ってきたんだ。書き物、苦手みたいなのに。苦労して書いたみたいだよ。一応、見て下さいよ~」
「カメくんが、そう言うなら」
3
「みすず、ヤバいよ。カメがみすずにラブレターを出したって、ウワサになってるよ。清宮グループがカメにヤキ入れてやるんだってさ。『カメのくせに、生意気だ』って言ってる」
昼休み、尾籐愛は山本みすずに状況を報せていた。
「愛、そうじゃないのよ。カメくんは清宮くんのラブレターを届けにきたのよ」
「ええ~!、うっそ~!。そう何だ~、で、何が書いてあったの」
「それが~。ミミズののたくったような字でさ~、誤字脱字ばかりで、読むのがタイヘンだったのよ。それでさ、内容が陳腐」
「ええ~さいてー。あははは、清宮カタなしか~」
「でさ、カメってみすずの何なの」
「カメさんは私を命の恩人と言ってるけど」
「そうなの」
「裏山の山道でカメ君ひっくり返っていたの。それを私が起こしてあげたわけ」
「ずいぶん安っぽい命の恩人だこと。カメってしょちゅうひっくり返っているよ」
「そうなの~。で、『命の恩人なら食事くらいおごってよ』と言ってやった」
「みすず、うれしそう」
「うん」
「カメのこと好きなんでしょう。それってヘンタイだよ」
「ええ~」
「類は友を呼ぶ。ヘンタイはヘンタイを呼ぶよ」
「ええ~」
4
「すみません。ボクお金が無くて、こんな所しか知らないもので……」
「ううん。高い安いじゃないのよ。誰と食事をするかが、重要なのよ。今日は、美味しかったわ。ごちそうさま」
カメとみすずは、学生が良く利用する学校近くの食堂から出て、暗がりの続く路地を二人並んで歩いていた。
ふと見ると、初夏だというのにオーバーコートを着たぼさぼさ髪の男が立っていた。
尾藤愛はコンビニのおにぎりをほお張りながら、物かげから二人を窺っていた。
気になって、二人をつけていたのだ。
「あ~言わんこちゃない。『類は友を呼ぶ』『ヘンタイはヘンタイを呼ぶ』と言ったそばから」
バッと男はコートをまくった。コートの下は、何も身に付けてなかった。
カメとみすずは、何事もなかったかのように通り過ぎた。
「なっ⁉」
ヘンタイが慌てた。
ヘンタイはコートをかなぐり捨て、一物をプロペラのようにクルクル回しながら
「おら、おら、おら」
と迫った。
愛は、思わずおにぎりを吹き出した。思ってもみない展開だ。
「うざったいわね~。縛っちゃう」
「了解です」
カメは、甲羅の下から小さく畳んだビニールロープを取り出した。
「亀甲縛り!」
「カメよ。何をする。止めろー。ああ~」
ヘンタイは、亀甲縛りをされ、エビぞりにされて転がった。
愛は、カメの驚愕の特技を目の当たりにした。普段のカメの動きからは、想像も出来ない。
「それにしても、あの気の毒なヘンタイ。あれは、加害者なのか、それとも被害者なのだろうか。う~ん」




