目覚めたら森の中だった件
突然だが皆さんはGo〇gle mapで知らない場所に飛ばされて、飛ばされた場所を当てるというゲームを知っているだろうか。
俺はこれがかなり得意だと自負しているのだが、これをやる時毎回思うことがある。
それが「これならいきなりどこかに飛ばされても現在位置が分かるな」ということである。
しかし今俺はその安易な考えに後悔してるところだ。
何故なら⋯⋯
「ここどこぉ⋯⋯」
右を見る。
木、木、木、下を向くと得体の知れないキノコ。
左を見る。
木、木、木、よく分からん謎の生き物が飛び回ってる。
上を見る。
背の高い木々に阻まれているからか日光は殆ど地面へと入って来ず、肌でジメジメとした高い湿気が感じられる。
耳を澄ませる。
木々のざわめきや風の音、遠くから聞こえる水のせせらぎ。
うん。ここどこ?
「一体何が起きてるんだってばよ」
思い起こされるのは昨夜の出来事。
いつの間にか空中にヒビ割れが出来てて、そこから光が漏れだして、それから⋯⋯
「光が出てきてからの記憶が無い?」
記憶喪失か、気絶でもしてたのか⋯⋯。
兎に角、何かしらの超常現象がおきて目覚めたら大自然と一夜を共にしてたって訳か。
うん、自分でも何言ってるかわかんねーな。
くそ、状況を整理したとて収穫はゼロか⋯⋯。
取り敢えずなんでここにいるのか考えてみるか。
パターン1:誰かに攫われた
閃光手榴弾的なので俺を気絶させて攫った⋯⋯。
いや、攫う意味が無いし、そもそも空中のヒビに説明がつかない。
そもそも攫ったなら最後まで運べよ。なんでこんな森の中で下ろしてんねん。
流石にこれはナシだな。
パターン2:夢
昨日のヒビも今の俺の状況も全部夢という説。
ちょっと無理やりだけどこれが一番可能性としてはあるかもしれない。
だけど足で大地を踏む感覚とか木に触れた時のザラザラとした感覚とかはどう考えても現実としか思えない。
昨日見たヒビも現実だと思う。
根拠は無いけどね。
この案は感覚的にはナシだけど可能性としてはアリだな。
一旦保留で。
パターン3:異世界召喚モノ
今のところ地球としか思えないけど、何か超常現象が起こる→異世界に連れてかれる、なんてラノベでよく見ることなんだよね。
実際に謎のヒビだって現れてるわけだし、ワンチャンあるかも。
でもだったとしたら女神は?
異世界の前に女神と会ってチートを貰うのってテンプレじゃないの?
ていうかなんで森の中なんだよ。
こういうのって普通街の中とか魔法陣の上とかでしょ?
うーん、ぶっちゃけこの案を推していきたいけどさすがに無理あるか?
……ダメだ。
いくら考えても答えが出る気がしない。
兎に角こんな何も無いとこで考えるんじゃなくてもっと色々判断材料が出てくるところで考えよう。
そのためには⋯⋯
「人と会おう」
そうだな。それがいい。
まず、人と会う。
言語によって日本なのかそれ以外なのか。
日本だとしたらどこなのか。
少なくとも何かしらの情報は手に入るはずだ。
よし、そのためにも先ずは森を抜けよう。
こんな舗装されてもいないどころか道すらない所に来るやつなんて居ない。
居たとしても自殺志願者ぐらいだ。
「よーし!先ずはこの森を抜けるぞ!できれば異世界とかでありますように!」
そう意気込んで歩き出し、約1時間後。
結論から言うと、出られなかった。
歩けど歩けど変わらない景色。
環境音以外何も聞こえないし、特別なものはなにもない。
あとめちゃくちゃ足が痛い。
それもそうだ。だって裸足だもの。
強いて言うなら靴下くらいなもんだ。
そりゃ寝てる最中に靴を履くようなやつはいないから当然っちゃ当然なんだが⋯⋯。
にしても痛い。
……というか今の俺の装備ヤバすぎ無い?
頭装備:なし
体装備:安物のジャージ (上)
足装備:安物のジャージ (下)・靴下
アイテム:数千円しか入ってない財布
いや、かなり終わってんな。
これじゃあイノシシとかの野生動物に見つかったら一発K.O.なんですけど。
なんで俺は拳銃の一丁や二丁ぐらいもってねぇんだ。
⋯⋯作戦変更だ。
無策で無闇矢鱈に森の中を走り回ったところでこのまま出られるとは思えない。
森の中で森から出られる目印になるもの⋯⋯川か?
川なんかが見つかれば下っていけば森からは出られるだろう。
しかも水は人体の生命維持に必要不可欠な物だ。
なかったら困るし、いくらあっても困らない。うん、とりあえずは川に行ってみよう。
ふふふ、そして俺は忘れてないぜ、最初に耳を澄ませた時に微かに水の流れる音がしたことを!
しかも今はさっきより水の音が大きくなっている。
どうやらラッキーなことに適当に歩いた道程が水のある方向だったようだな。
くっくっく、まだ神は俺を見捨ててはいなかったのだ!
「よし!もう少し歩けばきっと着くはず!あと少しの辛抱だ、耐えろよ俺ぇ〜」
そう自分を鼓舞すると同時に視界の奥に動く何かが映る。
「ん?なんだ今の?まさかイノシシとかじゃないだ⋯⋯ッ!?」
木々の奥、鬱蒼とした森の奥で佇むそれ。
髪は緑、頭に付いている2本の触覚。
黒いマントを身に付けたその姿。
あれはまるで————
「リグル・ナイトバグ⋯⋯!?」
————東方project、幻想郷に住まう『妖獣』だった。