ひつよう
私はSNSに写真をアップするのが趣味だ。
日常のちょっしたことだったり、旅行先の普段は見られない景色や食べ物、学校の友達と出掛けたときの思い出など私には特別なことを。けれど他人にとってはそうではない。あまりフォロワーもいないけど、楽しいから続けている。
ただひとり、フォロワーに変わった人がいる。
私が写真を上げると1分以内に反応してくれる人。
ただgoodボタンを押してくれるだけ、でもそれがとても嬉しかった。
「でもさぁ、毎回すぐってヤバくない?」
「え?」
そのフォロワーさんの話をした時の友達の第一声はそれだった。
ストーカーっぽいじゃん、なんて続けるものだから、私は一気に不安になった。でもそのフォロワーさんは私の支えでもあった。相手はgoodボタンを押してくれるし、気持ち悪いDMを送ってきたこともない。そう自分に言い聞かせて、いつも通り写真を上げる。
今回は美味しかったバナナジュースの写真。
まだかまだかと画面を見つめていると、ふいに目の前が暗くなった気がした。顔を上げるけど、何もない。自分の部屋なのだから当たり前だ。眩暈かな、と思いながら画面へ視線を戻すと、1goodついている。あの人だ! と嬉しくなる一方でどこか不安な気持ちが残っていた。
『この写真色合いがきれい』
いつものあのフォロワーさんから初めてコメントを貰ったのは、友達に話してからひと月ほどだった頃だった。友達に言われたことも忘れてただただ嬉しかった。自分もそう思って写真をアップしていたのだ。その後も自分が良いと思ったところを褒めてくれるようになり、そのフォロワーさんのことを理解者だと思うようになった。ちょうど同じ時期に仲良くしていた友達とも仲違いしてしまったこともあったが、何より的確に褒めてくれる相手を私は求めていた。褒めて欲しくて仕方がなかった。
そのことを先生にも話した。
先生は私の話をちゃんと聞いてくれ、何度も頷いた。翌日から薬が増えた。薬は別に嫌いじゃないから別に良かった。
でも、あのフォロワーさんも消えてしまった。
先生には忘れるように言われた。そうしたい。そうしないといけないけど、まだ貰った言葉が頭にこびりついていた。
お題:忘れたいフォロワー