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推しの魔法少女の正体は大学生!?

 ノリと勢いだけで書いた作品です。

 区切りのいいところまでは書いてあるのでよろしければ是非!

 世の中には隠された秘密がある。


 上司のカツラの中や尊敬する先輩の性癖、思春期の妹の趣味、そして、魔法少女の正体。


 隠された秘密を知った時は大抵の場合、見て見ぬふりをするのが正解だ。

 だが、それが出来ない時はどうすればいいのだろう。


 上司のカツラが取れる瞬間に偶然鉢合わせたら?

 尊敬する先輩がSMプレイに興じている場面を目撃してしまったら?

 妹が魔法少女のイラストが描かれた抱き枕に虫の様に抱き着きキスしているところを見てしまったら?


 なんと声をかけることが正解なのだろう。


 さて、それを踏まえて皆に問いかけたい。


 大好きな魔法少女の正体が大学の同級生だった時、どう声をかけたらいいのだろう?


「あの、桃井さん……?」

「くっ……殺して!!」

「わあ、女騎士みたい」


 何故こんなことになったのか。

 ゆっくりと俺は今日の出来事を振り返ることにした。


***


「ここは私たちに任せて早く逃げて!」


 突如、街中に現れたのは、黒く鬼の様に角が生えた二階建てのビルと同じくらい大きな化け物だった。

 そんな化け物から人々を守る様に姿を現したのは三人の少女たち。

 いずれもアニメに出てくる魔法少女のようにフリフリの衣装を身に纏い、凛々しい表情で化け物と相対している。


「ありがとう、マジピュア!」

「マジピュアが来てくれた!」

「これで安心だ!」


 マジピュア――そう呼ばれる少女たちの登場に沸き立つ街の人々。

 さっきまで化け物から逃げていた人々の中には、足を止めて彼女たちの姿を見ようとするものまでいる。

 ちなみに、俺――南野遼(みなみの りょう)もそのうちの一人だ。


 今年で二十歳になるが、昔から魔法少女もののアニメが好きだった俺にとってマジピュアは現実に現れた憧れの存在だった。

 特に、マジピュアの中でセンターポジションのピュアチェリーが推しである。


 戦いに巻き込まれないように距離を取りつつ、スマホを構える。


 今日こそ、今日こそ写りますように……!!


 必死に祈りながら、推しであるピュアチェリーの美しい姿を連写する。


 ひゃあああ!! 可愛いぃいい!!


「「「キャアアア!!」」」


 しかし、今日の敵は強敵なのかマジピュアたちが攻撃をくらいコンクリートの上に倒れこんでしまう。


 そ、そんな! くっ! あの化け物め……量産型の癖に強い!


「マジピュアまけちゃうの……?」

「やだぁ……」


 マジピュアがピンチになったことで、俺の横にいた女の子が泣きそうになっていた。

 その子の母親が大丈夫と言うが、女の子は依然として不安そうにしている。


 これはまずい。

 魔法少女ものを愛してきた俺は知っている。

 ”彼女”たちを奮い立たせるものは弱音でも涙でもない。


「泣くな、ちびっ子」

「え……? 誰……?」


 突然声をかけて来た俺に不審な目を向ける母娘。

 警戒心が高いのはいいことだ。


「誰か、か。ファンさ。マジピュアのな」

「へ、へぇ……」

「俺の正体はどうでもいい。大事なことはマジピュアたちがピンチということだ。なあ、ちびっ子。マジピュアに勝って欲しいか?」


 俺の問いかけに女の子はやや困惑気味だったが、頷く。

 

 その意志があればいい。

 その思いこそが大事なのだ。


「なら、ちびっ子よ。お前がするべきことは応援すること、それだけだ。お手本を見せてやる。その小さな眼を見開いて、良く焼き付けろ……!」


 スマホをポケットにいれ、息を大きく吸いこむ。

 そして、お尻側のポケットに仕込んだペンライトを構え、ゆっくりと天に向ける。

 ペンライトは四本。

 右手には桃色と青色を一本づつ。左手には俺の推しのカラーである紫色のものを二本だ。


 いつも戦うのは彼女たちだ。

 だが、俺たちは傍観者のまま終わっていいのか? 否、出来ることは少ないかもしれないが、それでも俺たちだって一緒に戦える。


「マジピュアがんばええええええ!!」


 その場に響き渡る様に腹から声を出す。

 その声に、その場にいた街の人は勿論、倒れていたマジピュアも、黒い化け物さえも俺の方を見る。


「ほら、ちびっ子。お前も一緒にどうだ?」

「お兄ちゃん……うん!」


 やはり子供は純粋でいい。


「「マジピュアがんばえええええ!!」」


 ちびっ子と二人で声援を送る。

 何度も何度も声援を送るうちにマジピュアを応援する声は大きくなっていく。


 そして、その声援は確かに彼女たちを奮い立たせた。


「こんなところで、へこたれていられないよね」

「ええ、そうですね」

「まあ、お金貰ってるしね」


 瞳に光を宿し、ピンチをものともしないような笑顔でマジピュアたちが立ち上がる。


 ふおおおおお!!

 これこれえええ!!


「二人とも行くよ!」

「「はい!」」


 こ、これは来るのか!?

 来てしまうのか!?


 ピュアチェリーを中心に三人が手をかざす。

 すると、三人の目の前に巨大なハートが出来上がる。そして、ピュアチェリーの手にはいつの間にか弓のようなものが握られていた。


「「「マジカルラブアロー!!」」」


 来たああああ!!

 新必殺技だあああああ!!


「ギョエエエエエ!!」


 マジピュアの新必殺技を浴び、黒い化け物は浄化されていき、姿を消した。

 そして、歓声が沸き起こる。


 その歓声を受け、マジピュアたちは少し恥ずかしそうに微笑んでいた。


 か、可愛い!!

 好き!



***



 無事に化け物を倒した後、マジピュアたちは何処かへ立ち去って行った。

 そして、街の人たちもやがて何事もなかったかのように散り散りになる。


 化け物が暴れたにも関わらず、街はまるで魔法でも使われたかのように元通りになっていた。


「そういや、写真今日は撮れてるか……?」


 恐る恐るスマホの写真フォルダを見るが、そこには写っていたはずのマジピュアの姿には白い靄のようなものがかかっており、その姿は見えなくなっていた。


「やっぱり……」


 ガックシと肩を落とす。


 不思議なことにマジピュアを写真に収めようと思っても、絶対に姿は残らない。

 おまけに彼女たちの情報は不自然なほどに広がらない。

 この情報社会において、正体不明の化け物がいたらあっという間に国中に情報が回りそうだが、不思議なものだ。


 まあ、そんなことは気にする必要はない。

 寧ろ、問題なのはマジピュアの美しい姿を残す手段がないということだ。


 写真は勿論動画もダメ。

 せめて声だけでもと思ったが、音声すら残らない。

 仕方ないので、絵を描いてみたりどんな姿か文章に残したりしようと思ったこともあるが、決まって途中で彼女たちの姿を思い出せなくなる。


 マジピュアがいるということは分かるが、どんな姿でどんな声かが靄がかかったように思い出せない。


 まるでホラーだ。


「はぁぁ……。推しの姿が思い出せないのは辛い……」


 下を向きながらトボトボと歩いていると、推しの波動を感じた。


(推しの波動とは、自分の推しから放たれる特殊な波動のことである。察知できるようになるまでに数年の修行を積む必要があると言われている)


 これは……!

 まさか、近くにいるというのか!?


 目を閉じて神経を研ぎ澄ませる。

 すると、近くの路地裏から微弱な波動を感じ取った。


 あそこか!


 早速近づき、こっそりと路地裏の様子を伺う。

 すると、そこには何故かピュアチェリーの姿があった。


 うっひょおおお!! 可愛いいいい!!


 折角会えた機会だし、サインをお願いするか?

 いや、でもオフかもしれないし声をかけない方がいいか?

 せ、せめて写真だけでも……いや、でも盗撮になるかもしれないし……。


 自分の良心と葛藤を繰り返し、そして俺は己の欲望に負けた。


 声をかけよう。それで、断られたら大人しく立ち去ろう。

 深呼吸をし、覚悟を決めてから思い切ってピュアチェリーの前に姿を現す。


「すいません!!」

「え!? あ、ちょっ――み、見ないで!!」


 そこで俺が目にしたのは、世にも奇妙な光景だった。

 ピュアチェリーの衣服が光の粒子と化し、その身から離れていく。

 更に、彼女の特徴的な桃色の髪も徐々に栗色の髪に変わっていく。


 見ないで、そうお願いされているにも関わらず、俺はその光景から目を離すことが出来なかった。

 やがて、光の粒子が無くなり、残ったのはワンピース姿の美女だった。

 しかも、その女性に俺は見覚えがあった。


「桃井さん……?」

「……ヒトチガイデス」


 その人は俺の大学の同級生の桃井春香さんだった。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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