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FIND FIXER:切り札は、この掌の中に。  作者: パタパタさん・改
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プロローグ-誘い-

 日建(ひたち)高校のとある部室、通称『娯楽部』と言われている”遊戯部”で、二人の高校生が真夏には似合わない炬燵に足を通して溶けていた。


 「あづい・・・クーラー入れて・・・・・」


 「此処にクーラー無いの知ってるだろ・・・・・・・」

 

 「そうだった・・・・」


 一人は茶色の癖のある地毛をポニーテールにした女子高生だ。メイクをしていないにも関わらず、その素肌は天使の輝きを見せていた。

 もう一人の高校生はふっくらとした黒髪が特徴的な男子だ。こちらもこちらで暑さにはかなり参っているようで、首筋にこびりついた汗を拭こうともしていない有様だった。


 結華 聖歌(ゆいはな せいか)羽田 桜星(うだ おうせい)の所属する『遊戯部』は”部”と銘打たれてはいるが、その正体はただの遊戯に関する同好会なのだ。それ故、学校から貸し出されたのは窓が一つしかない風通しの悪い部室、もとい空き倉庫だった。

 電気は豆電球のみ。基本は陽の光を頂戴して活動をするこの部は夏は暑く、冬は寒いと言う本当に近未来的技術を誇る日本にある建物なのかと疑いたくなる温度の変化模様だ。


 そんな人でも行動不能になる部室で、彼らの部の醍醐味ともいえる無線のPCが動くわけがない。つまりは”部”そのものの機能の停止。簡単に言えば、部の崩壊だ。遊ばない部活が部活な訳がない。


 そんな二匹のナメクジが炬燵の上でうだるのは今に限ったことではない。毎年毎年、夏になるとこの部はこうなる。


 違う事と言えば、そう――――。


 一つのけたたましい足音が此方に近づいてくることだった。


 

 「やぁやぁ失礼するよお二人さんッ!!」


 

 別校舎、つまりは本校舎の前に使われていた旧校舎。そこにある部は数えても裏返しても一つしかない。


 『遊戯部』。


 そんなところにわざわざ来るようなモノ好きと言えば、頭のオカシイ奴を除けば一人しかいない。


 「なんですかね才理(さいり)先輩。今日はPC動かないんで活動は無しですよ」


 「あっはっはっは!君らの電源ボタンは押されてすらないだろう?――それより、とぉんでもない!ビッグニュースがあるんだけど、・・・・聞いてかない?」


 この進学校の中でも異彩を放つ人物”才理 彩架(さいり さいか)”。

 文武両道、才色兼備、高校二年生にしては溢れ出すぎているその才能の数々と、誰もが理解できない変わった考えを持つ美少女であり、この”遊戯部”を作った張本人でもある。


 しかしながらそんな天賦の才を持つ美少女に話しかけられた彼ら、特に桜星の態度は淡白だった。


 「結局聞かされるんですから・・・・、で、何でしょうか?」


 「一行で簡潔に言ってください・・・後暑い・・・」


 最早ナメクジ人間と言っても差し支えないような彼らに彩架は、「後輩の心は難しい!」と心にも思ってないような軽口を言い、腕を組んで考え始める。乙女には似つかわしくない顔だ。


 彼女がここまで吹っ切れたような態度をするのも彼らの前だけだ。それ以外でする態度はそれこそ品行方正を形にしたような、優等生である。


 「(そもそも、こんな美少女先輩に話しかけられた男子女子ってすごい盛り上がりを見せるのに、この子らと来たら私の前でもずっと”これ”だし・・・・)」


 決して己惚れているわけではない。彼女は自分自身の魅力をよく知っているだけだ。

 現に彼女が話しかけてきた男子女子は、彼女自身の持つ匂いやカリスマ性に惹かれて変にどぎまぎしてしまい、中には女子でも告白をしてくる時がある。


 だがしかし、この二人だけは違った。


 どちらもさして”優等生な彼女”に興味は無かったのだ。


 「(桜星君は何故か私が”被ってる”のを見破って来たし、聖歌も聖歌で私のダメな部分が好きとかよく分からない子だし・・・・、う~~ん。やっぱり無理だなこの子らの前だと・・・)」

 

 彩架は蒸し暑い部室で背伸びをして息を吐き、塩振ったら多分溶ける野生のナメクジ二匹を見て言う。




 「―――家にさ、VRバイザーあるでしょ?」


 


 「「????????」」


 そんな先輩の一行に凝縮された言葉を受け取った二人は困惑の表情を浮かべた。


 

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