新神《しんじん》女神マナ
「我の名は【女神マナ】っ!神養成学園の天才にして――――――」
“なんじゃ此奴。自分の天才と抜かしておるわ”
「ぷっ……止めておきましょう主様。この《自称神》と名乗る人は逝っちゃっているのでしょう、頭が」
“そう、なのか……可愛そうに。ならば暖かい目で見守ろうとするかの”
「ななななに言ってんですかっ!ほんとーにっ、天才だったんですよ!首席なんですよ、わたしっ!」
“そうか。お主の頭の中ではそうなんじゃろうな”
「妄想乙」
「むっきぃぃぃ〜~~っ!!!」
突如、ロゴスの頭上に落ちてきた侵入者―――――女神マナ。
彼女は女神、というには幼い。第二次成長期がまだ来ていない小学生か中学生の中間くらい。より簡潔に言うなら、背は低く凹凸が乏しい子供だ。己を女神だと言う姿は、あまりにも子供が背伸びしているようにしか見えない。
何色にも染まっていない、白髪の髪は女の子にしては非常に短い。ベリーショートという訳ではないが、もし彼女の髪が黒ならばおかっぱにしか見えない。つまり、髪型はおかっぱだ。
“とりあえず……アクアリウス、何でもいい。この小娘に何か服を渡せ”
「えっと…………では、これで」
何故か裸のままの彼女に、アクアリウスは独断と偏見で過去にアラクネが製作した白を基調とした軍服みたいなもの。元々、今より幼かったアクアリウス用に着せたものだが今では着ることは出来ないものだ。
「ほぅ。この女神マナに服を捧げるとは。しかも中々良いものですね、褒めて遣わしますよ」
「黙って着てください。阿婆擦れ女」
「あば―――――っ!?こ、このっ!人間風情が、この女神に対してなんと失礼な事をっ」
「ならちゃっちゃと服着てください。裸のままでいる方が失礼なのでは。それほど自身の容姿とスタイルに自身があるかは知りませんが、こちらとしてはいい迷惑です」
“言うとおりじゃぞ”
「くっ……わ、わかりました!」
全く恥じらいの無い様子で女神マナは着替えていく。しかし、一応女神ではあるがロリには興味ナシなロゴスとアクアリウスはまったりとプルートが用意したお茶を飲んでいた。
「あ、あの」
“なんじゃ、女神(笑)”
「(笑)とか付けないでもらえませんか!?」
“じゃて、なんじゃ”
「この女神である私の生着替えを見て何とも思わないのですが?こ〜〜〜んなに綺麗な、絶世の美少女でスレンダーな私の裸体に」
“……や、子供の身体に興味あるわけなかろう”
「自意識過剰なんですね」
可哀想な目で見てくるロゴスとアクアリウスに、女神マナは拍子抜けした様に白くなっていた。恐らく、彼女は自身の容姿とスタイルに自身があったのだろう。それは単なる自意識過剰なのか、或いは彼女をその様に見ていた者が多かったのか。
白くなった女神マナに、ロゴスは聞く。
“じゃて、お主はなんじゃ。何故上から降ってきたんじゃ”
「わ、私は女神なんですっ!この世界を管理する為にやってきたのですが……突然、私の舟が爆散してしまって、そのまま落ちてきたのです」
“この世界を、管理、じゃと?”
「そうですっ!有り難く思ってくださいっ!この女神マナが、直々に、この世界を管理してあげるのですからっ!!!」
この女神マナの目的、それはこの世界を管理すること。その言葉に、アクアリウスとプルートは黙ってはいたものの、分かりやすく殺気立っていた。
世界の監視をしているのは、ここにいるロゴス。この星の化身たるアルケーが認めし唯一の存在であり、世界の監視を冠するのはロゴス以外には認めない。それ故、彼等は自動的に女神マナを敵だと認識したのだ。
――――――が。
“…………ぇ、まじで?”
「へ?」
“お主――――――い、いや!女神よッ!!!この世界を監視する、というのは真かッ!!!”
「ぇ、ぁ、はい。この女神マナ、この世界の監視も管理もしましょう。ありがたく―――――」
“ほ、ほほほほほんとうかッ!!!女神じゃ――――女神が現れよったぞぉぉぉぉおっ!!!”
「ふぇっ!?」
まるで地獄の中に天国を見つけたかの様な、そんな喜びをロゴスは大々的に身体で現していた。そして女神マナに対して、懐いた犬や猫の様に身体をすりすりさせるのだ。
「あ、もふもふ……」
“女神よ、女神マナよっ。お主の言葉、偽り無いかの?”
「当然ですっ!この女神マナに二言はありませんっ!」
“そうかそうかっ!ならば、お主を監視者として認めようっ!あ、ちと待っておるのじゃっ”
「あ、主様……?」
『よ、よろしいので……?』
自ら監視・管理をすると豪語した女神マナにロゴスは感銘を受けた。そして、ロゴスは直ぐに己の立場を譲ることにする。
だが、一応念話でアルケーに報告するのだ。
“アルケー、アルケーよっ!”
【むにゃ……もう食べれ―――――】
“アルケーッ!!!”
【はっ!?な、なんだ、ロゴスか!どうした、突然――――】
“ちとな。今ここに女神と名乗る者がいるんじゃが―――――”
【………………は?なぜ、侵入者がそこに?】
“まあ細かいことはよいじゃろうて。での?この女神、マナと言うのじゃがわしに代わってこの世界の管理・監視をしてくれるというのじゃよっ!”
【おいロゴス、まさか……】
“わしの名の元に、この女神を正式に監視者にするぞっ!!!”
【ろーごーすーぅぅぅぅ!?!?】
独断で女神マナを監視者として認めた事を察したアルケーは激怒した。
激怒した…………のだが、アルケーはこの星の化身そのものであり、全知全能だ。それ故に、ロゴスと女神マナのやりとりを過去を覗き確認する。
そして―――――。
【―――――ロゴス。女神マナに確認するのだ。“この世界を滅ぼすことはないか”、とな】
“む?アルケー、お主に女神の名を――――まあよい。あい、わかった”
何時にもなく真剣な様子のアルケーに素直に従うロゴス。ロゴスは、アルケーの言葉を伝える。
“女神マナ。この世界から確認したいことがあるそうな”
「この世界……?なんでしょうか」
“この世界を滅ぼすことはないか、と”
「……?何故監視するこの世界を滅ぼさねばならないのですか。そんな気一切ありませんっ!」
【……偽りは無い、か。ならばよし!女神マナよ、貴殿を我が星の監視者となることを認めよう】
「はい、ありが――――――へ?今のは…………?」
“その声こそが、この星のものじゃ。うむうむっ、よかったよかった!これでわしも思う存分サボれるぞっ!いや、わしはもう監視者じゃなくなったからのぅっ!頼むぞぅ、女神マナ”
「えぇっ!この女神マナに任せなさいっ!」
蚊帳の外になっているアクアリウスとプルートは呆然とするしかない。何せ、ロゴスは監視者という立場を女神マナへ正式に譲渡したのだ。何やらアルケーが【いやいやいやっ!ロゴス、貴様も監視者だからっ!譲渡とかありえないからっ!】と叫んではいるが、ロゴスは聞こえているのが聞こえていないのか。そして女神マナも女神マナで「私がこの世界を管理・監視するのですね……っ!」と夢と希望を、そして非常な現実を知らぬ愚かな姿に、アクアリウスとプルートはこの後の展開は不思議と予想ができてしまったのは言うまでもない。