第九十五話 メイドさん
メイドさんに案内してもらって、私とロザリィが住むことになるお屋敷に着いた。
しばらく空き家だったらしいけど、しっかりした鉄柵の門があって、庭も綺麗に草は刈られて、植木は剪定されてる。
お屋敷の方は大きな平屋で、陛下の話だと全部で10部屋もあるらしいよ。
見た目はちょっと古めだけど、壁や屋根に傷らしいところもないし、ある程度整備もしてくれてるんだろうね。
「結構デカいな。アタイら二人には大きすぎだよな」
「確かにねー。でも、カティさん達もここに住むんでしょ?」
カティさんっていうのは私達を案内してくれたメイドさんだよ。
私より10歳上だけど、まだまだ若々しくて、体つきも私やロザリィとは違って立派な山と谷があるよ。羨ましい。
それに、この国に入れるだけあって、それなりに戦うこともできるみたい。
「はい。私とあとの二人で既に大部屋を一つ使わせて頂いています。もし不都合がありましたら言って頂ければすぐに移動しますので」
「余るくらい部屋があるんだし全然いいよ。むしろ一緒でよかったの? 一部屋ずつ使ってもいいからね」
「そうですね……二人には聞かずに決めたものですから……本人から希望があればお願いするかもしれません」
「うん。遠慮なんていらないからね」
「アタイらはこのフユが終わったらしばらく帰らないしな」
「ご配慮感謝致します。ご不在の間は責任を持ってお屋敷をお守りしますので」
堅苦しいなぁ。帝宮勤めだったんだから仕方ないのかもしれないけど……。
「もっと軽く接してくれると嬉しいけどね。女五人で一緒に過ごすんだし、まぁ、これからかな。よろしくね」
「はい。それでは、中へどうぞ。あとの二人もご紹介します」
カティさんが玄関の扉を開けてくれて中に入ると、その二人が待っていて頭を下げてくる。
「「お帰りなさい。フィルナ様、ロザリィ様」」
お、おお……。
「フィルナさん、ロザリィさん。紹介します。緑髪のこちらがメアリー。紫髪の方がアリシアです」
カティさんも最初は様付けだったけど、なんとかさん付けで折れてもらったよ。さすがに、ねえ。
「初めまして! メアリーです!」
メアリーは明るい緑のふわっとしたショートカットで大きめのメガネを掛けてる。
メアリーの方は元気な子って感じ。
「アリシアです。よろしくお願いします」
そしてアリシアは暗めの紫の長いストレートで艶々の髪に鋭い吊り目がかっこいいね。
話し方もクールだよ。
ちなみにカティさんは陛下に倣って黒に染めてるらしい。その髪を後ろで束ねてるよ。
「よろしくね。私がフィルナで、こっちがロザリィだよ」
「「よろしくお願いします!」」
げ、元気がいっぱいでいいね。圧倒されそう……。
「お二人は堅苦しいのは苦手ということなので、楽に話して大丈夫です。二人は歳も近いでしょうし、身の回りはメアリーとアリシアに任せますね」
「うん。楽な方が嬉しいかな。あと、ロザリィはこう見えて──」
「フィルナ?」
「ああうん、ごめん。ロザリィも歳が近いってことにしといて」
「あははっ、わかりましたー! よろしくです!」
「ちょっとメアリー、いきなり軽すぎよ! すみません、よろしくお願いします」
「アリシアはお堅いねぇ」
「メアリーが緩すぎるんです!」
「ははっ、仲良いんだ?」
「二人とも22歳で帝宮ではずっと同室だったんだー」
「まぁ、嫌いではないです。このお屋敷にメアリーと一緒に勤めることになって安堵したのも事実ですし……」
「なるほど、二人は私の一つ下だね。そんな感じでいいよ」
「ああ、アタイもその方が楽だ。カティもそうしてくれていいからな」
「……っ! ぜ、善処します」
不意打ちを食らったカティさん、可愛い! そのうち砕けさせてみたくなるね。
「ロザリィ? 私と歳が近いんなら“カティさん“じゃないのー?」
本当は遥か上なんだけどね。
「アタイはいつでもこうだろ?」
「そうだけどさぁ」
「ふふっ。お二人も仲が良いんですね」
「どんな方かと少し不安でしたが、お二人のお世話をするのが楽しみになってきました」
こっちこそ、だね。これから2〜3ヶ月くらいだろうけど、楽しみだよ。
「それで、フィルナさん。陛下の手配された寝具の搬入が昼過ぎの予定となっておりますので、それまでにお部屋の確認をして寝室をお決めください」
「え? そうなの?」
何も聞いてないんだけど!
「結構デカいはずだからな、広い部屋がいいぞ」
……え? 何? ロザリィは知ってるの?
「まずは私たちが全部の部屋を案内しますね」
「では、メアリー、アリシア、お願いね。私はその間に昼食の用意をしておきます」
「わかりました、カティさん」
「ふふ、“カティ“でいいのよ? アリシア」
「は、はいっ」
お、カティさんはこんな風に笑うんだ。
「コ、コホン。それでは、昼食が出来ましたらお呼びします」
ああん、そのままでいいのにー。
見つめてたらさっきまでの顔に戻っちゃった。
「あ、部屋見終わったら手伝いに行くよ」
「ええっ? フィルナ様、さすがにそれは……」
「様なんて付けなくていいよ、メアリー」
呼び捨てはさすがに難しいかな? 私が気にしなくても向こうは無理だよね。
「そうそう。アタイも付けなくていいからな? それと、フィルナの料理はすごいぞ。料理担当はフィルナでもいいくらいだ」
「いや、手伝うだけだって。カティさん達の仕事奪っちゃダメでしょ」
「そうです。家事は私達にお任せください」
「そうか? 一度食べたら病みつきになるぞ?」
「えっ? それはちょっと気になる……」
「メアリー! でも、確かにそこまで言われると……」
いいコンビだなぁ。
「ふふっ。まぁ、最初くらいいいかな? 作ってあげる」
「わかりました。準備だけでも進めておきます」
カティさんは話し方が堅いだけで、柔軟に対応してくれるね。その方がやりやすくて助かるよ。
「うん、よろしく。それじゃ、メアリー、アリシア、案内お願いね」
「はーい」
「どうぞこちらへ」
二人の案内で、屋敷の全ての部屋を回る。
「うん、寝室は東側の角部屋かな。で、二人はぶっちゃけカティさんと一緒の部屋で平気?」
メイド三人が使ってる部屋は広さには全く問題はなさそうだったけど、やっぱり歳が離れてると気まずかったりするかな、って思うんだよね。
今ならカティさんもいないし正直なところが聞けるかな?
「わ、私は問題ありません……」
「あたしはちょっとアリシアとお喋りしにくい空気かなーなんて……」
「もしかしてカティさんって、結構厳しい?」
「厳しいというより、真面目な方ですね」
「うんうん。お二人をお迎えするまでにキチンとするんだって、張り切ってましたよ」
「なるほどね。旦那さんとかいるのかな?」
「さすがにいなかった時が怖くて聞けません……」
う……それは確かに。
「ならアタイが聞こうか?」
「任せた!」
屋敷の主人としてちゃんと把握しておかないとだしね。
旦那さんがいるなら会える時間とか作ってあげたいし。
こういう時のロザリィは頼もしいよ。っていうか、陛下に聞いておけばよかった。
「ちなみにあたし達は恋人もいませーん」
「ちょっと! メアリー!」
「はは、いいじゃない。私達だっていないんだし」
「そうなんですかぁ? 陛下とずっと一緒にいたって聞いてますよ?」
「だからメアリーは気安すぎだって」
「いいのいいの。友達みたいな感覚の方が私は嬉しいよ。ただ、私達は陛下とも友達かな?」
「へ、陛下と友達って……それはそれで凄いんですけど」
「とんでもない人たちのお世話をすることになったのかも……」
「そんなんじゃないって。ほら、楽に楽に」
そう言ってアリシアの肩を揉む。
「ひゃっ。が、頑張ります!」
「ありゃ? もっと硬くなっちゃった」
「あはは。アリシアも少ししたら慣れると思いますよ」
「まぁ、今日会ったばかりだから仕方ないよね」
「す、すみません……」
「気にするな。ほら、楽に」
ロザリィもアリシアの肩を揉む。私の真似?
「ひゃっ! も、もう……ロザリィさんまで……」
お、ちょっとだけ表情が柔らかくなったかな?
「はは。部屋のことは実はカティさんに先に聞いて、二人の意見次第って言ってもらってるから、あとで話しておくよ。もちろん、悪いようには言わないから安心して」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃ、お昼作りに行こうかな」
「ああ。アタイは見てない風呂とか確認してくるよ」
「じゃあ、あたしがロザリィさんをお風呂にご案内しますね」
「それなら私はフィルナさんを厨房へご案内します」
「よろしくー」
って、厨房って言った? もしかしてそれも結構広いのかな?
アリシアに案内されて入ったそこは、確かにキッチンっていう規模じゃない、本格的な厨房だったよ。
元々住んでた人ってどれだけ大家族だったんだろ。五人でも広すぎる屋敷貰っちゃったなぁ。
お読みいただきありがとうございます。
次回、屋敷での生活。




