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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第三章 真実への旅
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第九十話 宰相の真意

「陛下、お帰りなさいませ」


 帝宮に戻ると、皇帝の間では早馬の報告を受けた宰相さんが待ち構えてた。


「今戻った。それで、あいつらはどうした?」


 まずは宰相さんが一足先に連れ帰った人たちの確認だね。


「はい。秘密裏に聞き取りをして、協力的な者は調書を取ったあと、牢へまとめて入れています」


 まぁ、百人近くをいきなり捕縛してきたなんて帝都の人にも知られない方がいいよね。


「反抗的なやつもいたってことか?」


 宰相の言い回しにロザリィがすぐに反応した。


「ええ。そちらは()()尋問をした後別の牢へ、念の為個別に入れています」


 個別に入れられるってことはそこまで多くないのかな。


「そいつらの中にまだ反抗的な者は?」


「いませんね」


 しれっと言ってるけど、これ絶対やったの軽い尋問じゃないよね? 下手したら拷問とかしてるでしょ?


「なるほど、わかった。そいつら全員慈善事業でもしてもらって釈放でいいだろう。内容は任せる」


「フフフ、かしこまりました」


 怖っ! 笑みが怖いよ!


「宰相さんって何者?」


 いや、魔族ってことはもうわかってるんだけど、なんていうか……なんでこの立場にいるんだろう。


「自己紹介してませんでしたね。私は名前をクリスと言います」


「いい機会だな。その様子じゃ黒幕も大したことないだろうし、先にお前のことを聞かせてくれるか?」


 うん。大変な相手なら真っ先にその調書を見せてくるだろうしね。


「そうですねぇ……私のことと言っても何から話しましょうか」


「クリスさんはこの国の中心を目指してたって言ってたけど、それってどうしてだったの?」


 気になって仕方がなかったから真っ先に聞かせてもらった。


「ふむ……順を追って話しましょうかね。こちらへ来て百年くらいですかね、さすがに当時は日数や年数なんて考えていませんでしたから曖昧ですが……こうやって人の姿を真似するようになってからの話です」


 さすが長寿だね……いきなり時間のスケールが違うよ。

 確かクリスさんは自分を拒絶した人間を敵視するんじゃなくて、逆に興味を持って溶け込もうとしたんだったね。


「あの頃の帝国は荒れていました。今のような決まりはなく、文字通り強さが全て。そんな中で私はとある少年と出会いました」


「少年?」


「後に皇帝となる子です。ですが、彼はその時点ではまぁ、皇帝になれるような腕はありませんでしたね。ただ、妙に私に懐いて教えを乞うてきました」


「魔族だとか明かしてないんだよね?」


「その辺は才覚があったようで、どうも最初から私の力自体は見抜いていたようです」


 あ、力を持ってるのは認めるんだ。ていうか、この人も相当強いよね。……陛下より。


「そうして彼と過ごしているうちに、私は彼がどこまで行くのか見たくなりました。彼自身、ずっと皇帝を目指していたのもあって、自然と私はその近くにいよう、と」


「なるほどな。当時は宰相って役職はなかったのか?」


「そうですね。その彼が皇帝になった後、他国のことを学んで私に与えたのが始まりでしたから」


 才能があったとはいえ、皇帝になるほど努力して、その後もしっかりと勉強もするって、よっぽど賢君だったんだろうなぁ。


「彼は私をよく使()()()くれましたよ。そのおかげで私は色んなことを知り、帝国は立て直されていったのですが……」


「寿命、だな」


「ロザリィ様にもいつか同じ()が来ますよ。そして彼には魔族であることを打ち明けていましたから、その後も生き続ける私に彼はこう言ったのです」



『帝国を頼む。クリスがその時一番良いと思う者を次の皇帝に……』



「それが今の……」


「そんな前からだったのか……」


「ええ。かれこれ20代くらいでしょうか。長く続いた皇帝もいれば短命な皇帝もいましたね。本当に面白いものを見てきました」


 あ、この人ヤバい人だ。価値観が違うっていうのもあるんだろうけど。


「よくそんな長いこと宰相やってて不審に思われないな」


 確かに。ずっと同じ人だなんてどこかで変に思う人が出てくるよね?


「いえ、まぁ、私の名前なんてほとんど知られていませんからね。時々代わったことにしてもらっていたんですよ。代々の皇帝の末期には一部を除いて私が長命であることは伝えていましたから」


「いや、長命って……伝説の森人(エルフ)じゃあるまいし……」


 こっちには魔族みたいな長寿種族なんていないはずなんだけど……。


「エルフ? そんな種族がいるのですか?」


「ううん、そんな物語があるだけ」


「そうなんですか? その割にはみんな私の話を信じてくれてたんですがね」


 通じるんだ……。昔の人は結構アバウトなのかも。

 それにしてもずっとここにいるクリスさんが知らないってことはエルフはさすがにいないんだろうね。

 私が見た物語もタイクーンにしかなかったのかも。


「いや、まぁ、全然老けねぇから、その気持ちはわかる」


「もしかして、その姿でずっと……?」


「ああ。先代の頃からこのままだ」


「陛下は何も気付いてなかったのか?」


「陛下はこう見えて抜けているところがありますから」


「んなっ! 待てって。フィルナ、お前は師匠の顔見たよな? あれでいくつだと思う?」


「うーん……70から80くらい?」


 少なくとも90歳だったオババよりは若く見えた。


「だろ? でも、あれで120歳超えてたからな」


「120!? 嘘っ!?」


 老衰で最期を迎える人でも大体90。長くて100歳くらいなのに……それより生きてて若々しいなんて。


「あの人を見てたから余計に気付かなかったんだよ」


「なるほどな」


「確かにあの方の在位期間は歴代でも最長でしたね」


「お前が挑戦者を全員俺に充てがったからだろうが」


「そして全員貴方に倒されていきましたね」


「ったく、結構危ないやつもいたんだぞ?」


「それでも、貴方は勝ちました」


「あれ? もしかして陛下の本当の師匠って……」


「ん? あれ? そうなのか?」


「型を教えたのは間違いなく先代ですよ」


「だが……そう考えると宰相も師匠だったんだな」


「相応しい人物に皇帝になってほしいですからね」


「そういう感覚はあるんだな」


「最初は違ったんですがね。国を悪くする皇帝を見ると……ねぇ。どうやら私もあの彼につられてこの国が好きになってしまったようで」


「お前まさか……」


「おっと、口が滑りました。忘れてください」


「え? 私聞きたくないこと聞いちゃった?」


「フィルナ、忘れろ」


「わ、わかった」


 でも、最初に拒絶されただけで、クリスさんにも信頼できる相手はいたんだね。

 アブない人だけど、その人への気持ちが今も残ってるのが伝わってくるよ。

 今の陛下もそうなれたらって……私が言うことじゃないかな。


「さて、私の話はこんなところですかね」


「そうだな。あとは『ダンジョン』のことも聞きたいが……一息いれるか」


「着いたばかりですからね。フィルナ様とロザリィ様も同じお部屋を用意させていますからお寛ぎください。お風呂も用意できたら呼びに向かわせます」


「あ、それは嬉しい。『浄化』はしたけど流したかったんだよね」


 サイクロプスの脳漿被って洗えてないからなんとなく気持ち悪かったもん。


「アタイが責任もって洗ってやるからな」


「ふふ、ありがとう」


「何かあったので?」


「ああ。ちょっとな。その辺のことも聞きたいから後で話そう」


「わかりました。陛下も少しお休みください」


「すまないな、仕事任せっきりで」


「いえ、これ自体は好きなので」


 陛下も素直に休むことを選んだね。

 一応『大地の息吹』で体調は戻ったみたいだけど、ちゃんと休めるのはこれがあの後初めてだからかな。


 部屋に入ってしばらくしたらメイドさんが呼びにきて、ロザリィと一緒にお風呂に入った。

 お互いに洗い合って湯船に浸かる。


「ロザリィ? 近くない?」


 ここのお風呂は広いよ? そんなぴったりくっつかなくても……ね?


「フィルナ……」


「もしかして……さっきクリスさんが言ってたこと?」


「ああ。やっぱりフィルナも……アタイを置いて……ごめん、なんでもない」


 困ったなぁ。こればっかりはどうしようもないし……。


「さっき話してる時、クリスさんは寂しそうにしてた?」


「いや……ちょっと離れて暮らしてる親友を自慢するようだったな」


「そうそう。それだけ濃密な時間を過ごせたんだよ。その皇帝が生きてる間にね」


「そうか……なら、遠慮しないぞ?」


「え? ちょっとロザリィさん?」


 グイッと顔を向けられて、ロザリィの顔が近くなる。そして──。



「は、初めてだったのに……」


「アタイもだ」


 唇に柔らかい感触が残ってる……これは忘れられそうにないよ。


「もー! こういうことは男女でやるんだよ!?」


「何? そうなのか?」


 そっか。知ってるわけないよね。なら……ってならないから!


「絶対人前でしないでよね?」


「人前じゃなかったらいいのか?」


「うぐっ……だ、ダメ!」


「そっか……」


「何もそこまで落ち込まなくても……」


「だって……」


「もう、あと一回だけなら……いいよ」


「ホントか? い、いくぞ!」


 ちょっ! そんな気合い入れて向かってきたら──。



 ガチッ。



「いったぁー」


「ご、ごめん……」


 お互いに口を押さえて俯く。


「優しくしてよぉ」


「わ、わかった。次はちゃんと……」





「私が先に死んじゃうのは仕方ないとして……ロザリィはどれくらい生きられるのかな?」


「どうだかな。実は魔族が死ぬところも遭遇したことがないんだ」


「それって、魔物にも殺されることがなかったってこと?」


「ああ。ちょっと気になることもあるから、その辺はあの宰相──クリスにも聞いてみようと思ってる」


「そっか。ロザリィは私より先に死なないでね」


「それはズルくないか?」


「ズルくないもん」


「だけど、フィルナが危なかったらアタイは守ると思うぞ」


「うん……。だから、その時は私を守った上でちゃんと生きててね。そしたら私がすぐに回復するから」


「わかった。約束だ」


「うん、約束」


 そして、お風呂から出た私達は疲れてたのかそのままベッドで眠ってしまってた。


お読みいただきありがとうございます。


ちょっとロザリィさん?


次回、魔族と魔物。

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