表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第三章 真実への旅
91/152

第八十九話 ゲート

「あいつ、最初から自分だけはああやって帰る気だったな」


 『ポータル』で転移して行った宰相さんを見送った後、ロザリィが溢す。


「だな。全く、皇帝を置いて帰る宰相がいるかよ……」


「はは。それよりそろそろ離れてくれない?」


 さっきからずっと私の肩を借りたまま。


「今はお前に甘えたい気分なんだよ」


 ふざけた顔だけど、何かがおかしい。


「……陛下? ちゃんと回復してるよね?」


 超級魔法の『ヒールⅢ』を使ったんだよ?


「……たぶんな」


 一転して真剣な表情。


「いやいや、おかしいでしょ?」


「さっきより楽なのは間違いない。だが、すぐには動けそうにないな」


「そんなこと……回復魔法が効いてないってわけじゃなさそうなのに……」


「今回のはほとんど疲労だからじゃないか……? 限界を超えた自覚はある」


 珍しく弱気だね。

 それより魔力枯渇に似てる……? 体力の消耗だから?


「もう一つ……試してみるよ」


 久しぶりにアレを。


「何をする気だ?」


「自然魔法。ロザリィ、念の為警戒しといて」


 今の魔力でやったら……どうなるんだろう。


「わかった」


「陛下はちょっと座ってて」


 私もすぐに動けるように。


「ああ」


 『大地の息吹』!


 自然魔法の消費魔力は残存全魔力。

 そのせいで身体中の魔力が抜けていく脱力感。これも久しぶり。


 陛下の体が光に包まれる。


 そして、ロザリィの言うところの『特異点(ゲート)』が開いて魔物が現れる……。


「おいおい……なんだありゃ……」


 私は一瞬だけ魔力枯渇状態になってフラッとしちゃったけど、すぐに回復して踏み止まって陛下の視線を追う。


「オーク……じゃない。一つ目の巨人(サイクロプス)?」


 まず目に入ったのは足だけ。それを辿って上を見上げると、巨大な棍棒を持った腕、そして目が一つしかない顔。


「フィルナ! 来るぞ!」


 ロザリィの叫びでハッとする。

 サイクロプスはノーモーションで棍棒を振り下ろしてきた。


「陛下!」


 慌てて陛下を抱き抱えて飛び退く。


 そして私を空過した棍棒が地面を抉る。


「あんなのAランクどころじゃないぞ。間違いなくSランクだ」


「だろうね。危ないから陛下は退がってて。もう動けるでしょ?」


 サイクロプスといえばフェンリルと同じ扱いの伝説上の魔物。

 実在を確認されてないからランクがついてない。だけど、今目の前にいるのはどう見てもAランクのオーガエンペラーよりも遥かにヤバい魔物。


 何がヤバいって、どこから攻めたらいいか全然わかんない……っていうか、急所が遠い。

 こんな大きな魔物は……モンパレで出てきたオークジェネラル以来で、あのバハムートより大きい。

 あの時のオークを倒したきっかけは私の自然魔法だったけど、ここでまた使うわけにはいかないよね。


 ロザリィが足を殴りつけて注意を引きつけてくれてるうちに陛下を置いて戻る。


「フィルナ、下を殴っても意味がなさそうだ。意外と足腰しっかりしてるぞこいつ」


 膝の裏とか狙ったりしたみたいだけどビクともしてない。


「倒れさせるのは難しそうだね」


 棍棒の振り下ろしや踏み付けを躱しながら作戦を考える。


「そうだ、フィルナ。アタイを打ち上げてくれ。あの目を狙ってみる」


「わかった。外したら隙だらけだからね。タイミング合わせてよ」


「ああ。次、振り下ろしが来たら行く!」



「ロザリィ、避けて!」


「くっ、あいつ、アタイらの言葉わかるのか?」


 そんなはずはないと思うけど、全然振り下ろして来なくなった。

 それでもチャンスを待ちながら足に少しだけでも打撃を当てていく。

 そして──。


「来た!」


「いくよ、ロザリィ!」


 ロザリィのロッドを受け取って、それを両手で思いっきり振り上げる。

 そして、それに乗ったロザリィが私の力と自分の脚力で飛び上がる。


「ミーアとリルカ自慢のこの靴を食らいな!」


 最高点でクルッと回転して降り始めたロザリィの渾身のカカト落としが、振り下ろしした体勢からロザリィを見上げたサイクロプスの目に直撃した──。


「うへぇ……。あの二人……人を蹴ったら危ないとかいうレベルじゃないよこれ……」


 正直ドン引き。


 ロザリィの脚力もあるんだろうけど、目どころか頭部が吹き飛んだ。

 おかげで真下にいた私はモロにサイクロプスの脳漿を被った。


「フィルナ……ごめん。まさかここまでとは思わなかった」


「まぁ、仕方ないよね。初めて使ったんだし。『浄化』っと」


 やっぱり私にはこの魔法は洗浄魔法だよなぁ。


「陛下は無事か?」


「うん。もう大丈夫そう。ウル達呼んで行こう」


「宰相の馬も無事みたいだな」


 何も言ってないけど、ちゃんと危険を察して離れてたみたいで駆け寄ってきてる。賢い子だね。


 サイクロプスをそのまま魔法鞄(マジックバッグ)に入れて陛下のところに移動。


「すごいな。てっきりお前らでも苦労するもんだと思ったぞ」


「この靴の踵の硬さがおかしかっただけだよ」


「わかってたら最初からこれで蹴ってたんだけどな」


「そのロッドで効かなかったからね。ビックリしたよ」


 ロザリィのロッドは『鑑定眼』でも素材がよくわからない。魔界の鉱物なんだろうけど、かなり硬いんだよね。

 だからこそのあの作戦だったんだけど……それよりも硬いって……あの靴、一万ギルだったよね?

 って、今見たら靴の相場価格が上がってる……。サイクロプスを倒したって実績がついたからとか?


 もしガルトの街にまた行くことがあったらお礼しなきゃ。



「それにしても……今のが自然魔法の影響か」


「そう。魔界との『特異点(ゲート)』を繋げるから向こうでは同調魔法って言われてるんだって」


「魔族はそれでこっちには来れないのか?」


「ああ。通れるのは魔物だけさ。それにすぐに魔物が通ってしまって消えてしまうんだ」


「なるほどな。宰相のやつも知ってんのかな」


「聞いてみるしかないけど、どうなの?」


「魔界じゃ、魔族が通れるかどうか知っていたのは一部……魔王様の周囲のやつだけだったな」


「そうか。聞いてみりゃその魔王様ってのに会ったことがあるかもわかりそうだな」


「とにかく帰ろう。『加速(ヘイスト)』使って飛ばすよ」


「ああ。頼む」


 それから五日かかった道を三日で駆け抜けて帝都に帰り着いた。

お読みいただきありがとうございます。


次回、宰相の真意。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ