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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第三章 真実への旅
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第八十八話 役目

「うわっ! やっぱり『転移(テレポ)』で仲間を連れて来たんだ」


 陛下の元に駆けつけると、立っているのは陛下と宰相さんだけで、その周りには沢山の人が重なるように倒れてて、生きてるかどうかもわかんない。


「それにしてもよく気付いたなフィルナ」


「ずっと嫌な予感はしてたんだよ。でもその発想に至らなかったというか、まぁ、そんな感じ」


 ウルが倒れてる人を踏んじゃいそうだから降りて駆け寄る。

 陛下を襲った相手とはいえさすがに生きてたら……ね。

 ウルには陛下の愛馬の“愛“と待機させる。


「フィルナ! ロザリィ! おせーよ。もう終わったぜ?」


 私達に気付いた陛下が愚痴る。よかったまだ元気──!


「陛下!」


 そのまま後ろに倒れそうになった陛下を抱き止める。


「はは……お前ら見たら安心して気が緩んじまったらしい」


「もうっ……怪我はない?」


「ああ、ちょっと疲れただけだ。これのおかげだ。お前これ……とんでもなかったぞ」


 そう言いながらネックレスに通した指輪を見せてくる。


「とにかく陛下を守ることだけ考えて付与したからね」


「これがなきゃ、怪我どころか死んでたな。本当に助かった」


「そっか。それならよかった。とりあえず『ヒールⅢ』かけとくね……って、あれ?」


 『ヒールⅢ』が指輪の『守護(プロテクション)』に弾かれちゃった。


「おいおい……これ魔法も無効化するのかよ……魔法使うやつがいなかったからわからなかったぜ」


 そう言いながらネックレスを外す。

 それを受け取ってから改めて『ヒールⅢ』をかける。


「うーん、これは私も予想外」


 『守護(プロテクション)』は物理的な防御支援魔法のはずなんだけど、陛下を守ることだけ考えてたから『自在魔法』が発動しちゃったのかな?

 それでも回復まで弾くのはビックリした。細かいことまでイメージしてなかったからだろうね。

 逆に言えばそこまでイメージできればもっと便利な付与ができるかも。


「ふうっ。助かった。それで、宰相は俺の味方ってことでいいんだよな?」


 回復して落ち着いたところで、それまで話にも加わらずに見てるだけの宰相さんに話を振った。

 ……私の腕の中で。回復したなら起き上がってくれていいんだよ?


「そうなりますね。私は“皇帝陛下の“味方ですよ」


「俺が負けてたらあいつの味方になってたってことか?」


 突き刺さった大剣の側に倒れてる上半身裸の筋肉すっごい人を顎で指す陛下。それを見て私も視線を移す。


「ええ。それが私の役目ですから」


 この宰相さんもなんか……価値観が違うというか……。

 私……っていうより……常識そのもの? 上手く言えないけど根本的な何かが違う。

 こんな雰囲気の人だっけ?


「あの人がキース……先代様の息子?」


 ただまずは宰相さんよりそこからだね。


「どこで聞いたんだ?」


「『ダンジョン』にいた第二部隊の隊長さん。あの部隊はほとんどキース派閥だったみたいだよ」


「知ってるよ。だからその役目を与えたんだからな」


 あら。衝撃ニュース、ってわけじゃなかったんだ。


「国の守りは任せられないんだな」


 確かに。ロザリィもこっちの国のことかなり理解してきたね。

 ていうか、下手すると私より理解してるかも。


「ああ。それに討伐隊は実力者しか選ばれないから不名誉ということもない」


「厄介者に就かせる最適な役目、ということですよ」


「なるほどー。変なこと聞くけど……宰相さんっていつから宰相さんなの?」


 キース派閥のことは大して問題じゃなさそうだから宰相さんのことを聞いてみた。

 なんか……気になるの。


「先代の師匠の時もだって言っただろ?」


「その前は?」


「え?」


「フフフ……面白いですね、フィルナ様は」


「おい、宰相?」


「フィルナ、さすがにその前なんてないだろ。人間の寿命じゃ何代も就く方が珍しそうだ」


「人間なら、ね。魔族だったら……?」


「「「!?」」」


 私の突拍子もない言葉に全員が驚いてる。

 だけど、宰相さんだけは驚きの意味合いが違ったみたい。


「まさか気付く人間がいるとは思いませんでしたよ」


「おいおいマジかよ……」


「ここの『ダンジョン』と一緒に転移してきた人……かな?」


「ええ、そうです。この面子なら見せても良いでしょう」


 そう言うと、宰相の肌と髪の色がロザリィと同じ色に変わって──ううん、()()()()()


「どうやってるの?」


「『隠蔽』というスキルです。貴女の『鑑定眼』でもわからなかったでしょう? これを習得するのは大変でしたが、覚えてからは人間の中に紛れ込むことができるようになりました」


 魔族も自分の階位(ジョブ)以外のスキルを覚えられるんだね。本人の言う通り物凄く大変だっただろうけど。

 それに『鑑定眼』のことは話したことあったっけ……?

 どちらにせよ私には見破れなかったよ。


「色々聞きたいけど、今はこれだけ。どうして宰相さんになろうって思ったの?」


「俺も聞きたい。何がしたいんだ?」


「私はこちらに来て初めて“他人“というものを知りました。そして私の姿がかなり異質だということも」


「だな。アタイもそうだ。他にこんな色のやついないんだもんな」


「ええ。貴方はフィルナ様という理解のある方に出会えたようですが、私は違いました」


「拒絶されたのか?」


「そうですね。ですが、何も知らない私に芽生えたのは興味でしたよ」


「興味?」


「魔物とは違う、人間という私に似た姿をした生き物。それがなぜ私を襲い、他人と争い、何を成そうとしているのか」


「なるほど。アタイと似てるな」


「【次元魔導師】ってこんな人ばっかりなの?」


「アタイは知らないよ」


「それもそうか。って、話の腰折ってごめん。続きどうぞ?」


「今でこそ他国の存在を知っていますが、当時の私は色々な人間を見れるこの国しか知りませんでした。だから、この国の中心に入ることだけを考えて生きた結果、こうなったのです」


「そうか……。よく亡霊(ゴースト)に憑かれなかったな」


 ほんとだよ。長くここにいたのなら……憑かれててもおかしくなかった。


「ああ、教会が信奉する女神……ですね。これは私の予想ですが……私や、もしかしたらロザリィ様も……その方には“視えて“いないのではないかと思っています」


「どういうことだ?」


「この国だけとはいえ長くいると、不自然なことが幾度となくありましたが、私だけは狙われることがなかったのです」


「狙われるはずの理由があっても……?」


「ええ」


「わかった。もっと聞きたいが長くなりそうだな。一度帝都に戻ろう。そこで詳しく聞かせてくれ」


「わかりました。ロザリィ様が来た時点で明かしてもよかったのですが、人間として生きることに慣れすぎていました」


 そもそも人間にしか見えなかったよ。今、この場に居なかったら私も気付かなかったと思う。


「それで、陛下が倒した人達はどうするの?」


「生きてるやつは捕縛しよう。最初の方以外はほとんど手加減する余裕もなくてな……何人生きてるかわからんが……」


「とりあえず、暴れられても面倒だし、『ヒールⅠ』で」


 範囲化して全体に。これで生きてる人がわかるはず。


「どの道陛下に剣を向けた時点で死罪では?」


「他に協力者がいないとも限らないからな。本当にキースに協力していただけならそれで済むんだが」


「他に黒幕がいるってこと?」


「あいつはバカだが人を惹きつける力はある。それを利用しようとしたやつがいたとしてもおかしくはないな。まぁ、念の為だ」


「もしかして陛下が積極的に戦争してるっていうのは……」


「その辺も後で話そう。問題はこいつらをどうやって運ぶかだが……」


 ここから数日かかるもんね。うーん……。


「あ、そうだ。地面ごと『浮遊(レビテト)』で浮かせてウルに引かせるよ」


「そんなことできるのか……?」


「任せて」


 まずは街道から離れたところに全員を一ヶ所に集めて、と。

 何人かは目を覚ましてたけど、範囲化した『ヒールⅠ』じゃ動けるほどじゃなさそう。傷も全快してる人はいなかったよ。


 『浮遊(レビテト)』で地面ごと浮かせて、その空いた穴には死んじゃった人達を埋めてあげる。


「フィルナは優しいな」


 陛下は私が兵士さん達を移動させるのに離れてる間もその場に座り込んでて、戻ってきてからは私に肩を借りて立ってる。


「死んじゃったら良い人も悪い人もないから」



「すまない……ありがとう」


 その声は浮いた地面の上からだった。

 意識を取り戻した人達が私に向けて頭を下げてる。


「陛下」


「ああ任せろ。悪いようにはしない。ちゃんと話した奴には恩赦を与える。協力してくれ」


 私が声を掛けると、陛下はすぐに汲み取ってくれた。


 上にいる人達は隣でそう言う陛下にも頭を下げてた。


「これなら私でも運べそうですね。任せてもらえますか?」


 いつの間にかさっきまでの姿に戻ってた宰相さんが提案してきた。


「そういえば宰相さんはどうやってここへ?」


 いくらなんでもタイミングが良すぎるし、そんな何日も前から帝都を離れてるはずがない……よね?


「これも『隠蔽』と同じように習得したスキルですがね、このように一つと認識できる対象でなければ運べなかったのですよ」


「『転移(テレポ)』みたいなスキルがあるの?」


「『ポータル』というスキルです。拠点に定めた位置から行ったことのある場所へ転移できます。『転移テレポ』と違い、転移したら拠点へ戻ることしかできませんが」


「なるほどな。間に合わなかったと言ってたのはどこでやり合ってるかわからなかったから、か?」


「ええ。ですから馬と転移したんですが……。ああ、彼らを運ぶと馬が連れて行けませんので、帰りは連れてきてもらえると助かります。私の愛馬ですから」


「わかった。ちゃんと連れ帰る」


「では、先に帝宮でお待ちしております」


 そう言って宰相さんと生き残った兵士さん達は浮いた地面ごと消えていった。

お読みいただきありがとうございます。


前回三人称視点を入れたらPVガタ落ち、ブクマも剥がれ……もうしません……だから戻ってきてください!


今回は今回で切りどころが悪くて長くなってしまいました。

これでももっと長かった分を一部次回に回してます……


次回、ゲート。

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