幕間2 別れの後で
第七十一話の直後の話になります。
遥か昔、圧倒的な魔力を持つ魔族という種族と、それを束ねる魔王がいた。
世界には瘴気が満ち、瘴気からは魔物が生まれ、更に魔族の使う魔法の力を絶大なものにしていた。
それに対してただ技術力に秀でただけの人族は、魔族をはるかに上回る人口による抵抗で辛うじて均衡を保っていたが、一度魔族に攻められればその人口は一気に減少し、増えては減り、と幾度となく繰り返される魔族の侵攻に人々は疲弊してしまっていた。
そんな中、人族にあらゆる魔法を使いこなす少女が現れた。
人族は彼女に希望を見て【魔女】と崇め、魔族への反抗を強めていった。
しかし彼女は、あろうことか魔王と手を組み果てには女神の大事な土地を奪ってしまった。
これに怒った女神は人族の中に【勇者】と【聖女】という職業を与え、【勇者】は魔族諸共に魔王を討ち滅ぼし、【聖女】は瘴気を払うことに成功した。
魔族も魔物もいない世界になったのも束の間、魔王と手を組んでいた【魔女】は死に際に魔物をどこからともなく呼び出す魔法をかけ、その土地ごと世界から消えてしまった。
残った人々は【勇者】と【聖女】の力を借り、魔物に抵抗する力をつけていった。
「これが俺たちの国……ジパンに伝わる【勇者】と【聖女】の物語の始まりで、魔族が出てくるのはここだけだな」
「これは物語といっても実際にあったことだと言われているわ」
「だからって、フィルナの話を聞かない理由にはならないでしょう?」
「全くだ」
「ああ……あのロザリィってやつを見た瞬間から……わけがわからなくなっちまった……すまねぇ」
「私も……ごめんなさい……」
「それはちゃんとあの二人に言ってよね。……といってもまた会ったら同じことの繰り返しなんでしょうけど」
「フィルナは感情が植え付けられていると言っていたな」
「あいつ……何を知ったんだ……?」
「あんた達が聞く耳を持っていたら教えてくれてたのよ?」
「弁明のしようもないわ……」
「だが、フィルナの言うことが本当なら……俺たちは魔物から逃げ延びた……あの時のフィルナと同じ状況の者を……殺したことになる」
「──っ! それは……いや、何を言っても言い訳になるな……」
「あの時は向こうから襲ってきたけど……魔族が人の姿を知らなかったとしたら……」
「私達が魔物だと思われた……?」
「その可能性はある。フィルナが何かを掴んだというなら俺達もそれを探すしかないな」
「そうだな……ルミネ、リュー。止めてくれてありがとうな」
「もう二度と御免よ。しっかりしてよね」
「次はない……って言い切れないのが悔しいわ。正直言ってあの感情に何もできなかった……」
「そのときはまた力ずくで止めてやる」
「こんなこと頼みたかねーけど……頼んだぜ」
「はぁ……とにかく……アカツキはさっさと退位してきなさい。じゃないとまともに動けないわ」
「そうね。まずはバルゥームに戻りましょう。『ダンジョン』発生の事後処理を済ませないと退位も何もないもの」
「よくこんな状況でフィルナを迎えに行くと言い出せたものだ」
「面目ねぇ……」
「そういえば……あそこの報告……訂正しておいた方がいいんじゃない?」
「……そうね。ならクレナイはアカツキとバルゥームをお願い。私とリューでそっちに向かうわ」
「それしかないか。アカツキ、フィルナと接触するのは禁止だ」
「わかった。頼む」
「もう抜け駆けはやめてよね。今回だって楽しみにしてたんだから」
「台無しだったね……ごめんなさい」
「全ては真実を見極めてからだ。二人は自分のことを見つめ直せ」
◇◇◇◇◇
せっかく"視せ"てやったのにまた逃した!?
「なぜ殺さない! そもそもなぜあいつを助けるの!? あれから狂い始めてしまったわ!」
ようやく世界からあいつの居場所を奪えたはずだったのに……。
「やはり職業を得る前に殺してしまうのが最善だったのよ」
これまではそうできていたのに……。
「加護だなんて……ふざけないでほしいわ……! そんなものまで残していたなんて!」
あれは私の加護ではない……!
「……そうだ、アレを解放しよう……」
いずれあいつはあそこに向かうだろう……。
「ふふっ……今度こそ……」
それに次こそは【勇者】の助けなど得られないようにしないと。
「そうね……アレの相手でもしてもらおうかしら」
なにやらアレに何か仕込んでいそうだったしね。
「私に辿り着く可能性のある者は……必ず摘み取らなくてはならないわ……」
全てを識るのは私だけでいいの。
「エデンは消し去った。魔王はもういない。あとは……あいつだけよ……!」
ただ……少し気になるわね……。
「あいつは……一人なのよね……?」
私に識らないことがあるなんて許されない……!
「ああもうっ! "目"を増やす力さえ残っていればこんなことには……!」
そもそも"目"がちゃんと働いてくれていれば……なんて言っても仕方ないわね。あいつだけを監視させるわけにはいかないもの……。
あの力さえ取り戻せば……その為には動いてもらわないと……ああもどかしい。
お読みいただきありがとうございます。
しばらく出番のないアカツキ達のフォローを入れておこうと思ったのですが、あまりフォローになっていない気がします。
後半の人物は一応名前は伏せておきます。
次回から第三章 真実への旅 が始まります。




