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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
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第七十話 故郷の今

 王都アレフを出発して三日目、私達はもうオルフェに入ってるよ。

 今はどこにも寄るつもりはない。逸る気持ちを自分で抑えるのが難しくて、それをしてくれてるのがロザリィ。



「何も聞かないの?」


 その日の野営中。たわいのない会話をした後、私から切り出した。


「言わないことまでは聞かないさ」


「そっか。ありがと」


 本当にありがとう。

 これは……たぶん話しても仕方がないこと。むしろロザリィを困らせちゃうかもしれない。

 でも……もし()()なった時どうするか……決まった気がするよ。


「その代わり、気になってることは聞いてもいいか?」


「ん? なに?」


「あの時は中断してしまったからな」


「あの時?」


「ほら、魔物がいなかったら【テイマー】は何を使役するのかって話さ」


 そんな話あったね。魔物が魔界からやってくるなら魔界がなかった頃はどうだったんだろう、って私も気になったんだよね。あの時は。


「ああすっかり忘れてたよ。ええと……そう。奴隷の首輪に付与されてるのが『テイム』だったから人に使ってたんじゃないかなって思ったんだ」


「アンタもなかなかエグいこと思いつくね」


「えー! じゃあロザリィはどう考えてるの?」


「アタイは……昔はこっちにも魔物はいたんじゃないのか?」


「生まれてたってこと?」


「そもそもこっちでも魔物が出てくるところ見てないしな。今も生まれてるって可能性はあるだろ?」


「んー、まぁ、確かに?」


「フィルナに聞いたモンパレは間違いなく魔界の魔物って言えたけど、そこらの魔物が全部魔界の魔物とは言いきれないからな。魔物が喋らない限り誰にもわからないことだけど」


「そうだね。私も魔界には瘴気があるって聞いてそれが原因かなって勝手に思ってたけど、確認しようがないもんね」


「こっちに来て最初に思ったのは、あのどこにでもいるスライム……フィルナはアレが魔界で他の魔物押しのけて『特異点(ゲート)』を通れると思うか?」


「あっ……それは無理かな……。スライムだけが通れる『特異点(ゲート)』があるかも、とは思うけど……」


「そんな小さな『特異点(ゲート)』が沢山あるなら魔界ももう少し明るいさ」


 『特異点(ゲート)』が放つ光が魔界の数少ない明かりなんだよね。それもすぐに魔物が通っちゃって消えてしまうらしいけど。


「うーん……でも、こっちにも魔物がいたんじゃないかとは思えてきたよ。その辺の昔のこともこれからの旅で調べられたらいいね」


「そうだな。楽しみになってきた」


「ふふっ。私はなんか久しぶりにロザリィとちゃんと話した気がして今が楽しいよ」


「まぁな。何言っても上の空で返事されてたら楽しくないもんな」


「あわわ、ごめんってばー!」


「アタイは故郷には関係ないし?」


「もー! ロザリィのいじわる!」


「アハハ、冗談だよ」


「ロザリィ、もっかい言うよ? ありがとう」


「どういたしまして。アタイだってフィルナに感謝してるんだ。何に悩んでるか知らないけど、いつも通りのアンタが見れる方がいい」


「わかった。悩んでるのは結局私がどうするか、ってだけだから」


「いいさ、それがフィルナの決めたことならアタイも受け入れる」


 やっぱり、わかってるのかな。


「いや、わかんないぞ」


「! 私の心読んだ?!」


「そんな顔してるぞ。フィルナのことならそれくらいわかる」


「見えないのに?」


「見えなくても、だ」


「ふふっ、なにそれ」


「ま、なんでもいいさ。フィルナは先に休むだろ?」


「うん。お願い」


 いつものように夜番は完全に交代で。ロザリィに任せて眠る。


 夢を見た。久しぶりに見るあの頃の夢。

 この辺を通ったときは、私……ずっと泣いてたっけ。

 クレ姉さんとルミ姉さんがずっと付いてくれて……アカツキが引っ張ってくれて……リューさんは黙って私を守ってくれて……。

 みんなの優しさのおかげで今の私がいる。それを再確認させてくれる、あったかい夢だった。




 それから二日後、ついに私は帰ってきた。

 あれから11年。地図からも消えてしまった村はボロボロになってるかと思ったけど、何故か立派な柵に囲まれてた。


「嘘……なんで……」


「なんだこれ。入り口がないじゃないか」


「人がいないから……?」


「飛び越えるか」


 ウルを影に入れて柵を飛び越えて村に入る。


「流石に建物はボロボロか……そうだ!」


 私の家があった場所は!?

 そこを目指して走り出す。


「ここも崩れてるな」


「そう……だね……」


 私が住んでた家は潰れてしまってた。

 私がアカツキに助けられた時点でもう壁に穴が開いてたしね。でも、改めて目にすると……。

 涙が溢れてくる……。




「おい、フィルナ。あっちだけなんか綺麗な場所があるぞ」


 壊れた自分の家の前でぼうっとしてたらロザリィが周囲を見てきてくれたみたい。

 気を遣ってくれたんだね。


「あれは……石碑?」


「なんだい? 石碑って」


「建てるのにはいろんな理由があるけど、この場合はお墓……かな」


 近付いてみると、石碑の裏側は普通のお墓みたいになってた。

 村の人みんなが埋葬されてるんだろう。


「『ムーア村 合同墓地』か。ムーア村ってのがここの名前か?」


「うん。ってことはこの向こうに……いるんだね。ただいま、お父さん、お母さん」


 そう言って被り物を取って石碑の前に置く。


「私は元気でやってるよ。こっちは友達のロザリィ。ロザリィといると楽しいんだ。これからも……ちゃんと……生きていくから……心配しないでね」


「アタイがフィルナを守るよ。だから……安心してくれ」


 私の体を支えてくれて、宣言した。

 死者を弔うなんてこと、知らないはずなのに、私の気持ち、理解してくれた。


「ありがとうロザリィ。そして遅くなっちゃったけど、お父さん、お母さんもありがとう。二人から貰った愛はここにちゃんとあるよ。色んな人が愛をくれるけど、一番最初にくれた二人のことは絶対忘れないからね」


 左胸の"愛"のジパン文字に触れながら、伝えたかった言葉を石碑に向かって全部ぶつけた。




「こんなちゃんとしたお墓を作ってくれて……ありがとうアカツキ……みんな」


 石碑を向いたまま、感謝を伝える。


「気付いてたのか」



 私達の背後にはアカツキ達『夕暮れの空』が揃ってた。


 夢で見た優しいみんなを思い出して、自分に言い聞かせるように「大丈夫」って呟いてから後ろを振り向いた。

お読みいただきありがとうございます。


次回、第二章最終話、決別。

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