第六十九話 故郷の国へ
解散して部屋に戻ってしばらくしたらメイドさんが呼びに来た。
「お食事の用意が整いました。ご案内いたします」
食堂……って言葉しか知らないからそうとしか呼べないんだけど、私の知ってる食堂とは全く違う部屋に案内されたよ。
豪華な装飾の部屋に豪華なテーブル、その上にテーブルクロス、燭台、そしていろんな料理。
そんなテーブルの端にこっちを向いて国王様と王妃様。
そこからサリィの兄妹が男女別れて順に座ってて、私とロザリィはそのサリィの隣から。
なんていうか、金髪縦ロールが三人並んでるのは視覚的に凄い違和感だよ。今までほとんど見なかった髪型だしね。
「フィルナ、先程会わなかった兄と姉を紹介しますわ。第一王子のレオナルド兄様と、第一王女のミリアリア姉様です」
「初めまして、フィルナです。よろしくお願いします」
「ロザリィと申します。お見知り置きを……ってどうした、フィルナ、サリィ」
「ロザリィが丁寧に喋ってますわ……」
「気持ち悪い……」
「おいおい、失礼だな。アタイだってちゃんとした挨拶くらいするさ」
「くっくっ……ああ、いや失礼。こんなサリィは初めて見るよ。レオナルドだ、よろしく。私のことはレオと呼んでくれ」
「そうですわね兄様。ミリアリアですわ。ミリィと呼んでくださいまし」
挨拶を中断させてしまったけど、むしろ喜んでもらっちゃったよ。
「さぁ、挨拶はそこまでだ。食事を楽しもう。家族が揃うのも久しぶりなのだから」
国王様がパンと手を叩いて話を止める。
「サリィも戻ってきて、リディも部屋を出てきてくれたわ。それに、新しい友人も。感謝しますわ、フィルナ、ロザリィ。お二人に乾杯を」
「ええ、乾杯」
王妃様にサリィが続く。それに他の人達と私達も合わせる。
「「乾杯」」
それを合図に目の前の料理を食べ始める。
ナイフとフォークを使って食べるっていうのは慣れないけど、これもサリィに教わったよ。
さすがにその時はロザリィも一緒に聞いてた。ロザリィはそもそも食事を知らなかったからね。
そして、料理が半分より少なくなってきた時、国王様が話しかけてきた。
「そうだ、フィルナ。リディの参考にレベルの低かった頃どうしていたのか聞かせてくれないか?」
「そうですね。私は加護のおかげでレベル100と同じくらいには動けていたので、ひたすら薬草採取とスライム退治をしていましたね」
「やっぱり地道に頑張るのが近道なんだ」
「そうだよ。それと治癒術師で薬屋の師匠に薬についてずっと教わっていました。そして、レベル10を超えたときからスキルを覚えるようになりました」
「レベル10……」
「あの方法ならすぐだよ。『薬の知識』や『調合』、『魔法付与』を覚えてからはポーション作りを。そして、一気に成長したのはモンスターパレードがきっかけでした」
「タイクーンのアレか……」
国王様は知ってるんだね。
「私のポーションが支援に該当したらしく、みんなが魔物を倒すたびにレベルが上がっていきました。そしてレベルが100を超えた時にステータスが解放され、それで初めて【すっぴん】の可能性を実感しました」
「サリィからフェンリルを使役していると聞いた。今の君のレベルは一体……いくつなんだ?」
レオ様にも話はしてあるみたいだね。
なら、見せた方が早いかな。
「『ステータスオープン』、どうぞご覧ください」
「! これは……すごいな……」
「【すっぴん】はここまで凄くなれる……私も頑張ります!」
まぁ、見た目のステータスは三桁でスキルの半分くらいは加護のおかげなんだけど。
「とにかく集中して事にあたっているとスキルを習得しやすいようです。最近は特にそれが顕著ですね」
「わかった!」
リディが両拳を握りしめる。
「よければしばらく滞在していってくれ」
「そうですね……ありがたいんですが、私は故郷に向かっている途中なので……」
「故郷?」
「はい。隣のオルフェにかつてあった村が……」
「もしや……あの……」
「おそらく想像されてる通りだと思います」
「そうか。まぁ、何ヶ月もいてくれという話ではない。数日だけでもリディに付いてやってくれないか?」
「ええ、それなら大丈夫です」
「ありがとう!」
「私も一緒ですわよ」
「もちろん私達もだ。弟に希望が見えたのは本当に嬉しい」
「そうですわよ。心配していたのはサリィだけじゃないんですからね」
「兄様、姉様達、ありがとうございます!」
ふふ、私を頼りにされたけど、もうあまり必要ないかもね。
この国は後継者争いとかはないのかな? 兄妹仲良さそうだもん。
「ああそれと、例の報酬の件だが、二人に白金貨を贈ろうと思う。あとはサリィの言っていた他国へ親書を持ち込むという話。これも二人が旅立つ日までに用意しよう。ロザリィの入国料もそれで免除されるだろう」
そう言って最後はニヤリと笑って見せた国王様。ここに入る時に無理矢理渡した話も伝わってるんだね。
「「ありがとうございます」」
おお、珍しくロザリィと声が揃った。
それから一週間、街にも行かずにお城で過ごしたよ。
リディに教えるだけじゃなく、私もサリィと模擬戦をしたり、ロザリィがロランさんと模擬戦してやりすぎたり……色々あった。
特に騎士団の前で私とロザリィで模擬戦したのは楽しかった。本気でやり合うのは初めて会った日以来だったしね。
まぁ、それは「全く参考にならない」って一蹴されちゃったんだけど。
でも、意味はあったよ。その後に私が【すっぴん】だっていうことを国王様が明かしたからね。
【すっぴん】の私が団長を圧倒したロザリィと互角に戦うのを見させたのは、騎士団員にも【すっぴん】の可能性を示すことでリディに協力することへの不満を払うのが狙いだったみたい。
ハズレ職業っていうのが常識みたいなものだから騎士団の人達の反応を見る限りやってよかったと思うよ。
あと、街には行ってないけど、『転移』で霊峰バハムートには行ってきた。直接は危ないから『転移』は麓にだけど。
目的はもちろん、リディのレベルアップの為の魔物の捕獲。私がいる間にレベル100まで上げようと思って。
ここはほとんどがBランクの魔物だしね。数体で一気に100になったよ。
そこからはみんなで少しずつ上げて行くよね。
なんにせよ、リディも普通に生活できるようになった。それが大事。
リディがどういう成長をするかはこれからの努力次第だよ。頑張ってね。
そして、別れの日がやってきた。
「それじゃ、またいつかね。必ず来るよ」
「絶対ですわよ! またお会いできる日を楽しみにいていますわ」
「フィルナさん! 本当にありがとうございました!」
「動けるようになってよかったね。今度会う時には私を驚かせてもらうよ」
「頑張ります!」
「フィルナ、ロザリィ。本当にありがとう。国王として、父親としても感謝している。何か困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
「あ、じゃあ、先に保険をかけておいていいですか?」
「保険?」
「万が一のことがあった場合、この国へ『転移』する許可をいただけますか?」
あの夢を見た時からずっと消えない不安がある。
できれば当たらないでほしい嫌な予感。
「わかった。ただし、転移先はこの城のみだ。それならば許可しよう」
「ありがとうございます」
ロザリィは何も言わないね。薄々何か感じてるのかな。
「大丈夫。私達は二人の味方よ。気を付けてね」
「そうですわ。またお茶会しますからね」
「はい! 王妃様もミリィ様もお元気で」
実はこの王妃様、めちゃくちゃ気さくな人でミリィ様も一緒に何度か女だけでお茶会したんだよね。
なんでもミリィ様は既に結婚が決まってるんだけど、リディの件があって保留にしてるんだとか。これで話を進められそうって嬉しそうにしてたよ。
「アタイも初めて来た王都というのがここでよかったよ。また会おう」
ロザリィは丁寧だったのは挨拶だけで、その後はいつものロザリィだった。あっさり受け入れられてたのはさすがだよね。ロランさんを圧倒したのがかなり効いてたみたい。
レオ様は残念ながら公務があるとかでここでは会えなかったけど、レオ様が街を出る前に挨拶してくれたよ。
「じゃあ、行こうかロザリィ」
「ああ。西に向かうんだな」
お城を離れて街で食料を買い足した後、西門から王都を出た。
「国境までお願いね、ウル」
《任せろ》
ロザリィと二人乗りでも全然平気そうなウルに全速力で国境へ向かってもらおうと思ったけど……さすがに早すぎて色々と危なかったからスピードを落として、途中で一泊野営をすることにした。
お読みいただきありがとうございます。
次回、故郷の今。
第二章あと二話の予定です。




