第六十七話 謁見
「あれがアレフの王都かぁ」
「今まで見た中で一番でかい街だな」
「あはは、バハムル村までずっと街を避けてたからね」
遠くから見え始めた王都の全景……とはいかないけど、見える範囲だけでここもタイクーンの王都と変わらない広さがあるのがわかるよ。
「まずは門衛に早馬を出してもらいましょう。それから歩いて城に向かいますわ」
「王女様が歩いて……って大丈夫なの?」
「大通りを歩いていればそのうち迎えが来るでしょうから」
「なるほどな。やはり見えるというのは便利だ」
そういえばロザリィは魔王様の王都を歩き回ったんだっけ。それで偶然魔王様のところに辿り着いたんだよね。
「じゃあ、そろそろウルは隠れてもらおうかな」
「いえ、そのまま向かいましょう。フィルナの実力の証明になりますから。護衛を置いてきた説明もしないといけませんし」
「あ、そうか。ならここからはゆっくり行かないと警戒されちゃうかな」
「そうですわね。近付いたら私が先行して事情を伝えてきますわ」
その言葉通り、門衛さんは最初だけ警戒したみたいだけど、近付いて来たのがサリィと分かるとすぐに膝を突いて平伏したよ。さすが王女様。
「ウル、お疲れ様。ここからは影に入ってて」
《また肉を期待している》
かなり気に入ってくれたみたいだね。でも、おかげでお肉の残りが結構減ってきたよ。
モンパレの後あれだけもらったお肉が……全然なくなる気がしなかったのに食べる人が増えると一気だね。
ウルを影に戻してライセンスを提示。
ウルの迫力だけでもサリィの言う通り信用してもらえたみたいだけど、Aランクのライセンスでそれがより強固になった感じだよ。
そして割と強引にロザリィの通行料を渡した。
だって、なかなか受け取ってくれないんだもん。サリィの客人として来てはいるけど、そういうのはちゃんとしないと。
それで王都に入って大通りを少し歩いたところでもう迎えの馬車がきたよ。
「早っ、もうちょっと歩くもんだと思ってたよ」
「さ、ここからはこの馬車で向かいますわよ」
私が驚いてるのにサリィは当然のように馬車に乗り込んだ。
王家の乗る馬車って凄いね。
前に馬車に乗った時の記憶のせいで緊張しちゃったけど、全然揺れを感じなかったよ。
落ち着いた頃には残念ながら街並みはほとんど通り過ぎて、窓から見えたのは立派なお城だった。
「サーリア王女、お帰りなさいませ」
メイドさんだ! 初めて見たよ!
私の方をチラッと見たけど、気にしてる様子はないね。ロザリィなんて全然気にもされてない。
この被り物……恐るべし。
「ええ、ただいま帰りました。こちらの二人は私個人の客人で大切な友人です。丁寧な対応をお願いしますね。それと二人の部屋の用意を」
「かしこまりました。お部屋は別々に致しますか?」
「一緒で構わない」
ロザリィ?
「そのようにしてあげて。私も謁見の準備をしますから、その間に二人にもお風呂を案内しておいてくださいね」
「はい。お任せください」
おお! 数ヶ月ぶりのお風呂!
サリィありがとう!
城に入ると更にメイドさんが待ってて、サリィは囲まれて行っちゃった。
私とロザリィも最初のメイドさんに部屋に案内してもらって、荷物を置いたらそのままお風呂に連れて行かれた。
「どうするんだ? 王様相手にもそれ被ったままいくのか?」
「さすがにマズイかなぁ……でも、変に気に入られるより被って嫌われる方がいいかな。王子の嫁に、なんて言われたくないし」
「くくっ、フィルナ、それはない。あったとしたらとんだダメ王子だろう」
「ひどくない?」
「フィルナが美しいのは間違いないが、それで選ぶようじゃな」
「そうだけど、言い方!」
「悪い悪い。だけど、フィルナって意外と自信家だよな」
「えっ? うーん、そうかも」
それもだいたい【すっぴん】のおかげなんだよね。なんだか不思議。
スキルを覚えて、ステータスが解放されるたびに自分に自信が持てるようになっていった。
今じゃ……確かに自信家って言われてもおかしくないくらいかも。
「フィルナ様、ロザリィ様。国王陛下とサーリア王女の準備が整いました。謁見の間へご案内いたします」
お風呂を出てしばらくの間、案内された部屋で寛いでいたらさっきのメイドさんが呼びにきたよ。
謁見の間に入ると、数段上がった先の玉座にはサリィと同じ金髪の国王様が座って、右隣にサリィが立ってる。
逆側に少し離れて一段下がった所には茶髪のおじさん。
誰だろう? サリィからは内密な話になるから他には立ち会わないって聞いてたんだけど。
気にしても仕方ないからその段差の手前まで歩いて止まって、サリィに教わった通りに片膝を突いて頭を下げる。
「初めまして。冒険者のフィルナと申します。この顔は……ご容赦頂けると幸いです。こちらは共に旅をしている友人のロザリィです」
これまた教わった通りに挨拶。
「よくぞ参った。俺がこの国の王、ゼオル・フォン・アレフだ。顔の事はサリィから聞いている。興味はあるが、気にするな」
「俺」かぁ。ちょっと意外。王様って、「私」とか「わし」って言うイメージだったよ。あ、アカツキは例外ね。
被り物もあっさり許してくれた。サリィのおかげだね。ありがとう。
「まずはここまでの護衛の感謝を。それと報酬に関してですわ」
「ギルド経由と聞いたからな、ギルドマスターに来てもらっている」
「初めまして。王都アレフのギルドマスター、ハインです。この場で完了処理をしますね」
サリィの逆側のおじさんはギルドマスターだったんだね。丁寧に頭を下げられたよ。
「ああ、もう楽にしてよいぞ。気を張る必要はない」
「は、はい」
言われてから立ち上がる。
「ではライセンスを預かります。隣室に道具の用意がありますので一旦失礼します」
私のライセンスを受け取ったギルドマスターはそう言って隣の部屋に入っていった。
「さて、報酬の話はサリィからしてあるかな?」
「いえ、詳しくは着いてからとしか……」
「お父様、この後の話も含めて、白金貨が相応しいと思うのです」
「なんだと?」
「ロザリィの情報もですが、リディのこともフィルナならなんとかできるかもしれません」
リディっていうのは【すっぴん】だってわかった弟の第二王子だね。リーデンス・フォン・アレフが正式な名前だよ。
サリィは王様のちょっと強めな返しにもしっかり答えてる。
「ほう。それが本当なら白金貨を出す価値はあるな。その根拠は?」
「私の職業は【すっぴん】なのです」
リーデンス王子の件は全く話していないみたいだから、私から職業を明かしたよ。
「それにフィルナは既にバルゥームでも白金貨を与えられております。十分に信頼できる証かと」
「なるほど……」
王様が私とサリィの言葉を受け取って、顎に手を当て考え込む様子を見せたとき、ギルドマスターが戻ってきたけど、なんだか様子がおかしい。
「バルゥームの白金貨ですって!?」
そこ!? 確かに白金貨を貰うこと自体凄いことなんだけど……貰ったのがアカツキからだしなぁ。
「そこまで驚くことか?」
王様も同じ疑問を持ったみたい。
「ご存知の通り、バルゥームは冒険者の国です。かの国で冒険者に白金貨が与えられるというのは単なる『偉業』よりもはるかに価値があります」
またとんでもないものを簡単にくれたなぁ。アレは内容が内容だけに納得して貰ったんだけど、そこまで言われるとちょっと焦る。
「なるほどな。【すっぴん】がその栄誉を得た、か。ならば期待はできそうだ。それにもう一つあると言ったな?」
「ええ。お父様とギルドマスター様は『ダンジョン』が生まれることについてはご存知ですか?」
「はい。ギルドでもギルドマスターのみが知る極秘情報ですが」
王様の様子を伺ってからギルドマスターが先に答える。
「……そうか、お前もそれを知ったのだな」
王様は少し間を置いてから切り出す。
「はい」
「バルゥームの『竪穴ダンジョン』だな? つまりそのフィルナ嬢の白金貨はその発見に対して、ということか」
凄い。色々と。
何より私とロザリィはあそこから寄り道なしでここに来た。馬車とかは使ってないけど、それでもかなりの早さだったはず。
それに対して私達があそこを離れた時点じゃ『ダンジョン』に関してはまだ調査隊が出たばかりだった。
なのに王様はもうあの『ダンジョン』のことを知ってたよ。
「仰る通りです」
「ならば、二人は『ダンジョン』発生について何かを掴んでいる、といったところか」
「それ以上ですわ。情報量が多すぎますので公表するのは危険と思い、この場を設けたのです」
「わかった。だが立たせたままでは悪いな。長くなるのだろう?」
「そうですわね」
王様が立ち上がって、さっきギルドマスターが入った部屋に向かって、後にサリィ、ギルドマスター、私達と続く。
場を改めてロザリィの話を聞いてもらえるところまで来たよ。
お読みいただきありがとうございます。
次回、【すっぴん】育成法。
※入国は済んでいるのに入国料を払っていたのを修正しました。完全に勘違いしてました。




