第六十六話 サリィの提案
野営を始めて、食事をしながら、食事を終えてから、ロザリィの生い立ちについて話した。
そして、魔界が魔物がやってきてる先ということも。
「なるほど……。この事実は世界が受け入れるには時間がかかりますわ。公表はしない方がよろしいでしょう」
「えっ? 時間がかかるなら早くみんなに伝えた方がいいんじゃないの?」
「まず、公表してしまうと、真っ先にロザリィが様々な思惑で狙われますわ。実力行使に出る国もあるでしょう。そしてロザリィにはそれを撃退する力があります」
「そうか。アタイがそれやってしまうと悪いやつだと思われてしまうんだな」
「あー、そっかー」
「そうですわ。私はロザリィがそういう判断のできる人であることを知っているから擁護はできます。ですが、いくら王族とはいえ私一人がそれを言ったところで妄言と思われるのがオチですわ」
俯いて溜め息を吐きながらそう言うサリィ。
「それにアタイのことを話すには『ダンジョン』の話も付いてくるからな」
「そうだよね。『ダンジョン』が生まれてる話はサリィも知らなかったみたいだし……」
むしろ『ダンジョン』が最近増えたという話に一番驚いてたね。
「ええ。『ダンジョン』については知っていますが、生まれる、というのは初耳でしたわ。おそらく父……国王ならば知っていると思いますが……」
「その話を聞いた国は『ダンジョン』を本格的に調べ出すかもしれないな」
「ですが、ほとんどの『ダンジョン』は既に攻略済みで、魔族がいたという話はありませんわ」
「あ、その話は私も知らないや。そっか、攻略されてて魔族はいなかったんだ」
「そうなんです。ですのでロザリィの話の信用度というと、『ダンジョン』を詳しく知る人間にとっては低いものになるでしょう」
「うーん、アタイは自分に『次元移動』を使ったからな。他のやつはその場所に使った、ということなのかもしれない」
「確かにそうなるとロザリィの言ってることを証明する方法ってないなぁ。見た目が違うっていうのはあるけど、それ自体はほとんどの人が受け入れてるし」
戻る手段もなければ、仮に戻れてももう一度来ることもできないっていう状態だしね。
「そうだな。この色で何かを言われたのは最初だけだった」
「あれも異常事態で警戒してたからだろうしね」
「それは……周囲に魔物がいなくなった森の話ですの?」
「そうそう。ウェアルもウェインも冒険者がその警戒の為に街から出られなくてピリピリしてたんだよ」
「なるほど……。正直に言いますと、私も初めて見た時は驚きましたわ。ですが……フィルナのソレの方が気になって……」
「ああ、この被り物?」
「護衛の皆さんも最初はフィルナの方を警戒したみたいですわ」
「ま、まぁ、パッと見魔物だしね」
まさかの事実。
ロザリィへのヘイトは私が代わりに被ってた。
私というか、私が被ってる被り物が被ってた。うん、ややこしい。
でも確かにウェインでも私のことを先に言ってたよね。
味方に似てる未知のものよりも見知った敵……の顔を警戒しちゃうものなのかな。
「そうか、アタイが避けられなかったのはフィルナがその変なの被ってたからなのか」
「へ、変なのって言うなー!」
幼い頃にアカツキから買ってもらった大事な被り物だよ!
「まぁ、あの顔を隠したいと思うのはわかりますわ。ソレを被っていなかったとしても別の意味で惹きつけていたでしょうから」
「顔を隠したかったっていうのは間違ってないんだけどさ、最初は逆の意味だったんだよね」
そう言いながら被り物を取る。
「どういうことですの?」
「今でこそこうだけど、前はニキビが酷くてとても人に見せられる顔じゃなかったんだ」
「とても信じられませんわ……」
「もう顔中ニキビまみれでね……」
しみじみ思いながらまた被る。
「でもまぁ、フィルナと一緒にいたからっていうのは変わらないよな。ありがとう、フィルナ」
「改まってどうしたの?」
こんな態度のロザリィは最初の頃以来なかった気がする。
「これまで別のやつの意見を聞くってなかったからな。サリィの話を聞けば聞くほどフィルナと出会えてよかったと思えたんだ」
そんな真っ直ぐに見つめられながら真剣に言われると照れるよ。
「うふふ。見えなくても照れているのが丸わかりですわね」
「ふっ、そうだな。だが、素直に受け取ってくれると嬉しい」
「もう……。わかったよ」
私だって嬉しいよ。ロザリィ。
「それで、公表しないのならこれからアタイはどうすればいい?」
「提案なのですが、私の父にも同じ話をして頂けませんか?」
「え? でも『ダンジョン』に詳しい人ほど信じてくれないんじゃ……?」
「そうですが、それでも何もしないよりはマシですわ。それに、父は話を聞いてから判断して下さる方ですので、信じてもらえる可能性はあります」
ん? なんか違和感。やっぱり王族って普通の父子とは関係が違うのかな?
私の記憶にあるお父さんは二人とも娘の言うことは最優先って感じだったんだけどなぁ。
「そうだね。やってみよう」
「それでうまくいけば他国へも伝えられるかもしれません」
「他国へ?」
「お二人にその気があれば、ですが。お二人……特にロザリィに国王からの親書を他国の王へ運んでもらえれば、信じてもらえるでしょうし、魔界の話を広げることができるようになるでしょう」
「なるほど。大陸中を回る大仕事だね」
「だが、目的があるというのは旅の行き先に困ったときの指標になる」
「その為にはまずはサリィのお父さんに信じてもらわなきゃね」
「私も出来る限り伝えてみますわ」
うーん、やっぱり違和感。私が知ってる王様ってアカツキだけだからなぁ。
タイクーンでは王様なんて遠い人だったし。
なんだかちょっと緊張してきたよ。
「そうだ、サリィ。私たち礼儀とか作法とか知らないからさ、王都に着くまでに教えてよ」
「その辺は……教えてみますが……丁寧な言葉遣いさえしていればそこまでうるさく言われませんわ」
「そうなの?」
「大事なのは相手を立てることですわ。言葉を遮ったりしなければ話は聞いてもらえると思います」
「わかった。ロザリィ大丈夫?」
「魔王様と話すようにすればいいんだろう? それならフィルナの方こそ大丈夫か?」
「だだだ、大丈夫だよ! たぶん……」
「心配ですわね……」
「ああ……」
「うっ……サリィ、よろしくお願いします」
「うふふ。ようやくやり返せましたわ」
「うう、何も言えない……」
私だけまともに王様と話をしたことなかったんだね……。
次の日から、サリィにみっちり礼儀作法を教わることになった。
移動して、ブラウニーとマロンに疲れの傾向が見えたら休憩。そしてサリィの講義。
夜には講義もしつつ、これまでの私たちの旅の話をサリィにしてた。
私の運命とかよくわかってないこと以外はだいたい話したかな。まぁ、その話はするのは恥ずかしいというかなんというか……。あんまり自分から言うことじゃないよね。
そんなこんなでサリィが予想したより早く四日目の昼過ぎ、私達はアレフ王国の王都に到着した。
お読みいただきありがとうございます。
次回、謁見。




