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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
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第六十一話 赤いローブの依頼主

 ロザリィとよくわかんない依頼を受けて中央広場に向かってる途中。


「なんかおかしくないか?」


「うん。なんか変だね」


「フィルナに聞いた感じだと、こんな曖昧な依頼は受付なんてしてもらえないんだろ?」


「そのはず……なんだけどね。ギルドマスターまで話が行ってるみたいだし……訳ありなのかも」


「ちなみにフィルナの予想は?」


「うーん、依頼主が貴族様とか?」


「貴族様なぁ。イマイチ理解ができないんだよな」


 魔界じゃ王は魔王様ただ一人で、それ以外はみんな平等……っていうか、上下の付けようがないんだって。

 生まれながらに王っていうものがわかってて、それ以外にはないっていうのがロザリィにとっての『常識』。


 だから王様が複数いて国によってどういう人がその地位に立つのか異なるっていうこっちの仕組みはロザリィには難しかったみたい。


 そのせいで王様以外にも偉い人がいるっていうのは余計に納得がいかなかったらしいね。


「まぁ、今回は貴族としての依頼じゃないし、ただ訳ありを通せる相手だって思ってればいいと思うよ」


「まぁ、そういうもんか?」


「そういうもん。畏まらずにいこうよ」


「ふっ、そんなつもりは最初からないくせに」


「あ、バレた?」


「アタイもそのつもりだからな」


「ははっ、なるほどね」



 喋ってたら中央広場に着いたよ。


「赤いローブ……あ、いた! ホントわかりやすいね」


 明るい赤のローブは他にいないよ。ていうか、これまでもそんな派手なローブは見たことない。

 ローブをよく装備する魔法使いの職業(ジョブ)だと見つかりにくいようなものを選ぶからね。


 ただ今回の依頼主はフードも被って目立たずにいるつもりみたいなんだけど、明らかに異様で周りの人もみんなチラチラ見てるよ。



「さっさと声を掛けて離れた方がよさそうだな」


「そうだね。話を聞くには見られすぎだもん」


「名前、なんだっけか」


「サリィ、だよ。ロザリィと似てるよね」


「そうだけど、関係あるか?」


「ぷっ、やっぱり興味ないか」


「なんだよ」


「んーん、行こっ」


 赤いローブの依頼主に向けて駆け出す。


「あっ、待て」


 ロザリィも後ろについてくる。



「あのー、ギルドで聞いて来たんだけど、貴方がサリィ?」


 下手に敬称つけて嫌がられても面倒だから呼び捨てでいくよ。年も近そうだしね。


「え? ええ、そうですわ! (わたくし)がサリィです! 来てくださったのですね! ありがとう!」


 うわーテンション高っ。それにこの話し方。やっぱり貴族様だね。

 フードからお嬢様特有の金髪縦ロールがはみ出てる。


 でも苗字は名乗らないし、隠す気あるのかないのかわかんないよ。


「私はフィルナ。そしてこっちはロザリィ。さっそくだけど、話を聞かせてくれる? ちょっと場所を変えよっか」


「あら、(わたくし)の指定したこの場所に何か不都合でもございまして?」


 うっわ、無自覚だよこの人。


「いや、アンタ目立ちすぎだ」


 ロザリィも直球すぎ! こっちも悪気はないんだろうけど。


「ええっ!? わざわざマントで姿を隠しているのにどうして……?」


 ……大丈夫かな、このクエスト。


「ええと、見られると何か都合が悪いのかな?」


「ええ……まぁ……」


「それじゃ、一度街を出て歩きながら聞こうか。すんなり出られるなら、だけど」


「そ、それは問題ありませんわ! ちゃんと話を付けてあります!」


 あれ? ただの貴族のお嬢様だったら街から出られないんじゃないかと思ったんだけど……。

 諦めてもらおうかと思ったら話が進んじゃったよ。


「まぁいいか。どこに向かえばいいの?」


「東側にある森ですわ。そこの魔物に用がありますの」


「東……? そういえばギルドには東へのクエストは一つもなかったな」


 ロザリィよく見てるね。私は南への依頼がないかしか気にしてなかったよ。


 それにしても東かぁ。私の目的とは真逆だね。残念ながら終わったらここに戻ることになりそうだよ。


「そ、そうなんですの? それは珍しいこともあるんですわね」


 あー、邪魔されないように手回し済みってことか。

 てことはギルドもグルだね。あとで説明してもらおう。


「とにかく話を聞かせてほしいから移動しよう」


「わかりましたわ! さぁ! 参りましょう!」


 テンションの上下も激しいなぁ。



 移動を始めて、街を出るところではサリィが門衛に話をして簡単に出してもらえたよ。

 話を付けてるっていうのは本当みたいだね。



「それじゃ、歩きながらなら大丈夫かな。詳細を聞かせて?」


 東門を出て、その先に見える森を目指しながら話し始める。


「そうですわね……」


「そもそも、なんでギルドにも話してないんだ?」


 歯切れが悪くなったサリィにロザリィが追い討ちをかける。


「……恥ずかしいからですわ……。わ、笑わないでくださいましね」


 ん? それはちょっと予想外。


「大丈夫。ちょっと吹き出すくらいはあるかもしれないけど」


「うふふ、素直な方ですのね。逆にそう言われた方が話しやすい気がしますわ」


「フィルナはそこが取り柄だからな」


「それって、褒めてる?」


「褒めてる褒めてる」


「ふふっ、仲がよろしいんですね。羨ましいですわ」


 やっと素の顔を見せてくれた気がするよ。


「とりあえずバカにしたりしないから話してみて。力になれるかもまだわかってないし」


「そうですわね。まず、(わたくし)、【ビーストテイマー】ですの。そして、依頼は『テイム』の手伝いをして頂きたいのです」


 ああ、そこは予想通りだったね。


「【ビーストテイマー】っていうと、獣系とテイムしやすい職業(ジョブ)だったよね?」


「その手伝い……? 確かギルドじゃ、魔物の護衛って言ってたよな。『テイム』する魔物を捕まえてくればいいのか?」


「いえ、それでは『テイム』は成功しませんの。無理矢理連れてきた魔物や他人が弱らせた魔物に『テイム』が成功することはありませんでした」


 すでに何度か試してるんだね。


「そういや、【テイマー】のステータスに依存するっていう話を聞いたことあるけど、それだけじゃないんだ?」


 プロテアでクリムが言ってたんだよね。それが【テイマー】の能力なのか、魔物が相手を見極めてるのかって議論があるんだっけ。


 サリィの言う通りなら後者だったってことだよね。サリィのステータスがわからないとなんとも言えないけど。


「よくご存知ですのね。さすが冒険者さまですわ。(わたくし)は『テイム』という魔法はただの契約だと思っております。相手に認められなくては成功しないのだと思いますわ」


「それならアタイたちが手を貸したら余計ダメなんじゃないか?」


 確かにそうだけど、依頼は逆なんだよね。


「いえ、貴方がたにお願いしたいのは、(わたくし)が相手を殺してしまわないように、魔物を護って欲しいのです」


「だから魔物の護衛かぁ。ってことはサリィって結構強い?」


「剣術はかなりのレベルだと評価頂いております。ですが、魔物と相対するとどうしても手加減ができないのです」


 まぁ、相手も襲ってくるわけだしね。

 でもまさか、強すぎるって悩みとは思わなかったよ。


「そこまでして『テイム』したいのか。とはいえ笑うようなことはないじゃないか」


「いえ……あの……(わたくし)……」


「ん? 何かあるの?」



「モフモフがしたいんですの!!」



「え?」「は?」



(わたくし)、モフモフした生き物が好きで……でも、動物には避けられるし……ですが、【ビーストテイマー】になった今なら、と思ったら今度は魔物にはすぐ襲われて……」


「反撃したら殺しちゃう、と」


「はい……色々試しましたがもうこうするしかないかと……」


「なるほどな。なかなか難しそうな依頼のようだ」


「そうだね。どこまで手を貸して『テイム』できるのかやってみないとね」


「依頼、受けてくださるんですの?」


「もうギルドで受注しちゃってるし、ここまで来て拒否する気もないよ」


「アタイもこういう研究みたいなことは興味があるからな」


 ロザリィの目が輝いてるね。そういう私も気になってるけど。


「ありがとうございます! 報酬以外にもお礼はいたしますわ!」


「そ、それは内容次第かな」


 貴族様のお誘いとかは勘弁だよ。作法とかわかんないし。



「それじゃ、まずサリィの剣術を見せてもらおうかな」


 どの程度動けて、どういうフォローをしたらいいのか知らないとね。


 森に入る前に、軽い模擬戦をすることにしたよ。

お読みいただきありがとうございます。


次回、依頼主の正体。

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