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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
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第五十二話 異端二人

 翌朝から森の中に入って、次の町を目指した。

 ウェアルとおんなじ状況だろうから私一人ならスルーしようかと思ってたんだけど、どうせ素通りするならロザリィへの反応を見てみようってことになったの。



「これから行くのはどんなところなんだい?」


「えーっと、町の名前はウェイン。ロザリィは行ってないけど、私が来た方にあるウェアルとは本来交流が多い町で、この森の魔物の討伐が主なクエストだね。ただ今は完全に動きが止まってるんだよ」


「それまたどうして?」


「いつもは魔物が結構いるんだけど、見ての通り今は全然いなくて」


「それって、アタイが来たのと関係ある?」


「たぶん……というか間違いなく。今まで『ゲート』でこっちに来てたのが『ダンジョン』の方へ行っちゃってるんだろうね」


 仕組みがわかったからそういう予想もしやすくなったよ。


「なるほどね。アタイからしたら魔物が一箇所に集まってくれるのはありがたいんだけど」


「私も今はそうだけど、魔物って集まると厄介なんだよ。街とかに向かってくるともう総動員で対応しなきゃだし」


 あの時はほとんど見てるだけだったけど、今ならあのモンパレを一人で凌ぐ自信があるよ。

 代わりに超級以上の魔法で周囲が大変なことになるけど。

 あ、でも、それすら『自在魔法』でなんとかなるかも。


 そして、今はロザリィがいる。二人なら何にでも立ち向かえる気がするよ。


「ああ、寝る前に言っていたやつか」


「ううん、それだけじゃないよ。『ダンジョン』から魔物が溢れるとスタンピードっていう災害も起きるんだ」



 歩きながら、私が故郷から離れることになった理由やそれからの旅の話、私が被り物を被ってる理由なんかも話したよ。


 それでロザリィもこっちの人がどれだけ見た目を気にするかっていうことをなんとなく理解してくれたみたい。



 そして、三日後の昼にはウェインに着いた。ロザリィは体力もあるからかなり早かったよ。



「なんだお前らは!?」


 早いよ! 着いて早々に誰何(すいか)された。

 まぁ、正直わからなくもないけどね。


 コボルトの被り物にこっちにはいない灰色の肌の女性。


「ま、怪しく見えるよね」


「そうなのかい? せめて来た目的くらい聞いて欲しいんだけど」


 まぁでも、予想はしてたから焦りはないよ。



「お、おい! ギルドに報告しろ!」


「わかった! 無茶すんなよ!?」


 なんだか無駄にカッコいいやりとりを始めちゃったよ!


「いやいや、待って! 私ちゃんと冒険者だから! ほら、ライセンス!」



「な、なに? ほ、本当にライセンスだ……」


「コボルトが冒険者だと……」


 あれ、そこから?

 焦りでよく見てくれてないみたい。


「いや、人間なんだけど……」


 少しだけ捲って口元だけ見せる。

 この前のロザリィの反応を見る限り全部はマズイ。特にこの人達には。


「な、なんだよ。そうならそうと言ってくれよ……」


「いや、いきなり騒ぎ出したのはそっちでしょ……」


 そして、結局騒ぎを聞きつけた人が集まってきて囲まれちゃった。



「おい、そいつはなんなんだ!?」

「そいつも何か被ってるのか!?」

「いや、どう見ても本物だ!」

「俺、あいつが喋ってるのを見た!」



 私が人間だってわかったら、今度はみんなロザリィに集中し出したよ。


「こっちは私の友達のロザリィ。こういう種族なんだよ」


「友達……かぁ。たぶん知ってるよ。シンユーだっけ?」


「そうそう親友!」



「種族? こんなの見たことないぜ?」

「おいおい、入れて大丈夫かよ」

「いや、やべぇって!」

「あんなの見たことない。ヒトじゃないんじゃないか?」

「こいつら、魔物が化けてるんだ!」

「でも、ライセンス持ってたぞ」

「殺したやつのを奪ったんだろ。それでそいつに化けてんだ!」



 ……なんでそういう考えになるかなぁ。



「あー、もういいよ。出ていくから。それじゃあね」


「ん? 行くのかい?」


「入れそうにないもん」


「確かに、何を言っても聞かないって感じだな」



「待て! 逃がすわけないだろう!」


 両手を上げて大人しく出ていこうとしたら、呼び止められた。

 そっか、本気で魔物だと思っちゃってるんだ。


「はぁ。ロザリィ、殺しちゃダメだからね」


「大丈夫。ちゃんと加減するさ」



 囲まれたまま、みんな襲いかかってきたけど、まぁ、あっさりと素手で全員倒しちゃったよ。

 高ランクで話のわかる人がいなかったみたいだね。


「はい、終わり。ほら、魔物がこんな手加減とかするわけないでしょ?」


「うぐぐ……魔物め……」


「ダメだ、フィルナ行こう」


「うん、そうだね……」


 ロザリィに手を引かれて町を後にした。



「うーん、ダメかぁ」


「まぁ、アタイみたいな色のやつはいなかったな」


「ちょっとしばらく街には寄らずに行こうか」


「ああ、それが良さそうだ」


 元々反応を見るためだったし、予想の範疇だったけど……話くらい聞いて欲しかったな。



「あ、国境出れるかなぁ」


「国境?」


「前に言った国っていうやつ同士の境目。冒険者じゃないと……そうか、お金払えば大丈夫かも」


「ちょっと! 一人で納得してないで説明しなさい!」


 国境の説明が割と大変でロザリィに理解してもらえたのは一週間後だったよ……。


 ロザリィって、研究者だけあって、ただそれのことを伝えるだけじゃ納得しないし、すぐ別の疑問が湧いてくるみたい。

 その説明してた一週間も、半分くらいは国境とは別の話をしてた気がする。



 そしてロザリィと出会って二ヶ月後に国境に辿り着いて、少し怪しまれたけど、ロザリィの分の入国料を払ったら通してもらえたよ。

 久々に『交渉術』スキルが活きた気がする。


 ……ウェインで活きて欲しかったね。



 そこから更に街を避け続けて一ヶ月。霊峰バハムートを臨む小さな村に着いた。


 バルゥームを抜けた次の国、アレフ王国の中でもあまり人の寄り付かない村。

 それでも霊峰バハムートの近くということでギルドもあるし、本当に自信のある腕利きの冒険者はやってくる。そんな村。名前はバハムートにあやかってバハムル村っていうの。


 この村は昔来た時に何日か休むために滞在したから覚えてるんだけど、アキンド並みに訛りがすごい。




「人のいるところは久しぶりだな」


 ロザリィはそう言うけど、ここまでかなりハイペースで歩いてきたよ。

 昔はここからバルゥームを抜けるのに半年かかったもん。

 まぁ、当時の私が幼かったっていうのもあるんだけど。


「そうだね。でも、ここの人はみんな人を見る目がしっかりしてるから大丈夫だと思うよ」


 霊峰バハムートに挑めるか見極めてくれる。

 小さな村だけど、住んでる人は戦える人ばっかりだよ。


「そうか。それは楽しみだ」



 そう言って、村を囲うかなり頑丈そうな柵の間にある入り口に足を踏み入れた瞬間──誰もいなかったはずの後方から人が明らかに私達を狙って突っ込んできた。


「おっと」


「な、なんだ?」


 その人は離れた私達の間を抜けてから止まって、こっちを向いた。

 若くはないけど、体つきは戦う人のそれ。短めの茶髪で細目が特徴的な男の人だったよ。



「おぉ、よーこれ避けたなぁー。ようこそバハムル村へ。っち言いたかとこばってん、まずは入村料ば払ってもらうけん」


 出た! この独特の訛り。ここの村の人だね。


「ロザリィ」


「ああ、()()()()()()()()()()()()()()


 さすが、ロザリィも気付いてたね。


「入村料って?」


 そんなのを求められた記憶はないよ。

 アカツキ達と一緒に入ったから、先に払ってくれてたとかもないはず。


「きさんらも山ば登るとやろ? なら、パンチ一発たい」


 前に来たときは山から来たからいらなかったのかな?

 パンチ一発ってよくわかんないけど、タダじゃ入れてくれないみたいだよ。

お読みいただきありがとうございます。


次回、入山に向けて。

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