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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
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第四十七話 グランドマスター

「お、オーガエンペラーを単独で倒しただと!?」


 倒した魔物を伝えてたら、遂にギルドマスターが我慢できなくなって噛みついてきたよ。


「フィルナ、お前はまだDランクだったよな?」


「え? うん……じゃなくて、はい。そうです」


 国王様の軽い口調に思わず釣られそうになったよ。

 っていうか、名前!


「さすがにそれはランクが釣り合ってねぇな。2ランクアップだ。ギルドマスター、手続きを。それと、『偉業』の追加もな」


「ええっ!? そんなことしていいの……んですか?」


「普通の国王ならダメだけどな。俺はグランドマスターで国王だ。その俺の決定なら問題ない」


「フン、わかりましたよ! ほら、ライセンスを寄越せ!」


 ギルドマスターは渋々って感じでライセンスを受け取って手続きに入ってくれたよ。


「ところで、『偉業』って……?」


「当然、『ダンジョン』の新規発見だ。聞いた感じそっちの嬢ちゃんたちは発見者っていうより遭難者だからな。報酬は出してもいいが、『偉業』ってほどじゃねえ」


「報酬貰えるんですか!?」


 リリアが食い付いた。

 まぁ、あそこに留まってたのもお金になるものを集めようとしてたからだろうしね。


「んー……そうだな、まず、フィルナはこれだ」


 コインを一枚投げられた。


「これは……金貨……じゃないよ……あ、ですね」


 片面に剣と盾が描かれてる。


「そいつはこの国の紋が入った白金貨だ。バルゥーム国王に認められた証だな。他国でも通用するぞ。金貨十万枚くらいの価値はあるけど、売るなよ?」


「売らないよ!」


 っていうか、そんな貴重なもの投げないで!


「嬢ちゃんたちもこれがいいか?」


「お金ください!」


「「ぶっ! あっはっははははは!」」


 直球を投げつけたリリアに私と国王様は吹き出しちゃった。


「くっくっ……いや、素直なやつは好きだぜ。つっても、金なぁ、金貨10枚くらいしか持ってねぇけど、これでいいか?」


「はいっ!」


 嬉しそうに受け取るリリア。

 国王様もなぜか嬉しそう。



「『偉業』三つ目だと……」


 そこにギルドマスターの呟きが割り込んできた。

 あれ? 二つ目じゃなかったっけ?


「あの職業(ジョブ)固有スキルの詳細を知る手段を見つけたのがこの【すっぴん】だったとは……」


 ああ! あれも『偉業』に入ってたんだ。確かに結構な報酬もらったもんね。


「信じる気になったか?」


「ち、調査隊を出します! それで判断させて頂きます!」


「そうか。そのフィルナと少し話がしたい。他の者は外してくれるか?」


「わ、わかりました」


「私たちも大丈夫です」


「嬢ちゃんたちからも後で話を聞く。終わったらフィルナに呼びに行かせるからギルドに残っていてくれ」


「は、はい!」


 話を聞くって言われてちょっと緊張した表情になって三人は部屋を出て行った。


 ギルドマスターはなぜか私をひと睨みしてから出て行ったよ。




「で、なんでアカツキがここにいるのさ!」


 言わずにはいられなかったことをぶつけながらドスンと対面に座る。


「なんだ、やっぱりバレてたのか」


 顔は面影がある程度だし、声も違うんだけど、喋り方とか纏ってる雰囲気でわかるよ。


 ぱぁっと光って姿が変わる。私が知ってるアカツキの顔だ。


「それ、どうやってるの?」


「『変装』ってスキルなんだけどな、便利だぜ?」


 そりゃあ、顔まで変わるなら便利だよね。もはや『変身』だよ。そこまで大きく変えられないみたいだけど。


「え? なに? この国の人を騙してるの?」


「そういうつもりはないさ。先代からはちゃんとアカツキとして頼まれてる。後任が決まるまでの繋ぎだけどな。ただ、いくらなんでもそのまま俺が国王になるのは面倒が起こるからな。ここではさっきの顔と苗字の火野(ヒノ)で通してる」


「ええっ!? アカツキって貴族だったの!?」


「ちげーよ。ジパンじゃみんな苗字持ちだ。でも、冒険者アカツキとしては苗字は名乗ってねぇから都合が良かったんだ」


「そうなんだ。でも、なんでここに?」


「それは、お前が『ダンジョン』発生に遭遇してここに来るのを『視た』からだ」


「もしかして、モンパレのときも……?」


「ああ。あのときのことも話しておこうと思ってな」


「あのときのこと?」


「俺はお前の『裁きの(イカヅチ)』を見て来たって言ったが、あれは半分本当で半分嘘だ」


「えっ?」


「あの時、俺は王都を破壊するオークジェネラルの姿を『視た』」


「どういうこと?」


「もう一つ。今回、俺が『視た』のは三人を助けられなかったお前の姿だ」


「結果が変わってる?」


「そうだ。これはスキルじゃない。ある日突然『視る』ようになった。始めはその通りの事が起こるから未来予知かと思ってたんだが、フィルナが絡むとその未来が変わるみたいだな」


「私が……?」


「正直、よくわかってねーんだ。ただ、フィルナは悪い予知を覆してる、くらいだな」


「私のことを『視た』のはその2回だけ?」


「そうだな」


「うーん……あ! どっちもステータス制限が解放された時だ!」


「ステータス制限?」


「【すっぴん】って最初はステータスが1/1000に制限されてるみたい。それがレベル100で1/100になって、今回1000を超えて1/10になったの」


「なるほどな、それで【すっぴん】が動けねぇのか」


「私は加護をもらったから最初から動けたんだけど、それでも数値は全部1だったよ」


「んー……ってことは次は一万か? そのときまたなんか起こるんじゃねぇか?」


「ええっ! そうは言っても、今回だってモンパレの時だってレベルが上がったのは事が起こってからだったよ?」


「もしもお前がそうだとしたら、いつかわかる。俺はもう何度も経験して嫌というほど思い知らされた」


「運命……?」


「そうとしか思えないことが、な。だが、お前ならそれを覆せるのかもな」


「私に……そんな力が……?」


「んー、俺からすりゃ相変わらずただの可愛い妹みたいなもんなんだけどな」


 はは、妹、か。


「ま、話しておきたかったのはそのことだ。とりあえず心に留めておいてくれ。それよりランクアップを素直に受け入れたのは意外だったぞ」


「まぁ、アカツキなら身内贔屓しそうだけど。もしそうだったら私が受け入れたときに「やっぱなし」って言ってたでしょ?」


「そうだな」


「だから、アカツキが評価してくれたんだな、って。嬉しかった」


「俺もだ。あ、そうだ。お前、Aランクの昇格試験の受験資格も得てるぞ」


「嘘っ!?」


「嘘ついてどーすんだ。複数回の『偉業』が条件なんだよ。ただ対象のクエストがこの国にはねぇから紹介状を書いてやる。ちょっと待ってろ」


「なるほどー。対象のクエストってどんなやつ?」


「んー……だいたい山が多いな。これから向かう先なら『霊峰バハムート』になるだろうな」


 やっぱり私の旅の目的地、わかってるんだね。

 『霊峰バハムート』は次に入る国にある山で、ここもアカツキ達と通ったというか越えた場所。


 Bランク以上の魔物にドラゴンもいる危険地帯。

 あのときはほとんどリューさんのドラゴンの上にいたよ。


「あの時通った道でも断トツに危なかった所だね」


「まぁな。正直、ソロのフィルナにそこ紹介したって言ったら(クレナイ)にどやされそうで怖えよ」


「あー、間違いなく怒るね」


「だよなぁ。でも、行くんだろ?」


「うん。行く」


「なら俺も覚悟決めっか」


「なんだか情けない覚悟だね」


「言うなよ。お前だって怒った紅の怖さ知ってるだろ?」


「うーん、全部アカツキが怒られてたけどね」


「はぁ。ほら、紹介状。これ持ってあの時山越えてから寄ったギルドに行けば試験を受けられる」


「わかった。ありがとう」


「そんじゃ、あの子ら呼んできてくれ。こっからはグランドマスターの仕事だ。新しい『ダンジョン』のことも任せろ」


 わ、頼もしい! って変な話だけどね。


「あ! その前に! コレ!」


 ミスリルの短剣! 返すんだった!


「ん? ああ、あの時の短剣か」


「私が価値を知らないのをいいことにこんな貴重なもの渡すなんて!」


 さっきの白金貨もそうだけど、貴重なものが貴重に見えなくなるよ!


「護身用に下手な物渡せないだろ?」


「いやいや、か弱い女の子がこんなもの持ってるってわかったら逆に危ないでしょ!?」


 冒険者になるまでオババ以外の人に見せたことないよ。オババに止められたからね。


「わ、悪かったよ」


「コレは返す。いい短剣も手に入ったしね」


 ミスリルの短剣だけだったらあのオーガエンペラーも倒せなかったかもね。


「そうか。でも、必要だと思ったら今度はちゃんとそういうもんだってわかった上で渡してやる」


「うん。それならちゃんと受け取る」


「はっ、しっかりしてんな」


「もう23だからね」


 少しだけアカツキと話をしたよ。

 ほとんどこれからのことだけど。

 旅した話はみんながいるときにしたいからね。



「この国にはそう長くはいねぇ。またどこかで会おうな」


「あれ? 調査隊待たなくていいの?」


「もう『偉業』は追加されたんだ。行っちまえ。あいつめんどくさそうだったろ?」


「ふふっ、そうだね。あ、そうだ。ここに『転移(テレポ)』で来たのも誤魔化しといてくれる?」


「ははっ、前と立場が逆になっちまったな。まぁ、それは事後申請ってことで処理できる。緊急事態だからな」


「ありがと。それじゃ、またね!」


「ああ」


 アカツキとはまた別れてセシリー達と交代したよ。

 そこでセシリー達ともまたお別れしたんだ。


 セシリー達は貴重な『ダンジョン』発生の瞬間を知る生き証人だからね。すぐには解放されないだろうなぁ。


 っていうのは建前で、本人達にもそう言ったけど、一緒に行くにはセシリーの態度は正直やりづらいし、改めてくれそうにないんだよね。

 こっちが言えば喜んで付いて来てくれるんだろうけど、私の旅に付き合わせることになっちゃうし、その私が気を遣うくらいなら一人の方がいいよ。


 ギルドはギルドマスターが集めたらしい人で溢れてたけど、それに紛れてこっそり外に出た。

 アカツキの言った通り、姿を見られたらめんどくさそうだもん。


 そして街を出てから、森に進路を変えたあの街道まで『転移(テレポ)』した。

 国を跨がず外から外なら問題ないからね。



 そこで──


「やったわ! 成功よ!」


 全裸で歓喜の叫び声を上げるヤバい人と遭遇した。

お読みいただきありがとうございます。


次回、魔族。

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