表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
46/152

第四十五話 救出

 この『ダンジョン』はただひたすら同じような広い空間が縦に続いてるみたい。


 その分、魔物が増えると大変なことになりそう。


 私は『自己再生』で体力も魔力も回復するからいいけど、セシリー達はかなり危ない。


 最初以外は群れの魔物だったから気付かれないように進んだよ。

 さすがに群れを相手にしてる時間はないし、クリムも群れはパーティならなんとかなるって言ってたもんね。


 そして地下5階、遂にセシリー達を見つけた……!



 セシリー達は登り降り両方の階段から一番遠い位置の壁際、私から見て左の端にいる。


 この階層だけセシリー達が応戦してるせいか、魔物達も殺気立ってて、魔物同士でも争ってる。

 もはや乱戦でごちゃごちゃだよ。


 とにかくセシリー達を助けないと!


 まずは……中央に向かって『ファイアⅠ』を全力で!


 それを目眩しに──って、デカっ!

 さっきのゴブリンに撃ったのより大きな火球が出た。


 それは後で考えるとして、セシリー達の元へ!

 セシリーが座り込んでてローズとリリアがそれを守ってるみたい。


「みんな! 無事!?」


「フィルナ! 来てくれてありがとう!」


「セシリーが毒を受けてしまっているの!」


「わかった! まずはみんなこのポーションを飲んで!」


 魔法鞄(マジックバッグ)からポーションを3本取り出してリリアに渡す。


 そして三人が飲んでいる間は私が盾になる。


 どうしようか。解毒薬は調合すればいいんだけど、その余裕がなさそう。


 考えながら迫ってくる魔物を排除してたら、ポーションを飲み終わったローズが前に出てくれた。


「セシリーをお願いします!」


「わかった。ちょっと危ないかもだけど明かりを点けるよ」


「助かる! 私はいいけどローズが苦戦しちゃってて」


 リリアは【斥候(シーフ)】だから『探査(サーチ)』があるもんね。

 魔法鞄(マジックバッグ)から松明を取り出して火をつける。


 そして、なんとなくそうだという直感に従って、初級魔法の二番目、魔力消費10の治癒魔法『解毒(キュア)』を発動した。

 さっきの『ファイアⅠ』が大きくなったのは魔力が増えたからだと思ったの。


「う……フィルナ……様……」


 直感が正しかった証明として、しっかり『解毒(キュア)』が発動してセシリーが話せるようになったよ。


「詳しい話は後! これも飲んで! 体勢を立て直すよ!」


 松明とマナポーションをセシリーに渡して私も前に出る。


 魔力が10を超えてるならⅡ系も使える!

 それならここは……『ファイアⅡ』!


 Ⅱは広範囲に広がる火炎。今は魔石とか素材のことは考えないよ!


 そこに群がる色んな魔物を火炎が焼き尽くしていく。

 普通は足止めくらいしかできないんだけど、私の魔法は特別。クリムが言うには消費した魔力の十倍の威力が出てるんじゃないかって。

 加護のステータス十倍が威力の方に出てるんだと思う。私の魔力が十倍になったわけじゃないってこと。

 だから擬似魔法だと普通の魔法が出たんだね。


 この『ファイアⅡ』の狙いは魔物を減らすのもそうだけど、それよりもローズ達の視界を照らすこと。

 燃え上がる魔物が明かりになって他の魔物の位置を知らせてくれる。


 起き上がったセシリーも私に習ってファイア主体で魔法を撃つ。


 魔物同士で争ってくれてたおかげで30分くらいで終わりが見えてきた。



「よし! 走って! あっちに階段がある!」


 降りてきた階段に三人を誘導。


「はぁっ、はぁっ……た、助かったぁ……」


「残酷なことを言うけど、まだだよ」


「えっ?」


「ここは地下5階。同じように魔物で溢れてるフロアを通らないといけないの」


 階段は全部対面にあって、全員で抜けるには戦闘は避けられない。


「ここって一体……」


「私達、湖にいたはずなのですが……」


「急に真っ暗になるし、周りは壁だし……」


 やっぱり巻き込まれたんだね。まぁ、自分から入るわけないよね。


「『ダンジョン』ってわかる?」


「ううん」


「私も知らないわ」


「私は言葉だけなら……」


 そうだよね。あの街で活動させるだけなら教える必要がないもんね。


「詳しくは後で話すとして、とにかく魔物が湧いてくるから減らしながら上に進んでいくよ。階段は登った先の反対側。なるべく私が減らすから援護よろしく!」


「「「はい!」」」


 何がいるかはさっき通ってわかってる。

 ほとんど獣系の魔物。最初のフロア以外四足歩行の魔物ばっかりだったよ。


 だから戦法は同じ。『ファイアⅡ』で減らしつつ照らして、セシリー達がまともに戦えるようにする。

 ワンパターンだけど、確実に減らせる。今はそれが重要。パーティならなんとかなる、の意味がわかった気がするよ。


 もう何体倒したのかもわからないし、頭の中ではずっとレベルアップ音が鳴り続けてる。


 そしてもう一つ上に上がった地下3階の戦闘中、遂にあの声を聞くことになった。


(「レベル1000に到達した為、ステータス制限が1/100から1/10になります」)



「やっ──うわっ!」


 急に体が軽くなりすぎて、勢い余って魔物に体当たりした形になっちゃった。


 ぶつかった魔物は壁まで吹き飛んで死んじゃったみたい。


「フィルナ様! 大丈夫ですか!?」


「あはは。大丈夫大丈夫。後は任せて」


 いける。『ファイアⅡ』!


「うわ、すっごい」


 前方を全て埋め尽くす火炎が残った魔物を全て焼き払った。


 その勢いそのままに地下2階を突破して、オーガエンペラーと戦ったフロアに戻ってきた。


 オーガの死体はそのまま、ゴブリンもロードはあのファイアで倒せてたみたいで下位と中位のゴブリンが散り散りにいるだけ。

 あれから新たな魔物は出てきてないみたいだね。


「あれは……オーガ!?」


「あんな魔物が……死んでる……?」


「来る時に倒しておいたんだ。松明点けて戦うことになったら厄介かなって」


「す、すごいです! フィルナ様!」


「とにかくあれだけ回収して出るよ! そこから出たら外だよ!」


「わかった!」


 襲いかかってくるゴブリンだけ相手をして、中央に残ったオーガエンペラーを魔法鞄(マジックバッグ)に回収。

 この後の説明に必要だろうしね。



 外に出ると、既に夜になってたよ。

 念の為その場所から少し離れて野営をすることにした。

 そこでセシリー達に『ダンジョン』について簡単に説明したよ。

 これからギルドに報告しないといけないことも。

お読みいただきありがとうございます。


次回、混乱。


※2021.2.26 サブタイトルを変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ