第二十八話 アキンド到着
「ひどいですよぉー! 折角の天使に私の活躍を見せるチャンスを!」
「うるさいぞイー! お前はもう黙ってろ!」
どうやらイーさんが例の対魔法特化だったみたいで、私があっさりセシリーを抑えたのが納得いかないらしい。
さっきからそればっかりだよ。
今私達は大人数になってしまったのもあって、馬車とは別れて歩いてアキンドを目指してるの。
セシリー達に聞いた感じだと、メンソルが捕まったのが徐々に町に広まって混乱してきてるみたい。
だからギルドマスターも対応に追われて追っ手も三人しか出せなかったんだって。
狙いはやっぱりルル。そしてシーさん達。
ただ、シーさん達の正確な人数とかは知らなかったみたい。
「なにもフィルナ様まで歩かなくても……」
セシリーは奴隷から解放されても様付けをやめてくれない。
「いいの。実は馬車の方が辛かったからね。ルルには悪いんだけど」
「わたしは歩くの平気! って言ったでしょ?」
「ふふっ、ありがと」
頭を撫でると嬉しそうに目を細めるルル。
「リリア達はランクとかどうなってるの?」
「私達は……全員Fランクなんだ……」
「えっ? 『探査』も使ってたしレベル上がってるよね?」
特有スキルを覚えてる時点でレベル10は超えてるはず。
それがFランクなんて……。
「昇格試験……受けられないから……」
「あっ、そっか、試験は職員との模擬戦……」
あのギルドマスターは戦えるようには見えなかった。
だから、他の職員に隠してるクエストをやってた彼女達は模擬戦を頼むこともできなかったんだ……。
「ま、それもアキンドで試験受けりゃあいい。ライセンスはさすがに持って来てんだろ?」
お、ビーさんいいこと言うね。
「アキンド……かぁ……まだ近いなぁ」
「そういや、ギルドマスターはアキンドと繋がってなかったって間違いないの?」
「うん。といっても私達が知らないところでっていうのがあったら別だけど……」
「あの人はいつもメンソルって人から奴隷を手に入れることばかり考えていました」
「でも、メンソルさんを捕まえて、ようやくあの町の秩序を仕切る大変さがわかったみたいで」
奴隷だったから口に出せなくて溜まってた分言いたい放題だね。
「まぁ、そんな感じだとは思った。セコそうだったもん」
「フィルナは毟り取ってたけどね」
「……嬢ちゃん、そんなことしてたのか」
「失礼なこと言わないでよルル。正当な要求だよ」
「それで、ボスはどうなったんだ?」
「町中味方しかいませんからね。混乱に乗じて脱走してるんじゃないですか?」
「身を隠すのも簡単だろうし」
「じゃ、じゃあ、ボスは……!」
「きっと慌てるギルドマスターをどこかで笑って見ているんじゃないかしら」
「な、なんだ……よかった……」
「余計な心配しすぎたね。アキンドから私も王都のギルドマスターに連絡しておくよ」
想定は最悪からするもの、だったっけ? 合ってる? アカツキ。
「ならそれは俺が王都に届けよう」
「エーか。そうだな、アキンドから向かうのと合わせよう。あの程度で混乱するようならギルド側と同時に攻められればすぐに落ちるだろう」
そんなわけでイヤンの対応はシーさん達とギルドに任せることになったよ。
セシリー達もアキンドで試験を受けてから三人で別の街へ行くみたい。
まぁ、早くイヤンから遠ざかりたいよね。
私はルルとしばらく滞在するつもりだからそこでお別れだね。
変な町だと思ったけど、変な騒動にまで巻き込まれちゃったね。
そこからセシリー達が私の体調に気付いてペースを落としてくれて、三日かけてアキンドに辿り着いた。
「ついたー!」
「あっ! ルル! 待って!」
街に着くなり走り出したルルを追いかけてようやく捕まえる。
「もうっ! 急に走らないで!」
「えへへー、ごめんごめん。うわーお店がいっぱい! 久しぶりだなぁ」
「商人の街だからね」
ルルにつられて辺りを見回す。
道の両側あちこちに出店が出てる。
ああ懐かしい。
ルルにはああ言ったけど、昔の私もこうだったんだよね。
店という店に駆け寄る勢いだったよ。
「やっと追いつきました」
セシリー達が後ろから駆け寄ってきた。
「ごめんねセシリー。久しぶりに来るアキンドが嬉しいみたい」
「いえ、正直私も同じ気持ちなので」
あの変な町に何年もいたらね……。
「嬢ちゃん、とりあえずギルドに行かないか? 報告が済んだら好きにすればいい。俺達もさっさと仲間のところに行きたいしな」
「そうだね。ルル! 行くよー」
「はーい」
ひとまず全員でギルドへ行ってそれぞれ用事を済ませた。
アルさんへの報告はギルドを経由してエーさんへの依頼っていうことにして、エーさんは王都へ、残ったシーさん達は仲間がいるっていう店に向かった。
シーさんの「次に会う時はちゃんと名乗れる関係だと良いな」っていう言葉がなんだか嬉しかったよ。
ただ一人だけなかなかギルドを出ていこうとしないから無理矢理追い出してやった。
「それじゃあ、アタシたちはこれから試験受けて来るから。お金もないし、今日はそのままクエスト受けるよ」
「そっか。頑張ってね!」
「フィルナさん、ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう」
「ふふっ、そんなこと言ってると、また明日会うかもよ?」
「私からも……本当にありがとうございました。それとフィルナ様……これを」
「ん? これは?」
セシリーから鉱石のようなものが埋まったリング状の腕輪を貰った。
「『信号』の魔道具です。ローズが対になる腕輪を持っていますので何かあれば使ってください。すぐに駆けつけますので」
使った方の方角と距離がもう片方に伝わるんだよね。
「ありがとう。これ使い捨てだよね? いざと言う時に取っておくよ。そっちも何かあったら呼んでくれていいからね」
「はい!」
「それじゃ、みんな元気でね!」
「「「フィルナさん(様)もお元気で!」」」
「みんな、ばいばい!」
「ルルちゃん、ばいばい」
「それじゃ、私達は宿を確保するよ。そしたら今日はお店回ろう!」
「うん!」
私とルルはポークさんが言ってた「一番エエ宿」をギルドで聞いて歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
急に一日空いてしまってすみません。
次回、ソテー商会。




