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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第二章 帰郷
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第二十話 色欲の町

 私は【すっぴん】のフィルナ。23歳。一人で王都から旅に出て最初の町、イヤンに着いたところ。


 突然だけど、みんなはエッチなことに興味ありますか?


 私は……まぁ、多少は。


 でも、この町そういうのしかないんですけど!?

 さすがに落ち着かないよ!


「どーりで前はすぐ宿をとって休んだら王都に向かったわけだよ。アカツキ達が町を見に行かせてくれなかった理由がわかった」


 通り道にある町だから仕方なく野営より宿のベッドを選んだんだね。私のために。



 ここまでは特に問題なくやってこれた。まさか、泊まる町が一番の問題になるとは思ってなかったよ!





 王都を出て一日目。


 私はアカツキ達に連れられてきた道を辿って生まれ故郷を目指すことに決めてた。

 もう地図にも載ってない村。

 だからアカツキ達に聞いてた場所を今の地図にしっかりと書き込んであるよ。


 まずは見晴らしのいい草原をひたすら西に走った。

 走る必要はなかったんだけど、なんか嬉しくて。『自己再生』で疲れないからかなり進んだと思う。

 ステータスの数値なんて8倍だからね!

 といっても、8倍早く動けるわけじゃないけど。ステータスっていうのはそんな単純じゃないみたい。


 それでアルさんの協力もあって私の加護の補正は10倍だってことがわかった。

 体力とかは80相当ってことだね。

 ただ、魔力だけはちょっとややこしくて回復魔法以外封印中。



 そんなわけでモンパレがあったところを通って来てるけど、ぐちゃぐちゃになった街道ももう綺麗になってたよ。

 魔法が着弾した跡も今は花が咲いてた。

 道を整備した人も凄いけど、自然の力もすごいね。


 そして、この辺りからあの魔物が現れたんだな、っていう境目がはっきりとわかる場所があった。

 だいぶ暗くなってたけどそれでもわかるくらいその前後の様子が全然違ってた。


 その日はその境目を超えたところで野営。

 この時のために何度かクエストで練習したもんね。


 街道近くだと夜でも人が通ることがあるから少し離れた場所。そして火を焚いているところには基本的に近寄らないのが冒険者のマナー。

 近付くのは敵対行動とみなされても文句は言えない。せめて遠くから一声かけること、だったよね。


 だからあとは魔物への警戒。パーティだったら交代で夜番すればいいけど、私は一人。


 だから私の場合は魔物避けの香を焚く。

 この香は正確には魔物避けじゃないの。

 魔物にはそれぞれ苦手な匂いがあって、その場所に合わせた香じゃないと、逆に魔物を引き寄せたりしちゃう。


 私にはオババに教わった知識がある。どんな魔物がどんな匂いを苦手にしてるのか。そして、この辺りに現れる魔物の種類。


 といっても魔物の種類がわかるのは次の町まで。以降は自分で情報を集めなきゃ。


 そこで役立つのが新しいスキル。試しに使ってみよう。


 『探査(サーチ)


 これは周囲の生き物を察知する【斥候(シーフ)】のスキル。広さはだいたい1km。このスキルも『調合』と同じで練度が上がればその範囲も広くなるの。

 王都には頼りになるベテランの斥候(シーフ)が二人もいたからね。話が聞けてよかったよ。


 そして発動するときになんとなく大きさをイメージすると虫とか小さいのは無視できる。

 反対にイメージより大きいものも弾くか入れるか決めておける。小さいものを探すときは弾く感じだね。


 そしてこのスキルを習得したきっかけっていうのがまたアレなんだよね。

 モンパレ以降やたらと怪しい視線を感じるようになっちゃって、それを意識してたら『気配察知』っていうスキルを習得して、加護で『探査(サーチ)』に進化したの。


 そのおかげで視線を撒くことができるようになったんだけど、足音を消して撒いてたら、毎朝走ってても習得しなかった『無音歩法(スニーク)』を習得しちゃったんだよね。

 しかも加護で『不可視(インビジ)』まで派生しちゃうし。


 それでそのスキルを調べたらどっちも【暗殺者(アサシン)】のスキルだったっていうね。

 下手に使ってバレたら大変なことになりそうだからほとんど使ってないよ。今後もあんまり使う機会がないといいね。


 おっと、『探査(サーチ)』の結果は……うん、そもそも魔物がいないね。

 まぁ、王都からそんなに離れてないしね。こっち側は本当に見晴らしがいいから明るければまだ王都が見える。


 だから焚いているのはスライム避け。

 嗅覚があるのか不思議なんだけど、スライムが寄ってこない匂いがあるんだよね。


 そんな一日目が終わって、二日目に森を抜けた。


「普通だったらこの森からモンパレが起きてたんだろうなぁ」


 モンパレは自然の力が集まって起きるというのがオババの予想。だから起きるのはこういう自然のあるところ……なんだけど、今回は私の自然魔法の影響で草原で発生しちゃってた。


 それにしてもよく正確にモンパレの到達日を予測できたよね。

 街道近くに魔物が出るっていう前兆から予測できるのかな?


 あ、前兆が出る場所でわかるのかも。

 私がこの前調査したのは結構離れたところまでだったけど、一年前、王国学園生のケント君が最初にウルフを見つけたのはかなり近くだったもんね。


 ちなみにケント君は卒業生同士でパーティを組んでしっかり冒険者してるよ。



 そんな予想を立てつつモンパレを思い出しながら進む。最後にアカツキとクレ姉さんに会ったこともね。


 森では何体かの魔物と遭遇したけど、やっぱり問題なし。森の主っていう危ない魔物もいたけど今はスルー。

 熊の魔物らしいけど、今の私じゃさすがに無理。魔物じゃない熊でもギリギリ勝てるかどうかだもん。


 『自己再生』があるから無理矢理勝とうと思えば勝てるんだろうけど……さすがにそこまでのことをするつもりはないよ。

 ちゃんとそれと戦う実力がついたとき、まだ討伐されてなかったら挑みたい、かな。


 ちなみに魔物は見た目は動物とほとんど同じだけど、

動物よりも凶暴で人を見ると襲ってくるし、大きさも一回り以上大きい。

 あと動物と同じで繁殖もするけど、基本的にはオババの言う『特異点』から現れる。

 そして決定的な違いとして体内のどこかに魔石を持ってる。どこかといっても種類ごとに場所は決まってるけどね。


 その魔石はその種類ごとに決まって同じだから、ギルドでの討伐証明は魔石を持ち帰ることで行われてるの。


 そしてEランクからの昇格試験を受ける条件が、クエスト報告としてこの魔石を20個納品することだった。

 ちゃんと討伐証明(魔石)の位置を把握して、潰さずに倒す技術があるかを見てるんだって。


 本当は非公開のはずなんだけど、あんまり討伐をしない私にアルさんが教えてくれたの。

 どうしてもモンパレが起こるか私が旅立つ前に昇格させたかったらしいよ。


 実は職員規定を変えて私の専属担当になったのはそういう事情もあったみたい。

 それでも教えたことは秘密にしておいてくれとは言われたけどね。


 そしてDランクからの昇格試験の条件は逆に公開すべき、ってことになったらしくて昇格した時に教えてもらった。


 それは、20種類の魔石を納品すること。もちろんクエスト報告としてね。


 非公開だとあまりにも達成者が少なすぎたらしいよ。

 これなら公開しても受注が偏ることはないからって変更になったんだって。


 ただ、地方のそもそも魔物の種類が少ないところだと冒険者の流出が危惧されるってことで色々あったみたいだけど、結局は上位ランクを目指す人はそこには留まらないっていうことでこうなったって言ってた。


 ちなみに私は今五種類。Cランクはまだまだ先だね。



 そして王都を出て十日後、私は一つ目の町のイヤンに着いた……んだけどさぁ。


 アカツキ達に連れられてた当時の私は何も知らなかったからわからなかったけど、今見たら男女があれやこれやのいかがわしい店ばっかり!


 誰に聞いてもこの町のこと教えてくれないから気になって絶対に寄るって決めてたのに、まさかこんな町だったなんて。

 いやまぁ、女の私には話しにくいかもね。


 大きさは王都の商業区画くらいだけど、やけに立派な建物が多い気がする。


「いいや、ギルドもあるみたいだし宿をとってギルドに行こう」


 泊まるのは前と同じ宿にしよう。なるべく記憶にある通りにしたいんだよね。

 これは故郷の村があったところに行くまでのちょっとしたこだわり。



「いらっしゃいませ、お泊りですか?」


「はい。一人です」


「では、一泊400ギルとなっております。何泊なさいますか?」


「高っ! 王都のうちの宿でも200ギルだよ!?」


 言っちゃ悪いけど、うちの方が綺麗だし。


「あの……ここはイヤンですよ? シングルの宿はありません。全てダブル料金からとなっております」


 あ、あー……そう。それでも高いけど……まぁ、そういう理由だよね。


「とりあえず一泊で。あとから延泊はできる?」


「はい。それは大丈夫です。では、一番手前か奥、どちらにしましょう?」


「隣が片側だけの部屋にしてくれるのね。じゃあ手前で」


 ()の最中の部屋の前を通りたくないしね。まだ部屋の前を通られる方がマシだよ。


「ではこちらが鍵です。料金は先払いとなっております」


「はい、400ギル。食事は?」


「別料金でいつでも部屋にお持ちします。必要ならここで承っております」


 あ、食堂とかないのね。そういえば前は手持ちの食料食べてたっけ。


「とりあえず夜の分お願い。一人分よね?」


「それはもちろん。一食50ギルになります。なにか料理にご希望はありますか?」


「はい50ギル。そうね、肉料理が食べたいかな」


「承りました。避妊薬の用意もございますので必要であれば──」


「いえ結構です」


 調合できるし。てゆーかしないし!?


 鍵をもらって部屋に入った。


「おーダブルベッド! 一人で使うなんて贅沢ね。あ、部屋にお風呂もあるんだ!」


 うちの宿じゃ共用の浴場か部屋でタオルで拭くだけだったよ。これで400ギルなら安いかも。ちゃんと夜寝られるなら。


 どう考えても夜は静かじゃないよね。


 とりあえず装備はそのままでギルドに行ってみよう。

 ……ここのギルドってちゃんとしてるよね?


 一抹の不安を抱えながらイヤンのギルドへ向かった。

お読みいただきありがとうございます。


第二章です。よろしくお願いします。


次回、春を売る依頼。

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