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【すっぴん】のフィルナ  作者: さいぼ
第一章 モンスターパレード
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幕間 向こう側

別視点のモンパレ後あたりの話です。

 真っ暗だな。寝ても覚めても目に映るのは暗闇だ。

 いや、これを「目に映っている」と言えるのか?


「アダム様! 魔王アダム様!」


「誰だ?」


「ウェインです。ただいま戻りました」


「ふぅ、名を聞かねば誰かわからぬというのは相変わらず難儀だな」


「そうですね……」


 ここは俺の城。長年歩いていれば部屋や物の配置くらいはもう体が覚えている。

 このウェインもそうだ。だから俺の下へ駆けつけることもできる。


 この世界は闇に包まれている。炎を灯すこともできず、魔法を使おうが明るくなることはない。()()を除いて。


 そしてこの暗闇で認識できないせいかヒトの声が全て同じに聞こえてしまう。


 姿もわからず誰の声かもわからない。本当に難儀だ。


 だが、この城や家具の存在がかつてはこの世界にも光があったことを示唆している。


 そして俺にある『俺ではない俺』の記憶。

 そこがこの世界なのか()()()なのかはわからないが、確かに俺は光に満ちた世界に立っていた。


「それで、あの『特異点(ゲート)』がいつもより早く開いた原因はわかったのか? その後すぐ近くに開いた『特異点(ゲート)』もだ」


「ええ、まず後者ですが、第三()調()()()が使われたようです」


「ほう。数年ぶりだな。同じやつか?」


「いえ、別の人間です。そしてどうやら前者の方もその人間の第一同調魔法によるもののようです」


「同じ波長ということか。だが、第一でゲートが開いたことなどないだろう?」


「はい。おそらく複数回に亘るものかと。従来を上回るペースで徐々に光が強まりゲートとなったことが確認されております」


 そう、『特異点(ゲート)』とはこの世界唯一の光だ。

 不規則に現れる小さな『特異点(ゲート)』とウェインの言ったように少しずつ成長し『特異点(ゲート)』となる光。


 だが、第三同調魔法になるとそれだけで『特異点(ゲート)』が開くほどの光を放つ。

 しかしそれは全て空で開き、通れるものは限られている。


「その後の経過は?」


「やはり集まっていた魔物達が飛び込んだ後に消失しました。空のゲートにしても発生してすぐに()()()()ドラゴンが飛び込み消失しています」


「ふっ、色もわからぬのにイエローとはな。誰が決めたのやら」


「はぁ……?」


「ゲートを見るなり飛び付く魔物にしてもまるであちらの羽虫のようだな」


「羽虫……ですか?」


「俺も話を聞いただけだがな。羽虫というのは光に群がるらしい。そして大抵光源の炎に焼かれて死んでしまう」


「その話というのも、イヴ様の……?」


「そうだな」


「イヴ様は本当にあちらにいるのでしょうか?」


「俺の勘はそうだと言っている。ならば目指すしかあるまい?」


 イヴとは俺の別の記憶にある人物。幾度となく言葉を交わした記憶が残っている。


 姿形は全く思い出せないのだが、大事な人間(ヒト)だということだけははっきりとわかる。

 俺はそのイヴと会うためだけに生きていると言っても過言ではない程だ。


 イヴと会えば大切なことを思い出せると本能が告げている。いや、それも『俺ではない俺』の記憶なのかもしれないな。


「そうですね。この世界に光を齎す存在……」


 イヴと語り合う俺はいつも光溢れる場所にいた。


「まずはあちらへ行く方法を確立せねばな」


「こちらに迷い込む人間もいたのです。こちらから我々が向こうへ行く手段も必ずあるはずです」


「ゲートでは駄目だったんだな?」


「はい。あれを通れたのは魔物だけでした」


「我ら魔族は魔物ではない、か。喜ぶべきなのだろうがな。それで、その迷い子から話は聞けたのか?」


「やはり同調魔法は習得不可能なようで。我らが生まれた時に持っている階位(ジョブ)は向こうでは儀式によって得るらしいのです」


 階位(ジョブ)……俺が生まれながらに魔王であるのもそれがそう示していたからだ。


「その儀式とやらはこちらではできぬのか?」


「残念ながら。そして、同調魔法はその儀式の前までに契約が必要だとか」


「なるほど、生まれた時から階位(ジョブ)を持つ我々には元々習得不可能ということだな」


「そうなります。それと……」


「なんだ?」


「暗闇と食事ができないのが苦痛なようで……」


「食事か……そういえばあちらではそのようなことをするのだったな。どうもかなり美味らしい。それができぬのは確かに苦痛だろうな」


「我らと同様、瘴気を吸うことで死にはしないようですが、精神的には長くは持ちそうにありませんね。瘴気の影響もどうなるかわかりません」


「そうか……可能な限りは助けてやれ。しかし、我々も向こうへ行けば同じようになるのだろうか」


「こちらは向こうからすれば地獄のような世界らしいですよ。我らの存在がなければ彼女はもう生きていなかったでしょうね」


「何も見えぬからな。まぁ、適応してもらう他あるまい。誰も戻す手段を知らぬのだ」


「そうですね。相変わらず「ダンジョンがあった」と言い張る場所から動きませんが……何かないかと調査はさせています」


「わかった。何かあればまた報告してくれ」


「はっ」

お読みいただきありがとうございます。


彼らの出番はまだまだ先です。


次回から第二章、よろしくお願いします。

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