第5話 これも、青春?
ネテミです(^^♪
楽しんでいって下さい!
私は窮地に陥っていた。らっくんの幼馴染だから、気を遣って遠回しな表現をしたのがいけなかった。
最初から、きっぱりといらない!と断ってしまうべきだった。
しかし、今となっては後の祭りだ。
辺りは、死屍累々の惨状となっている。皆、一様に口の端からトマトの煮汁が垂れ、初めて現場を見る人は殺人現場と勘違いしそうな有様である。
「え⁉私、幽霊になった後でもう一回死ぬの!もう残機ないんだけど、死体蹴りどころか、幽霊蹴りなんだけど!?」
―――虚しい叫びがお堂にこだまする。しかし、その声を聞くものはすでにいなくなっていた。
まさに死人に口なしである。
――――だが、待てよ。
確かに、ここに転がっているバカ達は弱みを握られていた。
だが、幽霊である私に何の弱みがあるというのだ?
あれ、私食べる必要なくない?
死中に活を見出す。
私は、おもむろにタブレットに文字を書いた。
『葵さん。がんばってつくってくれたけど、おなかいっぱいで、いらないかも』
恐る恐る、機嫌を伺いながら書き込む。
葵、すまないがどうかわかってくれ。
祈りに似た想いだったが、幽霊の祈りが一体何処の誰に届くのかは、私にも分からなかった‥‥。
「そっかぁー。残念だけど、それならしょうがないね」
「あれ、案外あっさり引いてくれるんだな。葵、やっぱりらっくんの幼馴染だな。話が分かるじゃないか」
安心したのも、束の間だった。
葵は、個人的に持ち歩いてる塩を私の座布団の周りの四隅に盛り、おじさんの用意した御札を丁寧に貼り付けた。
そして、私の目の前に、かの殺人兵器を置き、何も言わず私の前に座っている。
私は嫌な予感がして、再びタブレットの上に指を滑らした。
『葵、なにをしているんだ?』
葵は、口裂け女が如くにぃーと笑いながら答えた。
「幽霊さんが、私の作った料理ちゃんと食べて欲しいから、食べるまでここで見守ってあげるねぇ!」
葵の瞳は暗い深淵を連想させるほどハイライトを失っており、葵が今の私以上に恐ろしい存在なのではないかと、戦慄した。
試しに、その結界らしき境界へ手を伸ばしてみると、やはりというべきだろうか、見えない壁があるみたいで外に出られない。
つまりここは、虫を食べなきゃ出られない部屋とかしていた。
「いや、らっくんがいるんだからS○Xしないと出られない部屋とかで良いじゃないか!なんで、バイ○ハザード7の序盤みたいな展開に!?」
奇しくも、楠木楽と同じ事を考えていた高城雅は、ある意味ではお似合いだと言えよう。
しかし、それは似たもの同士同じ運命をたどるという裏付けにしか過ぎなかった。
「幽霊さん、早く食べた方がいいですよ?冷めると、虫っぽさが増しますので。あ、でも幽霊さんにはそっちの方がいいのかなぁ?」
楽しみだなぁ、と呑気に笑いながら私を見つめている。正確には、私がいる空間だが。
まずい、何がまずいって私がこれを食べた後でもヒロインとして成立するかということだ。
「え?ないよね。虫食べた上にヒロイン交代みたいな、アホ展開ないよね⁉」
虚空に向けて、懐疑的な叫びを響かせる。
うーん、どうだろう。
―――私は、冷や汗を一筋垂らした。
意を決して、タブレットに遺書を残す。
葵、お前の好奇心には負けたよ。
『葵、食べるから、ゆうれいさんとか呼ばないでくれ、じみに傷つく。みやびでいい』
「え、いいんですか!‥私、凄い嬉しいよぅ!‥‥えーと、み、みやびちゃん」
『ありがとう、葵。いただきます』
箸が、虚空をひとりでに動いている。
そして、煮物を掴み持ち上げる。
―――ついに、口元の高さまで浮かび上がったそれは持ち主の迷いを表すように、しばらく停止していた。
やがて、虚空に吸い込まれるが如く、浮かび上がっていた煮物が消失した。
次の瞬間お箸が、バイブレーションが如く振動し始める‥。―――ご察しである。
私は冷や汗をダラダラと流し、悪寒と、女子としての最後の矜持と闘っていた。
戻る!戻す!戻る!戻せ!
そんな、限界状況とは露知らず葵は目をキラキラさせて、大口開けて喜んでいた。
余程、嬉しかったのだろう。前のめりになった手が盛り塩を、崩している。
「んぐぇぅ!ヤバイ、足の感触がマジできつい!」
私はあまりの余裕の無さに、リアルな感想をこぼしていた。
葵は、必死に感想を求めてくるがそれどころではない。
――――それに、感想なら。
「どう!みやびちゃん、美味しいかな?どうなの、教えてよぅ!」
無邪気にはしゃいでる姿は本当に可愛らしい女の子だった。
だけど、葵。――――お前は、私を怒らせた。
タブレットに、文字が浮かび上がる。
『葵、ゆっくりアラスカって言ってみて。面白いことしてあげる♪』
「本当!いいよ、いいよ!私とみやびちゃんの仲だもん!えーと、ア〜ラ〜ス〜カ〜ッむぐう⁉」
私はカ〜と開いた口の中に、一番でかいサイズの具材を容赦なく突っ込んだ。
吐き出させせることなど許さないように、全身全霊を持って葵の顎と口を抑える。
「んぅ〜ごうしぃてぇ(どうして?)」
「葵は気付いてないだろうが、さっき自分で結界を壊してくれただろうが。それに、言っただろう―――死ぬときは道連れだぞ!」
何故だろうか、葵には聞こえないはずの声が断片的に聞こえた気がした。
葵は、自分が何やらとんでもない物を作ってしまったらしい事を自覚した。
(ごめんなさい、私皆に酷いことしたね、でも嫌いにならないでねぇ)
葵は薄れゆく意識の中で反省した。そして、朧気に目の前に、女の子が見えた気がした。
その顔は、私と同じく苦悶に満ちた表情だったけど、口から足出てるけど‥‥口元だけは笑っていた気がした。
こうして、誰もいなくなったのである。
お疲れ様でした!
byネテミ(^^♪




