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第18話 日常とひたむきな葵

ネテミです(^^♪

楽しんでいってください!

俺達は一度家に帰って、カバンを置いて着替えてから、葵の家で待ち合わせた。

玄関のインターホンを押すと今回も仁夏さんが対応してくれた。既に檜は到着しているらしい。今回も俺が最後のようだった。

「後で楽君の分のお茶持っていくからね、ゆっくりしていってね」

「そんな悪いですよ、お気になさらず」

「ふふふ、子供が遠慮するもんじゃないわよ?任せておきなさい」仁夏さんは何処かで聞いたことのあるような事を言った。

「あッえと、そういえばおじさんは大丈夫ですか」

「え、お父さんがどうかしたの?」

「いや、あの後何か凄い悲鳴が聞こえたから‥‥」俺は恐る恐る聞いた。

「あー、大丈夫よ。いつものことだから心配しないで。それにバツは昨日で終わったから、楽君は気にしないでね」

「そうっすか、昨日まで続いてたんですね‥‥」

「葵にもきつく言って聞かしたんだけど、誰に似たのかやんちゃな子だから、また迷惑をかけそうなことをしたら私に言ってね?」

「‥ちなみにその場合はどうなるんですか?」

「うん?―――楽君今年何歳だっけ?」

「え、と‥‥17歳ですけど‥それが何か‥」

「ごめんね。それじゃあ今は言えないわ。―――覚えてたら、来年以降に教えてあげるわよ」仁夏さんはその細められた瞳の奥に、妖艶な炎を揺らしながら言った。

俺はなんだか急に大人になりたくなくなった。そのような謎の深淵を覗く権利など、願い下げだったからだ。

どうやら先輩も仁夏さんは苦手みたいで、先程からピッタリと俺の後ろに張り付いていて、俺は亀仙人のようなフォルムになっている。

俺は足早に靴を脱ぎ2階の葵の部屋へ向かった。


「よう、また最後だな楽」

「やっと来たー待ちくたびれたよぅ!」

「そんな、かかってないだろ。それに俺の家が一番遠いんだからしょうがないだろ。何で今日は一度家に帰ってからだったんだ?」俺は言った。

「それはね‥‥もうすぐ分かるよぅ!」

「大丈夫だよ、前みたいなオチじゃねえからよ」

俺は怪訝に眉を潜めたが、コンコンと扉をノックされ振り向くと、俺にもその意味が分かった―――

「皆お待たせぇ。はい、楽君の分のお茶。それと、檜君の差し入れよ」

「うわぁー!凄いぞらっくん!とても綺麗で美味しそうだ!」

「実家が料理系って最強よねぇ!」


―――そこには、檜の店で売られているケーキが数種類綺麗に箱詰めされていた。仁夏さん達の分は?と檜に聞いたら既に別の箱で渡していたらしい。檜はそういう所、気を遣えるのだ。

「それじゃあ喧嘩しないで分け合うのよ?」

「お母さん大丈夫だよぅ。私達も子供じゃないんだから」

「はいはい、ではごゆっくり」仁夏さんは扉を閉めて降りていった。


「それじゃあ高城先輩から選んで貰おうぜ。先輩はどれが良いっすか?」檜が言った。

「う〜ん〜‥。―――良し決めた!私はモンブランにしよう!」

「あ、モンブランが少し動いたねぇ。じゃあ、雅ちゃんがモンブランで‥‥私はレアチーズケーキ〜!」

「じゃあ俺は、ショートケーキにするか」

「良し皆決めたな。じゃあ俺は残ったタルトケーキにするわ」

銘々にケーキが行き渡り、いわゆる放課後ティータイムが開始される。檜の実家がケーキ屋で、そういえば昔からケーキが余るとこうやって誰かの家に集まってたっけ‥‥。俺はケーキを一口食べるとなんだかとても懐かしく感じた。それはここ3ヶ月の時間がとても濃密に過ぎた証だった。

「やっぱり檜のおじさんのケーキは絶品だね!雅ちゃんそっちのモンブランはどう?」葵はタブレットをテーブルの真ん中に出しながら言った。

『めっちゃ美味いぞ!!毎日食べたいくらいだ!』

「だよねぇー!良かったね檜幽霊も大絶賛のケーキだよぅ」

「まあ、高城先輩の口に合ったのなら安心したぜ。俺は小さい頃から食べ慣れてるから、今更感あるけどな」


俺達はすっかり檜の差し入れを平らげた。途中葵と先輩がお互いのケーキをシェアしたり、食べさせあったりしていた。不覚にも俺の中の百合フェチズムがくすぐられた。しかし、そういう事を先輩に気取られると後々面倒くさいので、俺は葵の良い考えとやらを、聞いてみることにした。


「そろそろ本題に入るか‥‥。葵が今朝言ってた良い考えを発表してくれるか」俺は葵に勿体振らずに話せと、促した。

「そうだったわね、檜のケーキのせいで忘れてたわぁ」

俺のせいかよと、檜がこぼすが構わず葵は続けた。

「私は考えたのよぅ‥‥どうして雅ちゃんのお母さんに話を聞いてもらえなかったか―――例えばだけど、私が突然神様になったとするよね?」

「何いってんのお前?」

「頭おかしいんじゃねぇか?あ、元々か」

『葵、一度病院に行ったほうがいいぞ』

例え話でさえこの有様だった。

「ちょっと!そこまで言わなくても良くない?じゃあ、私がテストで100点取ったくらいにしとくよぅ‥。それを学校の誰かが私のお母さんに言っても信じないと思うんだよね」俺達は満場一致で頷いた。ここまで納得感のある例え話もそうそうない。


「凄いムカつくけど今は続けるよぅ‥。だけど、お母さんの知り合い―――例えばあなた達や、お母さんの知り合いが皆そう言ってたらどうかな?信じてもらえるまでは分からないけど、話を聞いてもらう体制にはなると思うんだよね」

「なるほど‥」俺は言った。

「つまりぃこの間の失敗はね‥‥‥」

「おばさんにとってよく知りもしないやつが、いきなり娘さんの事を語り出したから聞いても貰えなかった‥と」葵の先を檜が引き継いで、答えた。

「そりゃ聞いてもらえんわな―――でも、そしたらどうすればいいんだよ」俺は言った。


葵は得意げな様子で。

「簡単だよぅ雅ちゃんと、お母さんの共通の友達に協力してもらえばいいんだよぅ!―――そしてそれは多分、雅ちゃんが知っていると思うよ―――」


確かに理路整然だったし、ごもっともかもしれなかった。葵にしては冴えている。俺は早速先輩に確認するために質問した。タブレットに迷いなく名前が記された。―――まあ、そうなるよな―――。


『裏辻遥 私の友達だ 何度か家に遊びに来たことがあるぞ』先輩は鼻の穴を広げてふんふんしている。よほど、楽しみなんだろうな。遥先輩の気持ちを聞いたときあんだけ喜んでたもんな―――。


「裏辻、さん?聞いたことねぇな」

「そりゃ、雅ちゃんのお友達って事は3年生だろうから会う機会なんてないでしょう?―――でも、この人の名字って裏○みたいでエロいわね」葵は先輩とまったく同じ事を口走る。その先輩は器用に空中でゴロゴロと、笑い転げている。遥先輩‥‥本当にこの人と友達でいいのか?


「遥先輩なら俺が知ってるよ。連絡先も交換したから、コンタクトは比較的に取りやすいと思うぞ」

「お、そうなのか?じゃあ話は早いじゃねえか。今日連絡して、明日にでも話をすれば」

「え、どうして楽が3年生の裏辻先輩の連絡先知ってるの?」葵は素朴な疑問を浮かべた。すかさず、タブレットは文字を映し出した。

『おっぱいだ』

「「あー」」その一言だけで全員を納得させたようだった。違うから!そういう下心的なやつではけしてないぞ!


「先輩は黙っていてください。ただの部活仲間だよ。同じ演劇部員なんだッ!

―――それよりも、連絡を取ったからといってそもそも遥先輩にも信じて貰えるかどうか分からないじゃねえか?何か勝算はあるのかよ」

葵はそこまで考えていたようで、ノートを取り出して説明した。―――その時俺は正直に驚いた。何故なら、ノート一面に試行錯誤を繰り返した跡があったから

だ。


例えば共通の知り合いの人の性格、お母さんとの関係性を場合別にしてさらに―――それぞれに個別の対策がびっしりと書き込まれていた。いったいどれだけ考えてくれたんだと、ギョッとした。

しかも、一番凄まじいのはこのノートのタイトルが、アイディア帳③と書かれていたことだ。きっと葵は、休みの間に俺や先輩のためにこの対策ノートを完成させたのだろう。しかも、恩に着せるような態度を一切出さずに、まるで当たり前の事のように‥‥。

俺は檜と目配せして素直じゃねぇよなと、言外に笑い合う。先輩も生暖かい視線を葵に向けていた。

「ちょっと、そんな気持ち悪い目で見てんなよぅ!ちゃんと話を聞いてなさい!‥‥まったくぅ‥‥‥」葵は照れギレしながら、作戦を語り始めた―――

ネテミでした!

お疲れ様です!

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