九、1早くこの国から逃げろ!
「イチさん何やらかしてたんですか!?」
「何もやらかし……召喚された直後に逃走した!」
「それしかないじゃないですか!!?」
だって殺されると思ったもん! 俺まだ死にたくないもん! 仕方ないもん!!
追手は二人、こちらも二人、現在裏路地目撃者は(恐らく)ゼロ!
振り切るための抵抗なら今ここでやるか!?
いやそんなことをすれば本物の犯罪者になってしまう! 俺はまだなんもしてないし! する予定もないし!
ただ、捕まるのだけは避けたい! 確実に面倒なことになる! 魔王の所行けとか捨て駒される!
「はっ……はっ……だいぶ走りましたけど、イチさん息切れしてませんね……!」
「え? 確かにあんまり疲れてないな……?」
スライムから逃げる時とか初めてこの世界に来た時は凄い疲れたのに。
なんでだろ――
「こちらです! 来てください!」
誰だあの人!? あ、スーツを売ったところの主人だ!
味方かどうかなんて正直分かんねぇがこのまま走って凌げる可能性の方が低い! 行くしかねぇ!
「た、助かりました……」
「いえいえ。それにしてもお客さん、勇者だったなんて。言ってくださればもっと良いものをお売りしたのに」
「俺はお金が欲しかっただけですよ」
それにしても、何故俺を助けてくれたんだ?
「あーそうですよお客さん! こんな張り紙が!」
張り紙? うわ、俺の顔が全面に出された紙だ。
全ステータス1の勇者を探しています。
こんな顔です。
見つけたら一千万!
国が出したとは思えない適当さだ……というか全ステータス1のことを言うなよ公開処刑もいいとこだぞ……!
「うちの所にも国の人が来てこの人を知らないかって言われたんですよ。その場では知らないと言って、嫌な予感がしたので今日は店じまいしてあなたを探していたんです」
「そうだったのか……どうして俺の事を言わなかったんだ?」
「お客さんのプライバシーを守るのも私の仕事ですよ。あなたは何かを隠そうとしていましたから」
国を敵に回した可能性もあったのに、この人……できる!
「ありがとう本当に助かった! どうにかして国の外に出たいんだが……この騒ぎだと当分出れそうにないな」
「それはご心配なく! うちの馬車の荷台に乗ってしまえばバレませんよ」
「えっ、そんな方法で大丈夫なんですか?」
荷台に乗ってバレずに通れるって意外とこの国ザルじゃね……?
やってみないと分からないけど。
「国から出たらそこまで遠くに行かずに降ろしてくれて構わない」
「いえ、ある村に用事があってどのみち外には出るので乗ってってもらっても大丈夫ですよ。国から見えなくなってきたら声かけますんで」
な、なんと……さらにある程度離れたところまで送ってってもらえると言うのか……この人、よりできる!
フィアの方をちら見するとこちらを見て判断に委ねようとしていた。
俺はその提案に乗ることにした!