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六、カミングアウト1回目!?

「ぶっちゃけイチさんが最弱スライムにすらビビる人だと分かったら私の方が? 頑張らなくちゃなー? みたいな? 本当は私よりも強い人について行くつもりだった訳なので後ろめたいなーって気持ちがあったのと私ほら、人見知りなので、話しかけるのに凄い勇気が必要なんですよー」


 この娘を黙らせてぇなおい。さっきから失礼な部分が混ざりまくってんぞ。

 洞窟の入り口にカンテラを返却し何事もなく城下町へ帰りクエストを達成して報酬金を半分ずつ分けてギルドの酒場でずっとフィアに語られてる。今はだいたい夕方くらい。もう一度クエストを受けるにはもう遅い時間だ。


 ちなみに俺が得られた報酬金は飲食店一食分くらいとの事。半分ずつだったにしてもそんなに高くはなかったんだな……初心者向けっぽかったしなぁ。


「ところで、この後イチさんはどうするんですか?」


「俺? 土地勘とかねぇし、どうすっかなー……」


 報酬金は少なかったが、俺にはまだ服を売ったお金がある。それで宿でも……うーん、節約するために野宿も手だな……


「泊まれる場所探しかな。さっさとしないと部屋埋まるし、じゃ――」


「ちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!」



「はぁ!? 一文無し!? スライムすら倒せなくて一文無しって、お前何にも出来ねぇじゃねぇか……」


「うるっさいですね分かってますよ私もぉ!!」


 頭を抱えて机に突っ伏すフィア。

 め、めんどくせぇ。なんでこいつの分まで宿代払わなきゃならんのだ……

 こいつ生活費のためにあの時退かなかったのか……それで今も俺を引き止めてたって訳ね。

 知らんな。宿代二人分とか俺の金も尽きるっての。こんなところで現全財産のうち少しでも他人に使ってられっかよ!



「……てるか? 今日の……」


 ん?

 うっすらと近くの冒険者の噂話が聞こえる。


「あぁ、聞いたよ。この国で全ステータス1の勇者が召喚されたんだろ?」

「その勇者どこかに逃げたらしいぜ」

「顔とか見たやつは居ないのか?」

「今少ない情報から似顔絵を描いている所だと……」


 うわ、やばいじゃん。めっちゃ噂になってますやん。っていうか俺って勇者だったんだ。そんな勇者が全ステータス1とか笑ってくれた方がまだマシだわ……ほら笑えよ! 俺を見て笑えよ!


「ほぉ、全ステータス1……」


 フィアもその話を聞き耳していたようだ。なんか悪い顔してる。

 やば、今日のことを考えると真っ先に疑われる……! そうだ先手必勝!


「フィア、ちょっとこっち来てくれ」


「? はい」


 変に俺の噂を流されるのも困る。

 つまり、俺がここでするべき行動は……


 冒険者ギルドの裏路地、フィアを突然壁際に押さえつける。


「ふぇ!? イ、イチさん!?」


「俺が全ステータス1の勇者なんだ…! 頼む…! 宿代払うから黙っててくれ…!」


 こんなカッコつけて「俺のステータス全部1だぜ」何て言うもんじゃねぇなぁと思いつつ。何とか了承を得られないかドキドキしつつ。



「え? イチさんが勇者?」


 あ。

 墓穴掘ったなこれ。


「ぶふっ」


 こいつ今吹き出しやがった!


「あはははは! い、いやいやいやいや嘘でしょ!? イチさんが勇者とかありえないでしょ!」


 笑ってくれた方がいいとか言ったが……前言撤回だバカヤロー!


「笑うなぁーーー!!」


 色々あって叫びまくって走り回った一日だったけど、この時が一番大きな声だったような気がした。




「じゃあ、お金要らないです。イチさんと相部屋にしてもらいましょう」


 ……は?


「はぁぁぁぁぁ!!?」


 笑いすぎて涙が出てきたと目元を擦るフィアを目の前に、この日の最大音量がまた更新された。

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