三十六、1際大きい敵!
「〈トーチ〉」
シャーレさんが魔法で明かりをつける。ほんの数メートルしか潜っていないのにとても暗く感じた洞窟が淡い橙色に照らされる。
洞窟内は前に薬草を採りに行った洞窟よりももう一回り、二回り大きくて明かりがなかったら天井も見えなさそうだった。
複数の足音がコツコツと響く。それ以外の音はほとんどしない。底の見えない静かさ、暗さ。まるで深海みたいだ。
「目標の魔物が近くにいますね」
先頭を歩いていたシャーレさんが立ち止まる。
目標の魔物、それは洞窟内に住むゴーレムだ。
とてつもない破壊力があり、岩でできた頑丈な体を持つ物理に対して攻防とも得意な魔物。RPGの世界なら定番とも言えるモンスターだ。
「フィア。ゴーレムに対して火は有効なのか?」
俺の問いに対してフィアは軽く首を振る。
「水とは違って完全に威力を殺される訳ではないのですが、燃やせる部分がないので継続的なダメージなどはあまり期待できないかと……」
「分かった」
ダメそうだな。俺がナイフで頑張るしかないか。
最悪素手の方が破壊しやすいかもしれんが。
――――ズシン。ズシン。
地響きが鳴る。洞窟内で音が反射するからか余計大きな音に聞こえる。
ゴーレムの足音か。
「ここまでの道のりに別れ道が複数あったので囲まれにくいとは思います。お願いします」
そう言い終わりながら俺らの後ろ側に回ってくると、動くこと自体が信じられないほど大きな体のゴーレムが闇の中からゆっくりと現れた。
「行くぞ!」
俺がやることは敵からの注目を集め後衛への負担を減らすこと!
故に……目の前へダッシュだ!
ゴーレムは拳を振り下ろし、洞窟が崩れるんじゃないかと思うくらいの衝撃を起こした後、ガラガラとけたたましい音を立てて地面から拳を引き抜いた。
それは、重機がほとんど抵抗もなく家を解体したり、エスカレーターに何かが巻き込まれても何も起きていないかのように作動し続けているような、無機質さを感じた。
うおおおおおお怖ええええええ!!
いくらステータスが高くなっているとはいえ俺の全身以上の大きさの拳が潰しに来るんだぜ!?
当たったら地面に埋まって窒息……ありえる!
そうじゃなくても衝撃で気絶するかも……!
「〈ファイア〉!」
「〈スピードアップ〉!」
フィアとジェーンの支援を受ける。
火の玉は難なくゴーレムにぶつかるが、フィアの言っていた通り大したダメージになっていなさそうだった。
ジェーンの魔法のおかげで少し身体が早く動かせるようになった。
決めに行くぞ……!
再度拳を振り下ろしたゴーレムの攻撃を躱して懐に潜り込む。
「喰らえ……一撃!」




