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三十五、入る前にもう1枚!

「お待たせしました。薬屋及び火口案内人のシャーレです。よろしくお願いします」


 シャーレさんが帰ってくると改まって自己紹介になった。


「案内人、だったんですね。俺は……イチ。俺の後ろにいるのはフィア」


 軽く会釈をして仲間の紹介をする。

 背中でフィアはこくりと会釈だけ。愛想がないというか……俺と喋っている時のテンションはどこへやら。


「私はジェーンと言います。よろしくお願いします」


 ジェーンは丁寧にお辞儀をする。

 前から少し思っているが、ジェーンは何かと品が良い。お嬢様育ちだったんだろうか?


「では、早速行きましょうか。先に言っておきますが、私は戦闘能力はほとんどないのであしからず」



 火口への入口は板での封鎖や看板の警告がたくさんあって、自然のものが見当たらないのも相まって廃墟のような不気味な雰囲気だ。


 シャーレさんが入口の鍵を外し扉を開ける。中に入ると先程までの多少整備されていた村の風景とは変わってゴツゴツとした岩肌が広がっていた。

 村まで登っていった道よりも険しそうだ。本当の自然には道と言えるもの自体ないんだな。

 火口って事は……穴に入っていくのか。洞窟みたいな感じなのか?


「溶岩とか大丈夫なんですか?」


「今の時期は大丈夫だね。それじゃあ、入る前にこれを渡しておきます」


 また紙?

 全員に二枚ずつ渡された。


「ワープの紙? ……とこれは?」


「それは〈ワープ〉の紙とは別物ですね。〈テレポート〉の紙と言います」


 テレポート……? ワープとどういう違いが? ニュアンス的には両方とも変わらないと思うけど。

 ワープの紙には「ゴウチ村」、もう一つのテレポートの紙とやらには「メオメ国」と書かれていた。


「〈ワープ〉はイメージすることが大事だとは話しましたよね。それとは逆に〈テレポート〉はイメージしなくても使えるんです」


「つまり、使用者の知っている情報に関係なく目的の場所へ行けるという訳ですね」


 ジェーンが補足してくれる。シャーレさんはそれに頷いて肯定した。


「そうです。〈テレポート〉は予め移動する場所を設定しておく必要がありますが、〈ワープ〉と違うのはそれくらいで、使う時は〈テレポート〉と言うだけです」


 なるほど。

 じゃあこれはメオメ国に行くって訳か。俺が召喚された国の名前。

 正直これを使いたくはないな。


「〈ワープ〉の紙はこの探索の緊急避難先、〈テレポート〉の紙はこの地域からの緊急避難先です。緊急事態になったら迷わず使ってください」


「了解です」

「分かりました」


 いつでも使えるように紙を折りたたんでポケットにしまう。

 使わないことを祈りながら。

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