三十二、1目で分かるすごい村!
「ようこそ、ゴウチ村へ……大丈夫ですか?!」
男性の村の人が出迎えてくれたかと思うと、ハッと少女を見て手を貸そうとしてくれた。
「いえ、どこも悪くないんです。えーと、迷子だったみたいで……」
迷子……と繰り返したあと少し待っていてほしいと言ってから奥の建物に入って行ってしまった。他の住民の雰囲気は一般人というよりも、研究施設だとかの助手のような少なくとも何かが長けていそうな、知的そうな人ばかりだ。
小走りで先程の男が手に何か持って帰ってきた。紙のようなものを持っていた。
「あ、あれ……〈ワープ〉の紙じゃないですか?」
フィアがこそりと俺の耳元で話しかける。
ワープの紙?
「今は眠っているみたいですから、起きた時に渡してあげてください」
「ありがとうございます」
不思議に思いながら紙を受け取ると男は説明を始めた。
「これは〈ワープ〉の紙と言います」
「ワープの紙?」
隣にいたジェーンが疑問を抱く。俺も正直良く分かっていない。
「はい。この紙に自分の行きたい所を思い浮かべながらその場所の名前を書き、『〈ワープ〉』と唱えるとその場所へ一瞬で行けるという物です。うちの研究所で開発しました。逃走用や移動用にと、よく発注されるんですよ」
「えっと、この子はそういう魔法とかはまだ良く分からないかと……」
続けてジェーンが不安に感じていることを口にする。
「大丈夫です。元々魔力が少ない方や魔法を得意としない人向けに開発していた物なので。子供や剣士の方でもこの紙に行き先を書けば問題なく使えますよ。魔法を禁止されたり等状況によってはダメかもですが」
「それは、字が書けないと使えないのでは?」
ふと疑問に浮かべたことをつい言ってしまう。
この世界の識字率だとかは分からないけど、少なくともメオメ国の城下町では店の名前や張り紙に字は書いてあったから言う程低くはないと思うが……
「あー、正直言って字は何でもいいんですよ。大事なのはイメージすることなので」
例えばですね……と言いながら紙に何かを書く。
すると紙を見せながら体ごと横を向いて、
「こんな風に『3歩先の場所』をイメージして絵なんか描いて……〈ワープ〉」
と言うと男は……紙に人を描いて、その横に丸が三つ、その場所へ向かうように矢印を添えた絵を見せた後、魔法を唱えるとその通りに三歩先の位置に立っていた。
代わりに紙が男が元いた位置に数秒留まった後にサラサラと砂のようになって消えてしまった。
「他にも、書く時文字を暗号にしたり、自分にしか分からない言い回しで書くとかで、行き先を分からなくしたり出来ます」
なるほど……本当に誰にでも使えるって事だな。
ワープの紙か……軽い説明を聞いた限りだとこれって、もしかして俺の世界に帰ることができるんじゃないか?
「これって……異世界とかその……実在しない場所に行けたり?」
「……はしないとは言えませんね。そういう事を浮かべて使った人は帰ってきたことありませんから……」
うぇ……これで帰るのはリスキーすぎて怖いな……
一通り俺たちの疑問に応えると男は奥の施設へ戻っていった。




