三、1人目の仲間!
って訳で何とか金を増やす方法を探したのだ……が……
「やーっぱこれしかねーのかなぁー……」
クエスト受けて即金手に入る冒険者ギルドの前に俺はいた。
どっかの店とかに働かせてもらうのはダメだ。王様が拠点付近にいたりするのも嫌だし、俺は一番最初に王様が言ってたことは忘れてねぇからな。魔王の手から守ってくれとな。つまり一番安全な国ジョサイ国は最も魔王の手から遠い国!
魔王がいつ来るか分かんねぇところでビクビクと働いてられっか! 即金だ即金!
冒険者ギルドは登録とか別に必要なく年齢性別国籍問わず働ける場所を! って感じで作られたらしいってのが入口付近の看板に書いてあった。 そんな訳で特に必要な物もお金も要らず、クエストを受け、成功したらお金をゲットっていう単純な方式だ。報酬は既にギルドが依頼人から前借りでもらっており、成功したら報告に来ないと個人依頼で報酬を直接、とかでもない限り受け取れないらしい。
ただ、どれだけ簡単なクエストでも魔物に遭遇したら終わりだから仲間は必要だ。
一番安全そうな「薬草採取」のクエストの紙を手に持って仲間を探す。
「今さら薬草採取? 嫌だね」
「わりぃ、小銭稼ぎは別の奴に頼んでくれ」
「護衛しろって言うのかぁ新人よォ」
強そうなやつは総じて手伝ってくれそうになかった。そりゃそうだよなぁ! ベテラン狩人が下位クエストなんてそうそう受けないもんなぁー!
「あ、あの」
「はい?」
振り返ると明らかに見習いっぽい魔法使いらしき娘がこちらを見ていた。
髪は元の世界でも時々見かけた茶髪で少し長め。瞳の色は緑。どう見ても俺より年下だし、身長も外見年齢にしては低いんじゃないか?
……弱そう。やっぱ簡単なクエストじゃ弱い人しかやらないんかな……って、俺の今の服装も見習い同然だった。髪はボサボサ、服装も新品とはいえ安っぽいし、もうちょい見栄張って高い買い物でもしとくべきだったか……
「わ、私も、そのクエスト受けたいのですが……っ」
あ、そーか。俺がずっとこの紙持ってっからこの娘クエスト受けられないのか。それは悪いことしたな。
「良ければその、一緒に行かせてはくれないでしょうか!!」
ま、まじ?
傍から見れば新人同士のパーティ結成現場。暖かい視線が逆に断りにくく……!
「あ、あぁいいぜ。ただし」
「ただし?」
「……足を引っ張るなよ」
甘いなぁ俺! この娘のこと守れないのに!
条件つけて断ろうと思ったのに……!
ちくしょう!! 後で事情説明だ!!
周りの暖かい目で逆に俺が冷や汗かいてるよ!
「は、はい!」
あーあもー、元気な返事しちゃってぇ〜。
申し訳ねぇ……
「あの、イチさん!」
「な、なんだフィア」
「どうして薬草採取のクエストを? イチさん、強そうな雰囲気をしているのに……」
イキって強そうな振りしてるだけだよ! とは言い出せず。
「一番楽そうなクエストだったからだよ」
この娘はフィアって言うらしい。初級の魔法使いで、使える魔法は〈ファイア〉のみ。それでも遠距離魔法だ。最も、それが一番よろしくない。それじゃあ必然的に俺が前衛じゃねぇか! 最悪誤射で死ぬ……!
不思議そうな顔でこっちを見ないでくれ……!
結局フィア以外の人は仲間になってくれなかったしいくら最低級クエストだろうとモンスターが出れば俺は死ぬんだぞ! 出会って死ぬ可能性が高いなら出会わないに越したことはない!
自分の命に加え、この娘の命も背負っている気分だ……
俺も駆け出しだが、フィアはこれから冒険者として馳せていくつもりの子だ。ここで冒険者人生を終わらせてしまうのはあんまりだし、そうなったら俺だって気分の良いことじゃない。
っと。ここが、
「ここが薬草が良く生えている洞窟か」
俺の初冒険の舞台か。