二十九、1人もまともな奴が居ない連中!
「ぐあっ!」
「うぐぇっ!」
「ごはっ!」
事の発端の三人組は寝てろ。
ナイフで切りつけたら真っ二つになって死んでしまうだろう。だから拳だけではっ倒すことにした。さすがに人のそんな死に様は見たくない……
「まっ――」
長老らしき男の胸を突く。勢いよく吹っ飛ばし木の幹に激突する。多分死んでない。
ここまで雑魚戦。ここからも雑魚戦だ。
逃がさねぇぞ。一人残らず!
前方に蹴りすぐに右を殴る。少しバックステップして左に肘打ち。右から来た相手をアッパー。
人を殴る感覚はまだ慣れないな。こんな勢いよく殴ることなんてないから。ヒリヒリするような気はする。
フィアたちとの距離が心配だ。もう少し下がろう。
ドロップキックをしてきた奴がいたから即座に腰を捻って相手の足を掴み、そのままぐるっと回して来た方向に投げ返す。お、別の奴にも当たったみたいだな。
そろそろ立ち向かってくる奴は減ってきたな。この位実力に差があると思ったらそうそう来ないだろ。
「――――っ!」
バッと振り返る。ファイアウォールの火の明かりが付いているままだったから油断した!
フィアは杖を向こうに向けたまま、ジェーンは座りこんで動けなさそうな雰囲気だ。この前の動けなくする奴か!
「おっと動くな!」
狂気的な笑みを浮かべた男がファイアウォールの火の揺れと共に現れた。
そいつは……そいつは小さい女の子にナイフを突き付けながらゆっくりと歩いてきた。
「やめて……やめてよ……」
風の音にも掻き消されそうなか細い声で助けを求めている女の子。それを覆い隠すように男は大声で交渉を仕掛けてくる。
「お前らが俺らの言う通りに動けばこいつはどうもしねぇ。だがお前らが何か一つでも! 変なことをしたらすぐに喉を掻っ切る!」
くそ、色々とよくある場面だが実際に直面するとどうしたらいいか全くわかんねぇ! 頭が真っ白だ……!
「イチさ……」
フィアがこちらに泣きそうな顔を向ける。俺だってどうしたらいいかわかんねぇよ……実際どうしたらいい……?
俺に魔法が使えれば何か出来るかもしれないが……まだ習得してない。
目に見えないくらい速くなんて動けないし……素早さカンストでもできんのかそんな事。適当に見積っても50メートルくらい離れてるだろう。
「〈シールド〉」
ジェーンがボソッと何かを呟いたかと思うと男と女の子の少ない隙間から薄い光の壁が勢いよく現れた! ぼんやりと光っているそれは男の腕を弾くほどの勢いで地面から現れ、男と女の子を引き離した!
今しかない!!
「でかしたジェーン!」
男がその光の壁を回り込む前に……っ!
辿り着けぇっ!




