二十六、世界に1人の勇者様!
にしても、古い家だな。さすがに村の一番奥にあるだけあるかもしれないな。案内してもらうのは良かったが、意外と歩くし、坂も登るとは思わなかった。ここから村の全貌が見える程だ。
こんな場所に家があるのなら旅人が来る事に真っ先に気づくのもありえない話ではないかもしれない。婆さんだったし、向かうのに時間がかかりそうだが。
婆さんの家の中に入るとそれはもう見るからに占い師、という雰囲気の少し暗い部屋の中心に水晶玉の置かれた小さいテーブルがある。
多分、向かい合って水晶越しに占われるタイプだと思う。
「ちょっと待ってておくれ」
そう言うと婆さんは奥に入って行った。
「占い魔法は一応高度な魔法ではありますよ。扱える人も少ないはずです」
「占い魔法?」
「はい。魔力を使用する占いは占い魔法と呼ばれます。基本的に占いと言えば魔力を使用しない方が多いですね」
へー……どの要素に魔力を使っているんだろう。
未来予知みたいな魔法だったりして。
「フィアも占ってもらっとけよ。俺の結果と比べようぜ」
「良いですよ。イチさんよりも良い結果が出ても文句は言わないでくださいねー?」
なんで能力とかどうしようもない部分で勝負みたいなこと仕掛けてくるんだ……運も実力のうちって言うからか?
「はいはい、準備できたよ」
奥から先程とは違う、占い用の正装であろうローブに着替えた婆さんが現れる。こちらの方をチラと見るやいなや水晶に両手をかざして占いを始めた。
「まず、人というのは十二の傾向にある。性格や運命を大まかに決める部分よ」
十二。星座の数と一緒だ。となると、異世界とは言ってもこの世界も一年を十二月で表しているかもしれない。
「あんたは……ぬおぉ!?」
えっ。何?
「い、一番星!?」
一番星……? 一番目の星座的な位置かな? そういうことなら十二月説は外れか?
「一番星……本物! やはりあんたは本物なんじゃな! 本物の勇者様!」
「一番星というと、星の下の世界に、一人しか、いえ勇者しか選ばれない特別な位置ですよ!」
御伽噺だけの話だと思っていましたと付け加えるフィア。
これは……勇者を探してたっぽい婆さんには悪いけど面倒くさそうな……
「あー……えーと、俺が勇者だっていうのはあまり口外しないようにしてもらえませんか?」
ぬ、と少し唇を曲げる婆さん。
そ、そりゃあそうだよな。ずっと探してたよな。あの感じ。
でも俺、今は国に追われてるしなあ……
「いや、大丈夫だよ。わしが言わずとも、その内世間に知れ渡るだろう」
う、安全な国に行きたがっている自分が恥ずかしくなりそうで嫌だ……
「わしが勇者を見つけるということはそれほど重要ではない。わしの孫を連れて行ってほしいんじゃ」
孫?
「なに、わしが見つけたと唾をつけたいのではない。孫を占った時、一番星の近くの星だったのじゃ。十二の星座を外れた特別な星。その星に従わせるのが世界のためにも良い結果に繋がろう」
なるほどな。そういうことなら……良いのかなぁ。
今の俺の能力なら大丈夫か。あの魔法のクスリを貰ったら正直、俺が足を引っ張るかもしれないが……




