二十一、1人も正気な奴はいないのか!?
え、え、え!? えええ!?
こ、こんなんありかよ! ふざけんなよ……!
「女になってる――!?」
深夜、静かに宿屋の一室のドアの鍵を開ける人物が三人いた。彼らはお互いを親友と呼んでいて、それなりに仲の良い三人組だった。冒険する時も窮地を共にする時も、そして、犯罪に手を染める時も。
三人組の一人は宿屋を経営していた。その日に訪れたパーティの編成を見て合格なら通す。先に人を通した場合や、男ばかりのパーティは満室だとお断り。出来る限り女の多いパーティを通す。
この日は男一人と女一人、それも男女共に若いパーティだった。女が十代の容姿な時点で通すことは決めたが、男がまだ経験の浅そうな二十代な所も更なるプラスポイントだった。
すぐに親友たちに連絡を通し、そして宴が始まる。寝ている無防備な冒険者二人を呪文で陥れ貪る。宴。
スペアの鍵でドアを開け、男女に《ストップ》の呪文を唱える。こうすると動きたくても動けなくなる。それだけでも十分だが、二人に《ショック》を与える。寝ている状態でも目を覚ますほどの衝撃。しかも《ショック》は身体が麻痺したかのような状態にする呪文。二つの身体を動かせなくなる呪文で完封。ここからは目を覚ました男女をひたすら絶望に叩き落とし嬲るのだ。
男にあるクスリを飲ます。
それはなんと――――
「女になってる――!?」
異性の姿にするクスリだった。
「イ、イチさん! ひっ……!」
ど、どういう状況!? なんで女に!? いやもういっそ後にしちまえ!
まず身体は動かない。何かに縛られてるとかじゃなくてピタッと身体が張り付いているみたいに動かん。空中に固定されてるみたいな感覚。
周りには男が三人……げっ、宿屋の主人までいやがる。グルかよくそっ!
フィアの方に一人迫っていてフィアは怯えている。俺のところには二人。しかも身体は女になってる。最悪の状況じゃねぇか!
「おはよう。残念だけどここであなたたちの冒険は終わってしまいまぁす!」
狂ってやがる……! なんだコイツら!!
どうする……何が出来る!?
「んー、若いねぇ〜。キミ、まだ何か出来るんじゃないかって思ってんだろ」
「無理。何も出来ない。呪文の解除にはかなりの高魔力が必要なんだ。お前は前衛職だから無理だろ。何も出来ねぇんだよ、何も! あの子を救うことだってな!!」
なんだよこの理不尽……! 理不尽野郎!
力で何とか無理やり動けねぇか! ぐぅぅぉぉぉ!
「おいおい、そいつ前衛職だったのか? 大丈夫かよ」
「大丈夫に決まってんだろ。あのクスリの副作用は得意ステータスと不得意ステータスの逆転だ。未熟な冒険者ならどうせ大したもんじゃねぇ」
「なるほどなー。でもあの気迫見ろよ。今すぐにでも動きだしそうだ。ま、動けんだったらもう一回呪文かけりゃあいっか」
目の前でボソボソとヒントを喋りやがって……! わざと一度解かせて反撃させるんだろ! 嫌な奴らだ!
だけどそれが最後にできる抵抗なんだろ……調子に乗ったことを後悔させてやる!




