二、1目散に逃走じゃい!
HPMP攻撃防御魔法素早全部1!?
ありえねぇってこんなこと――――
「ぜ、全ステータス……1……?」
王様の出したその呆れを通り越して驚愕した顔から小さく呟かれた。
ハッ!?
あ、あれだけイキっておきながらこ、こんなステータスっていくら異世界召喚直後でも極刑もんだぞ!?
「マジかよ」
「こんなことありえるのか?」
「あんな数値、見たことない」
兵士の失望や驚きの混じった声が耳に突き刺さる。
逃げ……る!!
「あっ! お待ちを!」
側近が追いかけようとするが例えステータス1でも死ぬ気で逃げればこっちのもんよぉぉ!!
俺はまだ死にたくないからなァァァ!!
城の構造が分からねぇ。ちらっと見える窓からはそこそこ高所っぽく見えて飛び降りる選択はHP1の俺的にNO! というか前世から的にも抵抗大あり!
うわあああ兵士に見つかりませんようにぃぃぃぃ!!
た、た、た、助かった。
兵士は俺を見失ったっぽい。恐らくまだここは城内だが今は茂みの中。何とか見つからないでいるようだ。しかし、召喚されたこの姿はスーツのまんまだ。ぶっちゃけすげぇ目立つからこのままだと行動がしづらい。また見つかる可能性が非常に高いのは勘弁願いたい。
どっかで脱ぐ必要が……いや脱いだらそれこそ人前に出れんな……
そうだ質屋! さっき日本語通じてたし城下町に降りて質屋探して売るしかねぇ!
足がつくがこの際致し方なし!
よーし、それで身支度整えて……あとはどうする?
生きていく手段を探さなくては……
「貴族用の服ですか? 良いんですか、こんな上質なものを売って一番安い服なんかにしちゃって」
「そっちの方が都合が良いんだ、頼む」
とりあえずまず前世の服は売っちまうことにした。それから安物の服と交換。
「そうだ、主人。一番安全な国って知ってる?」
「一番安全な国ですか? そうですねぇ、ここから東にずぅっと進んだ所のジョサイ国ですかね?」
よし、最終目標はそのジョサイ国に行くことだな。
「あ、あと……その、ステータスってどうやって上げられるんだ?」
「ス、ステータスの上げ方ですか? お客さんやっぱり貴族の……」
「ち、違うんですよ! あのそのえーと、最近ステータスの伸びが悪くてぇー……」
「それでしたら、そうですね。やはり基本としてはトレーニングはしてらっしゃるのでしょう?」
トレーニング? トレーニングなんかでステータスって上がるのか?
いやまぁ、そう言ってるからそうなんだろう。
ト、トレーニングなんてまず学生時代の頃からやってこなかったのだが……
「それから魔物との実戦強化。冒険者たちがトレーニングと合わせて行ってる手法ですね。魔法使いなどは魔法書の購入による勉強とか」
魔物と戦う? 却下だ却下。全ステータス1の俺じゃ雑魚にすら勝てないぞ。
けど、魔法書で勉強ってのはありだな。魔法が使えたら遠距離で戦えるし、それならHP1でも平気かもしれない。
MPが1じゃなかったらな!
「手っ取り早いのは?」
「入信等してないのでしたら神を信仰するか悪魔を崇拝するのが一番早いのでしょうが……両方ともそれなりの制限が掛かったりするので私は勧めませんね」
そ、そりゃあどっちも嫌だな。
「レアアイテムを使用することでステータスを底上げするとか……そもそもの入手難易度が高いですが」
宛もない。
「武器や防具を新調するのはどうですか? ステータスって各カテゴリーの総合力みたいなものですし――」
「それだぁぁぁぁ!!!」
武器、防具入手で少しでも安全な旅を送れるようにするしかねぇ!!
あとはそれらを手に入れることとかジョサイ国まで一人で行かず誰かを雇ったりするお金を集める方法だな……!
目標が明確になってきてやる気が湧いてきたぜ!