第六話 金をゴミと間違える男
少し村を歩き、穏和そうな老人に声をかけた。
「おい、面白いものを見せてやる」
あのハゲと似たような性格なら、早い段階でこの話をなかったことにするつもりだ。
「なら、見せてもらおうかのう」
「まず、俺の両腕が折れてるのは分かるな?」
「こりゃ酷い。指も腕も大変なことになっとるぞ。急いで手当せねば」
と言いながらも焦る様子も、手当するつもりもないようだった。頭のネジが抜けてるように見えるとはいえ、ハゲより随分と物分りがいい。
「悪いが俺の上着のポケットから小瓶を一つ出してくれ」
老人は文句一つ言わず俺のポケットから小瓶を出した。
「これは?」
「それを実際見せる。フタ開けて俺の腕に三滴垂らしてくれ。指は二滴ずつ頼む」
指示通りではなかったが、老人は言われたとおりに両腕に四滴ずつと指に二滴ずつ垂らした。
「しっかり見ておけ」
そう言ってしばらく経たった。途中「何も起こらんぞ」と言われたが、俺は「黙って見てろ」と言い、見させ続けた。
数秒後、俺の腕と指が元通りになった。拳を握って開く行為や、腕を曲げ伸ばしして折れた骨が治ったことを見せる。
「おお、どんな仕掛けがあるのかね?」
「仕掛け、と言うならその液体だ。怪我をした箇所に垂らせば治る」
「使ってみてもいいかね?」
勝手に使おうとする老人の手から小瓶を奪い取りポケットにしまう。
「ダメだ。効果は見せた通り。まだ未使用のものが三つある。使いたいなら売ってやる。欲しいなら金を払え」
「そうきたか」
そうきたか、って何だ? どういう思考回路してるんだか。タダで貰えるとでも思ったのか、この老人は。
「いくら払える?」
「わしのような老いぼれに出せる額などこの程度よ」
見たこともないシワだらけの紙を六枚渡される。
「……ゴミ?」
「違うわい。あんた、お金を見るのは初めてなのかい?」
「ああ。これは使えるのか?」
「どこでだって使えるはずだ。大事に持っとくがいい」
俺は六枚の紙を握りしめ、老人に小瓶を一つ渡した。
「使ってないとはいえ量は多くない。大事に使え」
「本当に助かるわい。村に来てくれてありがとう」
老人に感謝された。嫌な気分ではないが、良い気分にもなれなかった。
本来は人を大勢集め、一番金を出した奴に売るつもりだった。もっと金が手に入るはずだった。
なんとも言えない気分ではあったが、とりあえず二つ目の目的である金は手に入った。
俺は一旦家に帰り少し眠った後、リュックから懐中電灯を取り出した。必要なのはこれだけだろう。
盗まれて困るようなものは残り三つの小瓶と懐中電灯だけだ。他は盗まれたところで何とも思わない。俺は懐中電灯と小瓶、お金のみを持ち、家を出た。




