第五話 村長に言いつけてやるからな!
どの家も生えてる木を避けるようにして建てられている。木を切り倒したような跡もないことから、きっと外から持ち込まれた木で建ててるんだろう。
家は二十六軒。どれも小さいが一軒だけ他より少し大きい家がある。多分あれが村長の家だ。
この村の人数は、十九人程度だろうか。しっかりと数えてないし数える気もないが、恐らく家の数よりも人の数の方が少ない。逃げ出した人が何人かいたのだろうか。
一通り村を見終えた俺は暇そうにしていたハゲ男に声をかけた。
「今から人集めろ。面白いもの見せてやる」
「な、何言ってんだよ。こっちはお前みたいな奴に構ってる余裕ないんだ」
「ならお前だけでいい。面白いものを見せてやる」
「……ははっ。お前みたいな頭の弱そうな奴が面白いもの、か。もしつまらなかったら、分かってるよな?」
「知るか」
俺はまず両腕をまくった。そして通常とは逆方向に曲がる右腕と折れた左腕を見せた。
「折れてることは分かるな?」
「ん? あー、いやぁ分からねえな。実際触ってみないと」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら俺の腕を触ろうとしてくる。
「気の済むまで確認しろ」
そうは言ったものの、このハゲが嘘をついてることは分かっていた。折れた腕を動かして悪化させようとしていることも容易に想像できる。全て予想の範囲内だ。
外から来た者を嫌うこの村の人間ならやらないわけがない。
ハゲが折れた箇所を掴み雑に扱う。
叩く。引っ張る。殴る。曲げる。強く握る。蹴る。踏みつける。
何度も何度も息を切らすまで続け、その後ハゲは息を整えながら俺の指を十本全て折った。
「実際に折ってみないと分からなかったからなぁ。謝る気はねぇからな」
「別に。その代わり手伝え」
「は? それが人様にもの頼む態度か?」
「じゃあ別にいい」
「舐めてんのか? お前がちゃんと頼めば俺は手伝うつもりだぜ?」
「手伝わなくていい。黙って見てろ」
「態度が悪ぃんだよ。口の利き方気をつけろよ? 俺がそこんとこ矯正してやる。そんなんじゃどこ行っても相手にされねぇだろうからな。ありがたく思えよ」
相手をするのが面倒になった俺はハゲを無視してその場を離れ、まともに話を聞いてくれそうな人を探そうとしたが、
「おい、待てよ。俺はお前のために言ってやってるんだぜ? 土下座してお願いしますって言うとこだろうが」
と、ハゲが俺の肩を掴んで、土下座を強制してくる。
俺のやりたいことをさせない。それどころか色々と押し付けてくる。正直このハゲにはもう関わりたくない。
「俺に関わるな。これ以上付きまとうなら村長に言いつける」
「っ…………」
大の大人の俺がやるにはダサすぎる発言だったが、効果は絶大なようでハゲは何も言わずどこかへ去った。




