第四十七話 物のせいにするな
俺は銃口をデブに向ける。
ゲームとは言ったものの、ただ狙った場所に撃つだけのことだ。それに、どこに当てようと景品はない。
「フッ、当たんのか?」
煽り気味に言ってくる。
「当然」
そう言いながら一発放った。弾はデブにかすりもせず、頭のやや上を通った。
惜しい。もう少し下だな。
銃口をやや下に向け放つ。弾はデブの近くに転がっている靴に当たった。当然だがデブは無傷だ。
ここまで下に向けたつもりはない。脳天を撃ち抜けなくとも体のどこかには当たってもよかったはずだ。
「銃がおかしい。壊れている」
「両手でしっかり構えてないからだろ。付けてやるからそいつ寄越せ」
ホルスターを奪い取ったおっさんは俺の背後に回った。
「私の事は気にするな。撃ってろ」
「尻を触るな。気が散る」
「触ってねえよ! 付けてやってんだから黙って撃ってろ」
そう言われても集中できない。今撃っても恐らく当たらない。
……なんで泣いてるんだ?
ふとデブの顔を見ると、涙を流してガムテープ越しに叫び声を上げていた。はっきり言って無様だ。醜い。見なければよかった。
「おい、まだか?」
「もう大丈夫だ。あ、先言っとくが銃は使う時以外仕舞っとけよ。人目に晒すのは不味いからな」
「分かっている」
両手で構え銃口をデブに向ける。弾は残り二発。外せないのに、こんなことで本当に当たるようになるのか。
試し撃ちするような感覚で一発撃つ。が、やはり当たらない。
「……何故だ?」
「撃つ時ブレてんだろ、多分」
「残り一発。手本を見せろ」
俺は銃をおっさんに投げて渡す。受け取ってすぐおっさんは銃口をデブに向ける。そして片手で構えたまま撃った。
弾がデブの右目を貫く。撃たれる前まで騒いでいたデブだったが、声を出さずに苦痛の表情を浮かべている。
右目から血がとめどなく流れている。銃弾がどこまで奥へ入っていったのかは分からないが、何もしなければもうすぐ勝手に死ぬことは確かだ。
「狙ったのか? それとも偶然か?」
「そりゃ当然狙って撃ったに決まってんだろ。完璧な手本だっただろ?」
「手本としては完璧なのかもしれないが、確実に即死させられる脳天を撃ち抜くべきだ」
「縛ってんだから別にいいだろ」
その紐は本当にデブを縛れているのか? 切り込みが入っていたり、緩くなっていたりしないか?
口に出そうと思ったが止めた。無言でおっさんから弾の入っていない銃を受け取る。
ホルスターに銃をしまい、床に転がっていたリュックを手に取った。それから冷蔵庫を開け、食べられそうなものをリュックに詰める。
「おいおい、何やってんだ?」
「食べ物を貰っているだけだ」
「いや、そりゃさすがにダメだろ……」
「死人が食事するとでも思っているのか?」
「確かにしないけどさ」
「なら口出しするな」
食べ物を適当に詰め、クローゼットからも何着か服を詰めるが、量が多いせいかチャックが閉まらない。
上着を二着放り投げ、シャツとズボンだけをリュックに詰めた。
あとはナイフがあれば助かるんだが。
どこを探してもナイフは見つからず、仕方なく台所にあった包丁を手に取った。
「料理でもするのか?」
「まあそんなところだ」
「……っ! おい、気を付けろ」
おっさんが突然ナイフを手にして身構えた。何事かと見ると、デブが立っていた。
縛っていた紐は解けている。表情はよく分からないが、恐らく怒っているのだろう。叫び声を上げた。
「ゔあああぁぁぁぁぁ!」




