第四十六話 捕縛
「入れ。あんたの作戦のおかげで案外早く片付いた。まあ、あんたのせいでこうなったとも言えるけどな」
息ひとつ上がっていない。それに衣服には目立った汚れも怪我もない。
俺の心配を返せ。無駄に頭を使わせるな。
何故時間がかかったのか疑問が浮かぶ。
「早く片付いた? 大分時間がかかったようだが」
「は? まだ三分も経ってねえのに? これでも遅いって言うのか?」
「何分経ったかは数えていないが、三分以上経っていたのは確かだ」
「あー、そりゃあんた暇だっただけだろ。何もやることないと時間が異様に長く感じることあるからな」
「そうか」
確かにそうかもしれない。暇であったことは事実なのだから。
無理矢理な感じはあるが、たた反論するのが面倒なだけだ。だから無理にでも適当な理由をつけて自分自身に納得させている。
「ま、んなこと今はどうでもいいな。さっさと中に入れ」
部屋に入ってすぐ、ガムテープで口を塞がれ紐で身体をグルグル巻きにされたデブの姿があった。
閉ざされた口で必死に叫び、紐から逃れようともがいている。
「活きがいいな」
「気絶させといた方がよかったか?」
「いや、これでいい。……おい、このデブをドアに縛りつけろ」
「もう紐はねえよ」
「ならいい。デブをそこまで移動させろ」
玄関のドアを指差しながら俺は言う。
「こんくらい自分でやれよ」と文句を言いつつもおっさんはドアの前までデブを引っ張った。
この部屋の中でデブから最も遠い場所。それでいて視界から外れない位置であるベランダの窓辺りに向かう。
「おい、足元気を付けろよ」
言われずとも分かっている。
飛び散ったガラスの破片。それを踏むなと言っているのだろう。床がこうなることは初めから予想できていた。
「靴を履いているから何も問題はない」
「そりゃ人としてどうなんだ? 部屋上がる時は靴脱ぐのが常識ってもんだろ」
「俺のことを言えた口か? お前も土足で上がってるのに」
「私の場合は仕方ない。ベランダから上がったからな。ガラスの破片が足裏に刺さったら大変だろ?」
それを言うなら俺も同じだ。ガラスの破片を踏んだら危ない。
「無駄口叩いてる暇があるならさっさとデブから離れろ」
「はぁ、あんたが……いや、なんでもねえ」
面倒そうにおっさんは割れた窓の近くに来た。そして一言、「何をするんだ?」と聞いてきた。
「的当てゲーム」




