第四十四話 暗殺者か?
「何故帽子を被ったんだ?」
「仕事だからな。……口開くなよ」
エレベーターから出てすぐの部屋の前でおっさんはインターホンを押した。
「宅配便です」
「……暗殺者か?」
思わず声が出た。ある街で暗殺者が同じ手口を使っていたからだ。
俺たちの目的はあくまで殺害。こんな回りくどい方法は取らなくていいと思うが。
「口開くなって言っただろ」
小声で俺にそう言っているうちに、ドアが開き中からデブが顔を出した。
「あの、荷物ってどこに――」
声に被せるように銃声が三発。
俺はデブに向けて銃を放ったが、一発も当たらない。それどころかかすり傷すら付けられなかった。
「一発も当たらない。この銃、壊れてるんじゃないのか?」
「この距離で外すなアホ!」
「アホ? この銃がおかしいだけだ。俺は何も関係ない」
「いいや、銃はおかしくない。あんたの腕がおかしいだけだ」
「だったらもう一度撃つ。そうすれば分かる」
「はぁ、気が済むまでやれ」
銃口をデブに向けようとしたが、ドアはいつの間にか閉まっていた。
「……おい、どうするんだ? 壊すか?」
「いいや、こんなとこで大事にするのは危険だ」
別に大事になったからといって何かがあるわけじゃないだろう。どうせ少し騒がしくなるくらいだ。
俺はドアノブに手をかけて引っ張る。
「……?」
いつもならば簡単に外れるはずだが。やはり寝起きだからなのか、腕に力を込めてもドアが外れる気配はなかった。
「今の俺では開けられない。どうする?」
「さてどうしたものか。あいつは銃で撃ち殺されそうになった。しばらくは誰が何を言っても開けないだろうな」
「だが、ここで俺たちが退けば確実に逃げられる」
だからといってここで出てくるのを待ち続けることはできない。いつ出てくるかも分からないのだから。
はっきり言って俺にはもう取れる行動はない。おっさん頼りだ。
「策はあるのか?」
「あー、ピッキングとか?」
「できるのか?」
「無理」
「できないことを言うな。できることを言え」
「……もう一回インターホン、押してみるか?」
「好きにしろ」
どうせ押したところであのデブは出てこないだろうが。
おっさんはインターホンを押す。
「あーっと、殺害屋でーす。ちょっと死んでもらいたいんでさっさと出てきてもらえませんか?」
……は?




