第四十二話 面白味のない街
ぐるりと街の景色を見回す。
外に出てからまだ数歩しか歩いていないが、視界に入る建物は全て七階以上。
全て集合住宅なのだろうか。歩いている人間が異常に多い。
地面はコンクリートで固められ、草木一本生えていない。少し歩けば、また違った街並みも見られるのだろうが、ここは面白味のない風景しか見られなかった。
「ああ、あんたは知らねえよな。ここまで連れてきてやった時、私の背中でスースー寝息立ててたもんな」
「どうでもいい。早く行こう」
俺はおっさんを置いて早足で歩く。
「おい待て。逆だ。そっちじゃねえぞ」
「……」
目的地がどこか知らない。間違えるのも仕方ないだろう。
「道案内しろ」
「だったら私より前歩くなよ?」
「どうでもいい。早く歩け」
おっさんとの間に人間ひとり分入れる程度の距離を開けて後ろを歩く。
「何で後ろ歩いてんだよ。横来いよ」
「お前は背中に目でも付いてるのか?」
「足音で分かんだよ。んな余計な事言ってないでさっさと隣来い」
「お前に目は付いていないのか?」
「何言ってんだ? 付いてるに決まってるだろ」
「なら周りを見ろ」
「は? 訳分からねえこと言ってないではっきり言え」
「ここは人通りが多い。並んで歩いていたら他の人間の邪魔になる。そんなことも分からないのか?」
「……」
そこから会話はなく、ただ目的地に向かって淡々と歩くだけだった。
何十分経ったか。分からないが街の風景は変わらない。一歩も進んでいないような気分だった。
まだか、と思っていると、おっさんが突然立ち止まり左側に建っている集合住宅を見上げた。
「ここか?」
「ああ、ここの八階にいる」
どの建物も似たような色合いや造りをしているのに何故ここだと分かるのか。疑問ではあったが口に出さず、階段を上った。
「ここエレベーターあんぞ」
一階のエレベーター前に立っていたおっさんが笑いを堪えるような声で言った。
もう少し早く言え。
無視して階段で三階に着いた時、ふとエレベーターの方を見ると扉が開いていた。
「さっさと乗れ」
扉が閉まらないように手で押さえながらおっさんは言う。
「……ああ」
ここでおっさんの指示に従うのは癪だが、俺はエレベーターに乗った。




