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不死者  作者: 紫崎 蒼
第二章 殺害屋
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第四十一話 楽な仕事

 おっさんは何も答えず、写真を一枚取った。女の写真だ。


「初めはその女か?」


「いいや、違う」


 おっさんは俺の横を通り抜け、苦しそうに這いつくばっているサクヤの前に写真を置いた。


「本当にすまない。頼めるか?」


「また、ですか。いいですけど……まだ痛いんで、やるのは待ってください……」


「ああ、ゆっくりでいい。頼んだぞ」


「待て。そいつは俺が元々受けていた仕事だ」


 俺はサクヤから写真を奪う。


「この女は俺が殺す」


「あんたには……無理だ……カス…………」


「は? だったら俺を殺せないお前は確実に無理だな」


「……ああ、ノミサイズの……脳みそじゃ…………力の差も分からな――」


「黙れ」


 頭を踏みつけ、サクヤを無理矢理黙らせる。


「お前のようなゴミに言われたくないな」


「悪いがこの仕事はサクヤにしか頼めねえんだよ」


「何故?」


「……あんた、その女を見つけることすらできてないだろ?」


 確かにまだ見つけられていない。だがそれはここに辿り着いていなかったからだ。


「ここにいる事は分かっている。探せばすぐに見つけられる」


「いや、無理だ。あんたには技術と戦略が足りない」


「否定はしない。だが技術も戦略も必要はない」


「技術がないから一度右腕を失くした。戦略がないからあの獣に負けた。違うか?」


「違わない。が、それなら圧倒的な力で殺せばいいだけだ」


「力押しじゃ殺せない。同じ殺害屋だからな。……っつーことでこれはサクヤに任せる。文句はねえな?」


 「ああ」と返事をするとおっさんは女の写真を奪い取り、サクヤに渡した。

 話を聞く限り、俺があの女を殺す事は無理。それは分かった。その点に関しては何も文句はない。だが、何故サクヤに任せるのかが理解できない。あの程度の力量なら、恐らく死体になって帰ってくるだろうに。

 どうせサクヤは死に、俺に仕事が回る。別に文句はなかった。

 それから、おっさんは再び俺から写真を取った。今度は風景を写したものだ。


「聞きそびれていたが、その写真は何だ? 趣味か? それとも仕事か?」


「仕事だ。私から私へのな」


 おっさんの声のトーンが低くなった。

 自分自身に誰かの殺害依頼をする。それだけで大体察しがつく。殺したいほど怨む、あるいは嫌っている相手がいるということだ。

 本当にくだらない。


「仕事に私情を持ち込む奴は大抵死ぬ。余計なことはしないほうがいい」


「だとしても、これはやらなきゃならないことだ」


「何故そこまでこだわる?」


「……聞きたいのか?」


「いや、別に」


 興味はない。それに、聞くとしても今ではない。

 俺は手元に残った二枚の写真をおっさんに見せながら「どっちを殺すんだ?」と聞く。

 おっさんは何も言わず、写真を二枚とも俺から奪い取り、自身の上着の内ポケットにしまってしまった。

 ……は?

 初めの二枚は仕方ないとして、後の二枚は今すぐにでもやれる仕事のはずだ。それなのにおっさんの行動を見る限り、その二つの仕事もやる気はなさそうだった。


「仕事は?」


「心配するな。ちゃんとある」


 未だに立ち上がることもできていないサクヤにおっさんは、


「サクヤ、あんたんとこの仕事、こっちで引き受けていいか?」


 と聞いた。すると、苦しそうな顔でサクヤはクシャクシャになった二枚の写真をおっさんに渡した。


「お願い……します…………」


「任せとけ。だいぶ痛そうだし今日はゆっくりしときな」


「はい……」


 ゆっくりしとけ、と言われていたものの、激痛だからなのかサクヤは全く動く気配がない。

 そんなサクヤの姿を横目に俺は「それがそうか?」と、おっさんの持っている二枚の写真について聞く。


「ああ、これが今回の仕事だ」


 二枚の写真をおっさんから受け取る。一枚目は穏和そうな小太りのおっさん。二枚目はガタイのいいスキンヘッドの男。

 ないとは思うが……


「繋がりは?」


「ない」


「距離は?」


「どっちもここの住人だ」


「出ている可能性は?」


「ほぼ確実にない。調査済みだ」


 楽な仕事だな。

 仕事に関して手出しをする気はなかったが、少しだけやる気がでた。

 技術と戦略。必要ないとは言ったが、ただ苦手な事から避けていただけだ。

 今回の仕事は克服させるいい機会だ。

 そう思っていたが、見るからに普通の人間だ。彼らを殺したところで何も得るものはなさそうな気がする。

 だがそれも仕方ない。そう簡単に仕事は舞い込まない。二件あるだけマシだ。


「んじゃ、行くか」


 おっさんがドアを開けて出ていく。その後に続くように俺も外へ出た。

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