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不死者  作者: 紫崎 蒼
第二章 殺害屋
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第四十話 痩せた?

 挑発しようと思ったわけではない。怖がっているように見えた。ただそれだけだ。

 だが、サクヤは挑発と受け取ったようだった。


「どこが! あんたのどこに怖がる要素があるんだ?」


「俺がお前より強いから」


「ふざけるな! 黙れ! 今すぐにでも僕はあんたを殺せるんだぞ!」


 サクヤの袖口から出てきたナイフが俺の喉元に突きつけられた。

 刃が肉に食い込み血が流れる。


「図星か?」


「黙れ!」


「……殺せるのか?」


「決めるのは僕だ! あんたじゃない!」


 殺せるはずがない。

 ナイフを出した時俺を殺せなかった。殺すことを躊躇った。それが証拠だ。

 俺の命を握った気でいるのだろうが、実際には何も握ってなどいない。

 俺はソファに倒れ込むと同時にサクヤの股間を蹴り上げた。


「っ……!」


 苦しそうな表情をしたサクヤは膝から崩れるように倒れた。俺はすぐ起き上がり、サクヤからナイフを取り上げる。


「殺すならこうするべきだ」


 逃げられないようにサクヤの胸ぐらを掴み、ナイフを喉元に突きつける。

 ゆっくりと首の肉に刃を入れていく。

 股間を蹴られた痛みからなのか、ナイフを突きつけられた恐怖からなのか、青ざめた顔をしている。


「もう止めろ」


 もう少しその真っ青な顔を見ていたかったが、おっさんに腕を掴まれ仕方なくナイフを自分のズボンにしまった。


「おい、包帯はどこだ?」


 今着ている服の襟元で血を拭きながらおっさんに声をかける。すると、返事のかわりに包帯が飛んできた。

 ズボンから先に着替えておいて正解だったな。血で汚れるとこだった。

 包帯で適当に巻いて傷口を塞いだ後、ボロボロのシャツを脱ぐ。


「なーんか痩せたんじゃねえの?」


 おっさんがくだらないことを言ってきた。が、相手にする気はない。

 無視してシャツを着ると、おっさんがまたくだらないことを口にした。


「似合ってんな。やっぱり私の持ってる服はどれもこれもセンスがいいって事だな」


 自分のファッションセンスを自画自賛しているが、どこがいいのか全く理解できない。俺が着たのは白い無地のシャツだ。似合う似合わないの問題ではない。


「……それ、僕の……服です…………」


 今にも消えそうなサクヤの声が聞こえた。

 滑稽だな。

 上着を羽織り、ズボンのポケットから写真を出す。それら四枚をおっさんに見せながら俺は聞いた。


「誰からだ?」

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