第四話 ずぶ濡れ
数十秒経ち左腕がまともに動くことを確認したあと、小瓶に残った数滴を右肘に垂らした。
数分後、右肘が正常に動くようになった俺は服を着たまま川に飛び込んだ。顔と手、それから上着に付いた血を重点的に洗い落とす。
暗い赤色が主体の上着は血の色がほとんど目立たない。だが、白い模様の部分に血の赤茶色が薄らと残っている。
下に着てた黒いシャツに付いた血はほとんど目立っていない。というより、汚れたのは刺された脇腹と噛まれた肩、それと袖口くらいだ。
黒いズボンにべったりと付いた血の汚れもシャツ同様ほとんど目立たない。
全身の血を大体流し終えたとこで、リュックの底が血塗れていることに気づく。
中の荷物は大体が血で汚れていた。
小瓶いっぱいに液体の入ったものを四つ。キノコが三つとナイフが二本。マッチとまつぼっくりと懐中電灯がそれぞれ一つずつ。それから獣の左手。
「こいつか」
俺はまずリュックと汚れの原因である獣の左手をしっかりと洗い、小瓶や懐中電灯、ナイフを丁寧に洗った。
マッチとキノコとまつぼっくりをその場に捨てる。小瓶を四つポケットに、他のものはリュックにしまった。
どこにいても陽の光が直接当たる場所はほとんどなく、洗った服を乾かす方法がない。
俺は水分を吸った服を絞る気にもなれず、ずぶ濡れのまま両腕を折って村へ向かった。
戻ってすぐ村長が俺に声をかけてきた。なんでも「今日一日泊まっていかないか?」だそうだ。
どうにか頼み込んで泊まらせもらうつもりだった俺としては断る理由がない。「ああ」と返事をすると、小さな空き家に案内された。
「少し狭いが寝るだけであれば問題なかろう」
「ああ」
「私はこれで失礼する。お主は……好きにするといい」
「分かった」
俺は部屋の隅にリュックを下ろし、村を探索した。




