第三十七話 見えぬ意図
久しぶりにぐっすりと眠れた気がする。
俺は欠伸と伸びをした後、目をを開け体を起こす。
……どこだ?
薄汚れた部屋。天井の隅には蜘蛛の巣。俺が寝ていた何人か掛けのソファは血で汚れたかのように所々赤黒く染まっている。
「おい、ここはどこだ?」
目の前のベッドで横になっているおっさんに声をかける。だが、返事はない。
寝てるのか。
叩き起こしてやろうとソファから立ち上がる。と、何とも言えない違和感があった。
体調は悪くないし、服装も変わっていない。なのに何かが変わったような感覚。
気持ち悪い。
嫌な気分だが、身体が動かなくなったわけでもどこかが痛むわけでもない。
気にするだけ無駄か。
「おい、起きろ――」
そういいながら殴ろうとしたが、手を止める。
ここがどこかは正直どうでもいい。俺が欲しい情報は、あれからどれだけ時間が経ったかだ。だが、寝ているならそれはそれで都合がいい。
被り物のせいで寝ているのか起きているのか分からないが、声をかけても返事をしないのなら寝ているということでいいだろう。
起こさないようにそっと上着の内ポケットをまさぐる。
チッ……面倒だな。
一つ一つ、掴んだ物をポケットから出していく。
紙屑、紙屑、紙屑、紙屑、何かの骨、埃の塊、小石、小石。
ゴミだらけだ。が、ようやく求めてた物が出てきた。
空間転移の玉。あの場所に行くには必要な物。
俺は再び、一人であの場所へ行かなければならない。何の用だか知らないがあの時、腹を貫かれた時に巨大な獣が言った。
『十三日後、再び一人でここへ来い』
雑音混じりだったが、確かにそう言っていた。
普段なら無視するところだが、俺は興味が湧いてしまった。腹を貫いたのに「再びここへ来い」と言ったあの獣に。
俺を殺すつもりだったろうに何故?
分からないが、もう一度あの場所に行けば分かることだろう。
空間転移の玉をズボンのポケットにしまい、紙屑以外のゴミを慎重におっさんの上着の内ポケットの中に戻す。
初めはゴミだと思っていた紙屑だが、ポケットから出してみて気づいた。これはただの丸められた紙屑ではなく写真だと。




