第三十三話 分け前
長々と喋っていたおっさんの話を要約すると、
この森には支配者存在している。
さっきまでいた場所は支配者造り出した完全隔離空間。出口はなく、時間は流れず、空腹で死ぬことだけは絶対にない。
入ることはできても出ることはできない。出るにはある条件を満たすか、おっさんが持っていた玉を使うしかない。
玉を使うと最奥――つまり支配者のいる場所へと空間移動する。そこは現実世界の森であるため、適当に歩けば外に出られる。
ということらしい。
「なんでそんなに詳しいんだ?」
他にも問い詰めたいことはあるが、「何故空腹では絶対に死なないのか」なんて聞いても無意味だろう。
そんな事よりもこの森に関して詳しい方が気になる。
「他人から聞いた情報だ」
俺が聞きたかった答えはそれではない。
「目的は何だ?」
「……」
しばらく黙り込んでいたが、諦めたようにため息をつき話し始めた。
「私は仕事をしに来た」
「内容は?」
「何故そこまで聞くんだ?」
何故か……目的を聞いたのはただ気になったから、というだけだ。だが、内容を聞こうとした理由は単純な好奇心だけではない。
「俺にも手伝わせるつもりなんだろ? だったら仕事内容くらいは聞いておこうと思ってな」
「ハッ、まさかあんたから手伝いたいっつーとはな」
「ダメか?」
「いいや。動きにちーっと問題はあるが、あんたとなら無茶だと思ってたこの仕事も片付きそうだ」
動きに問題がある? 俺の動きの何に問題がある? お前よりは動けている。上からものを言うな。
「分け前は八二でかまわない」
お前一人の力では成しえなかった仕事を俺が手伝う。どんな仕事内容であろうと、俺への負担が大きくなるのは自明。
本来なら分け前は九一にしたいところだ。
「八二か。私が八、あんたが二ってことか。まあ悪くないな」
「何寝ぼけたことを言っているんだ? 俺が八、お前が二に決まってるだろう」
「……まあいい。分け前は仕事が片付いてからでいいだろう」
「ダメだ。今ここで決めるべき問題だ。後になってからでは有耶無耶にされる。そうなれば俺はお前を殺すことになる」
「……分かった分かった。あんたが八、私が二でいいんだろ?」
挑発するようなその態度は何だ? 面倒で適当に返事をしたとしか思えないな。腹が立つ。が、いいだろう。
「その言葉、忘れるなよ」
そう言って、俺はどこへ向かえばいいかも分からず歩き出した。が、
「おい、そっちじゃねえよ」
少し呆れ気味なおっさんの声が聞こえたかと思うと、急に首根っこを掴まれ引きづられた。
髪の毛を引っ張らないだけマシなのかもしれないが、嫌な気分なのは変わりない。




